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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第20章 魔国を観光しながら生きていこう

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401.事なかれ主義者は魔国の首都を散策した

高評価&いいね&ブクマ登録ありがとうございます。

 魔国ドタウィッチ王国は、横に長い国らしい。北には神聖エンジェリア帝国があり、南にはニホン連合の国々と国境を接している。西に目を向けると『魔の森』と呼ばれる広大な森林地帯が広がっていて、魔物が時折そこから溢れてくるんだとか。

 魔法の研究が盛んな国、とは聞いていたけど、街並みは他の国々と似たような物だった。

 行き交う人々は普通に歩いていてイメージとだいぶ違うなぁ、とか思っていたら小さなゴーレムが引く馬車……馬車? ゴーレム車? が近くを通り過ぎて行った。

 ああいう使い方もあるんだなぁ、と見送っていたけど、今日のノルマを放り出してついて来た魔道具職人であるノエルは、興味を示さなかった。


「ゴーレムは見なくていいの?」

「あれは魔法で作り出したものっす。御者の人が操作してたじゃないっすか。魔道具じゃないなら見る必要ないっす」

「魔道具と魔法、どう違うのかとか気にならないの?」

「以前、魔法で作られたゴーレムを観察した事があるんすよ。もう十分見たんでやっぱり必要ないっす」


 横に並んで歩いているノエルを見ると、彼女はエルフ特有の金色の髪を空いた手で弄っていた。もう片方の手は僕の手と繋がれている。

 ノエルが勝手に突っ込んでいかないように握っていたんだけど必要なかったかな?

 背中に背負ったクーをしっかりと支えたいし、手を離そうとしたけど、ノエルは気づいた様子もなくしっかりと握って離さない。……まあいいか。


「魔道具、思っていたよりも少ないね」

「そうでもないっすよ。これでも多い方っす。比較対象がおかしいだけっすね。ダンジョン産の魔道具の廉価版っぽいっすけど、街中でも見つけられるのは流石魔法学校を有する都市っすね」

「その魔法学校は、あの壁の向こう側にあるアレだよね?」

「そうっすね。あそこは王城も兼ねてるんすよ」

「いきなり行っても門前払いされそうだし、街を見て回ろうよ」

「何言ってるんすか。ジュリーニたちが既に向かって話を付けてるはずっすよ。だからさっさと向かうっす」

「いやいやいや。今日は観光するだけだから。王様とかのお相手するつもりは全くないから」


 そう言ってもノエルは僕を引っ張ってずんずんと進んでいく。

 後ろをついて来ていたジュリウスに視線を向けると、それだけで意図が伝わったようだ。


「お二人だけで向かわれて大丈夫ですか、ノエル様」

「大丈夫っすよ、何も問題ないっす」

「本当ですか? では、王侯貴族のお相手はノエル様がしてくださるのですね?」


 ズンズンと進んでいたノエルがピタッと止まった。

 確かに、今はレヴィさんもジューンさんもいないから僕が話さなくちゃいけなくなるんだけど、マナーとか諸々でやらかす可能性が高い。そうなるくらいだったらこの世界の住人のノエルに押し付けてしまった方が楽かもしれない。


「……仕方がないから街を見て回って手先の器用な人を探すっす」


 踵を返して、来た道を戻っていくノエルに引っ張られながら首を傾げる。

 何で手先が器用な人を探さなくちゃいけないの? 観光は?

 そんな事を思いながらノエルの後をついて行くのだった。




 それからしばらくノエルと共に街を見て回った。

 ズンズンと進んでいこうとするノエルをジュリウスに止めてもらって、その間に屋台料理を買い、ジュリウスを除いた三人で仲良く分けて食べた。

 クーは差し出せば食べてくれるから分かるけど、ノエルが一緒に食べてくれたのは意外だった。


「点数稼ぎっす」

「そういうのは言わない方が稼げるんじゃないかなぁ」

「そもそも夫婦であればお食事を共にするのは当たり前なのでは?」


 僕からの指摘やジュリウスの突っ込みをスルーして街の様子を見ていたノエルだったが、大きなため息を吐いた。


「やっぱり内壁の外側はダメっすね」

「何が?」

「ここら辺はこの国で下民と呼ばれてる人たちが暮らしている場所っす。魔法が使えない人ばかりで、奴隷のようなもんっすね。だからダンジョン産の魔道具は置いてないのが当たり前っすし、めぼしい人材は壁の向こう側に連れて行かれてるみたいっす。魔道具作りにはそれなりのお金がかかるから、そういう事をしている人はここにはいないと思っていたっすけど、やっぱりいなさそうっす」

「……なるほど」


 魔法が使えないだけで奴隷みたいな扱いになるなんて理不尽だなぁ。……僕も魔法使えないし、下民になるのかな?

 街を行き交う人の首には奴隷の証である首輪はついていない。

 ただその代わり、刺青のようなものが顔のどこかにある。ファッションだと思っていたけど下民の証みたいなものだろうか。

 身なりはしっかりと整えられている人が多いし、下民に対して命令している人はいないから奴隷よりは扱いは良い……のかな? 分からん。

 ドタウィッチ王国の偉い人に会う前に、そういう所を学んでおかないとやらかしそうだ。夕食の時にでも確認しよう。

 今はどこか座ってのんびりできる場所でも見つけて、タブー帖でやってはいけない事だけ覚えておくか。

 まだ街の半分も見ていないみたいだけどやる気のなくなってきたノエルを引っ張って歩き続けた。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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