367.事なかれ主義者は繋げてみた
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ニホン連合に加盟している国の一つであるシガの首都ビワを観光して数日が過ぎた。
ここ数日、大国ヤマトは大きな動きを見せていない。ただ、世界樹フソーの根元に広がる森に兵士が入ってくる事が増えてきた。
ヤマト以外の周辺国からは、『ヤマトが戦の準備をしている』という情報も入っていたが、真偽は不明だ。
ただ、黙って攻めてくるのを待つのは嫌なので、いろいろやった。
まずレヴィさんを経由して、大国ヤマトと隣接している国々に『転移門』をプレゼントした。
ラグナクア、ファルニル、エクツァー、サンペリエの四つの国の首都と、元都市国家フソーの北側の土地を繋ぐように設置してもらった。
転移門を早急に設置したかったからそれぞれの国の竜騎士に運んでもらったけど……ドラゴンってやっぱやばいっすわ。
厳密にはドラゴンの中では下の方のワイバーン種らしいけど、それでも大きいし怖い。
できれば今後はドラゴンと関わらないでいたいな、と思いつつも転移門を早急に設置するためには避けては通れないから今後も関わる事になるだろう。
転移門は警備などを含めた利便性を鑑みて、大きな空き地に集中して設置してもらった。
鳥居のような形の転移門は、転移陣とは異なる魔法のようで、刻まれている魔法陣が異なる。
転移陣は空間から空間へ移動させる魔法のようだけど、転移門は空間と空間を繋げる魔法のようだ。
そこら辺はよく分からないけど、話を聞きつけたハーフエルフのノエルが屋敷を飛び出してここ数日じっと観察を続けている。
ノルマの事を気にしていないみたいだけど、大丈夫かな……なんて考えていたらホムンクルスのホムラが「後日、通常のノルマに上乗せするので大丈夫です」と無表情で言っていた。
ノエルは平常運転だから置いといて……転移陣を活用した国々は利便性に気付いたようで、もっと作って欲しいと要望があるみたいだ。
ただ、どこに設置するのかとか国によって設置する数を変えるのかとか諸々考慮するべき事があったので保留にした。
それに、レヴィさんたち曰く、転移門が繋がっている国々よりもさらに北側の国から打診があるかもしれないんだとか。だから一先ずすべての国一律にで首都だけ繋げる事にした。
「いやぁ……それにしても今日もたくさんの商人たちが来てるね」
「首都で商売をしている商人がこの地の事を知ったら見逃すはずがないから当たり前なのですわ!」
シンプルで露出が少ない青いドレスを着たレヴィさんと一緒に転移門を設置した広場にやってきたけど、今日もすごい数の人だった。日に日に人が増えている気がする。
転移門には「元々いた国以外には行かない」という制限を設けさせてもらったけど、来る分には全く制限をかけていないのでこの広場で商売をしようとたくさんの商人が集まり、他国の品々が集まるという事でそれぞれの国の住民たちが買い物をするために押し寄せていた。
「やっぱりみんな他国の物を手軽に手に入れる事ができるって聞いたら集まるよね~。わざわざ向こうに行かなくても勝手に名産品が入ってくるから買い物楽だわー」
「……場所代と集めた税の九割以上を等分して繋がっている国々に与えてしまってよかったのですわ?」
「別にいいよ。お金は稼ごうと思えばいくらでも稼げるから。それに、条件を呑んでくれた上に、占領していたフソーの北側をそのまま丸っとくれたんだよ? そのくらいのメリットがあった方が向こうとしても助かるんじゃない? ほら、敵対勢力から文句が出たら面倒だしさ」
「メリットなんて、この大市場となり得る場所と繋がっただけで十分だと思うのですけれど……シズトが良いならいいのですわ」
「まあ、経済的に問題が出てくるならやめようとも考えているけどね。いつでもやめる事ができるように期間限定って謳ってるし」
この市場の影響がどう出るか予想ができなかったので、とりあえず「ヤマトがいつ攻めてくるか分からないから」という理由を付けて期間限定にしておいた。
願わくば、ヤマトもこの市場に価値を見出して戦争よりも商売しようぜ! って言ってくれる事を期待している。
……大陸統一なんて事を考えている王様がいる時点で無理な気がするけど。
「さてと、今日も問題がないか見回ろうか」
「買い食いしてぇだけだろ」
「お姉ちゃんが色々持ってきてあげるわ!」
僕とレヴィさんの話は黙って聞いていたラオさんとルウさんが話に加わってきた。
普段は護衛としてついて来てくれる二人だけど、今日は屋台料理を食べて回りたいからついて来てもらった。
ラオさんもルウさんもタンクトップにホットパンツという同じ格好で背丈も同じだけど、髪型が違うから見分けやすい。
ルウさんの赤い髪は後ろで一つに結ばれていて腰くらいまである。ゆらゆらと目の前で揺られるとついついちょっかいをかけてしまいたくなる。
ラオさんは動きやすさを重視してか、ショートヘアーだった。
二人とも同じ髪型にしたら後ろ姿だけじゃ分からないかもしれない。
先を行く二人の後姿を見ながらそんな事を思った。
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