372.事なかれ主義者は量産した
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世界樹フソーのお世話はサクッと終わってしまった。
魔力の半分くらいを一気に使うと流石にちょっと疲れるので地面に座ってのんびりしていると、日向ぼっこをしていると勘違いされたのか、ドライアドたちが集まってきた。
世界樹フソー周辺に生息? しているドライアドたちは、僕たち日本人のような肌の色をしている。
また、全体的にちょっと小柄な子が多い。古株の子も他の子と大して変わらない。頭の上に咲いている花の大きさが違うくらいだ。
向こうのドライアドたちと同じ感覚で接していると、こっちの小さなドライアドたちは大人ぶってる感じがあるけど、この大きさで大人らしい。
この違いは生息地の違いなのか、世界樹の影響なのか、それとも別の理由があるのか謎だ。
ドライアドの研究者がいたら研究してみて欲しい。
「人間さん温かいねぇ」
「ぽかぽかだねぇ」
「ぬくぬくー」
「私も入れて~」
……どんどん集まってくるのは人間の方が彼女たちよりも体温が高いからだろうか。
たくさん乗られてもそこまで重くはないからいいんだけど、いつの間にか倒されて胸の上とかにも乗られている。
ルウさんは僕が押し倒された際に、僕の頭の下に自分の太ももをちゃっかり入れていた。それからずっと、ニコニコしながら僕の顔を見ている。
見つめ合うのは恥ずかしいから視線を逸らしていると、ラオさんが少し離れたところに座って僕を見ているのに気づいた。
ラオさんは胡坐をかいているけど、足の間や上にドライアドたちがわらわらと乗っかっている。
ルウさんにはドライアドたちが乗っていないのは、乗ろうとする度に持ち上げて乗らないように阻止しているからだ。
まあ、ルウさんの足の上に座ろうとすると僕の顔にドライアドたちの小さなお尻が当たりますからね。
そう言う趣味はないからとても助かります。
「……そろそろ魔道具作ろっか」
「それじゃあ、ドライアドちゃんたちを下ろしていくわね。ラオちゃんも手伝って~」
「ああ」
ラオさんは自分の膝の上に座っているドライアドたちを膝の上から下ろすと、立ち上がって僕たちの方へと近づいてきた。
僕はルウさんとラオさんがドライアドたちを下ろしてくれるまで大人しく待つ。
「起き上がれなくなるまで乗せるなよ」
「いやー、ちょっと断れなくて……」
「だからシズトくんはどこのドライアドたちにも人気者なのよね、きっと」
「甘やかしすぎなんだよ」
「守ってもらってるからこのくらいは良いかなって」
他の世界樹の周りのドライアドたちもそうだけど、ここのドライアドたちにも世界樹防衛の協力をしてもらっている。
特に世界樹フソーは他国との関係的に、人間が世界樹の近くにやってこようと森に入ってくる事が多いから彼女たちの力が不可欠なのだ。
「それを言ったらお前は世界樹を育ててるだろ」
「たい肥もあげてるわね」
「やってもらってる分は返してんじゃねぇか?」
「そうかなぁ」
ドライアドたちが全員退いたので起き上がって伸びをする。
その真似をするドライアドたち。
とりあえず魔道具製作をするのでドライアドたちには散ってもらった。
思い思いの所へと向かって行くドライアドたちを見送ると、僕たちは寝泊まりしている建物へと戻る。
建物の屋根の上にはジュリウスがいて、僕を見守ってくれていたようだ。
ジュリウスと同じく周辺の警戒をしているはずのライデンは、テラスに置いたロッキングチェアに座り、のんびりとしていた。
あれで周囲の警戒をする事ができるのかな、と疑問だけどラオさんたちが何も言わないのであればいいのだろう、たぶん。
「それで、今日は何を作るんだ?」
「魔動車はあれで完成なのよね?」
「うん。見た目をこれ以上弄っても迷走するだけだからね。機能をあれもこれもとつけても魔力消費が大きくなるだけだし」
ルウさんが開けてくれた扉をくぐって建物の中に入る。
建物に入ってすぐは広々とした部屋だ。恐らく前まではエントランスとかそんな感じで使われていたのだろう。
家具などの高そうなものは何も残っていなかったので、とりあえず丸テーブルとそれを囲むように椅子をいくつか作った。もう少し家具を増やせたらなぁ、とは思うけど人を招く予定もないししばらくはこのままでいいだろう。
右手側にある扉を開けるとは入れる部屋は、エントランスよりは狭い角部屋だった。
この部屋は何に使われていたのかは分からないけど、とりあえず僕の作業場にする事にした。
ノエルにあげた作業机と同じ物を作って窓際に設置している。
それ以外の家具は反対側の壁際に置いてあるソファーだけだ。
基本的に作業以外で使う事がないから、僕が使う作業机とその様子を見ていたいというルウさんたちのための座る物があれば十分だろう。
……こっちでも魔道具師を育成できればもう少し置く物を増やしてもいいかもしれないけど。
「それで、今日は何を作るのかしら?」
「んー、とりあえずアイテムバッグかな。四ヵ国とも興味を示してたし、余ったとしても困る事はないだろうから。ルウさんたちはそこで見てるの?」
「他にやる事もねぇしな」
ラオさんはそう言うと、ソファーにドカッと座った。ルウさんもその隣に座り僕をジッと見る気満々なようだ。
その後、僕は背中に視線を感じながらもせっせとアイテムバッグを量産していった。
途中、同じ物を作る事に飽きて、新しい魔道具を作ったらいつの間にか近くに来ていたラオさんに没収されてしまったけど、僕じゃ実験できないからまあいいか。
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