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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第18章 ニホン観光をしながら生きていこう

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352.事なかれ主義者はできる事を考えた

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 ドライアドたちのいう『フソーちゃん』が、どこの世界樹なのか……ドライアドたちに聞いても「フソーちゃんはフソーちゃんだよ」としか言わなくて話が進まなかったけど、ランチェッタ様が都市国家フソウとそこに生えている世界樹の名前を覚えていた。


「察しているとは思うけど、昨日の手紙で伝えた勇者シュウイチが来たのもその大陸からよ」

「ですよねー……」


 どうしたものか、と考えている間もドライアドたちは結界の中で騒いでいる。

 っていうか、めちゃくちゃいるんだけど、どうやってここに来たんだ?

 これ以上増えられても困るし、ちょっと落ち着いてもらわなきゃ。

 彼女たちの元へと近づいて行くと「早く早く!」「海を越えるんだよ!」と急かしてくるけど、人間はそんな簡単に海は越えられないんすよ。


「世界樹フソウの事は一度置いといて、ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「ちょっと? ちょっとってどれくらい?」

「お日様が沈むくらい?」

「何度も沈むくらい?」

「いや、長くかかってもお日様がてっぺんに行くくらいまでには終わると思うよ」

「それならいいよー」

「一瞬だもんね~」

「ね~~」


 あなたたちにとって一瞬だとしても僕たちにとってはそこそこの時間すよ。

 なんてどうでもいい事は置いといて、まずは一番気になる事を聞く。


「こんなにたくさんのドライアドたちはどうやってここに来たわけ?」

「道を通って来たよ~」

「トコトコ歩いてきたの~」

「人間さんは使わない方が良いと思うよ?」

「お船でならちょっとの時間でフソーちゃんの所まで来れるよ!」


 大きなドライアドがいないからか、それぞれのドライアドが好き勝手に答えてくる。

 ドライアドたちの言う『道』は『精霊の道』と呼ばれる物だろう。

 青バラちゃんたちもユグドラシルとファマリーを行き来する時に使っている。


「こっちの大陸に来た事あるの?」

「ないよ~」

「初めてだよね~」

「人間さんの船に私たちが育てた植物を載せてもらったの~」

「それを使って道を繋げたんだよ!」

「人間さんに見つかると困るから、眠かったけど夜頑張って様子を見に行ったの!」

「それに、枯れちゃうと困るもんね!」

「海の魔物にやられちゃってたかもしれなかったし」

「大きな船でも襲われる事があるみたいだもんね~」


 一回でうまくいって良かったよかった、と喜んでいるドライアドたち。

 ランチェッタは何かに納得した様子で「ああ」と声を発した。


「どこかからか紛れ込んだ植物の事ね。いつの間にかここに持ち運ばれていたのもあなたたちが?」

「そうだよ~。リーダーが頑張って安全な場所を見つけてくれたの~」

「塩の影響で体調を崩しちゃったみたいだから、今はフクちゃんと一緒に寝てるの」

「なるほど。だから皆で一斉にこっちに来ちゃってるのか。ユグドラシルやファマリーでも古株のドライアドがいないとこんな感じでみんなで同じ事しちゃう事がよくあるんだよ」

「へー、そうなの」

「古株の子がいないとなると、細かい話はまた今度した方が良いかな」

「質問は終わりなの~?」

「お船乗るの?」

「すぐくるの~?」

「質問は終わりだけど船には乗らないよ。こっちにもいろいろあってすぐには決められないし、そっちのリーダーが元気になってからまた話そうね」


 ドライアドたちがきょとんとした様子で僕の言葉を静かに聞いていたけど、わちゃわちゃと集まって話をし始めた。

 しばらくすると話がまとまったようだ。


「わかったー」

「話をするまでは結界の中にいてもいいけど、この国の人間たちの邪魔をしないでくれると嬉しいな」

「人間さんたちが私たちが育ててる子たちに手を出さなければ大丈夫なの~」

「……万が一の事がないように、警備の者を増員しておくわ」




 実験農場の畑の様子を確認した後、ガレオールの首都にある王城の一室に僕はやってきていた。

 ガレオールに来たついでに大国ヤマトからの使者(?)についてや、クレストラ大陸の情勢について聞くためだ。

 壁際に控えているジュリウスと一緒にランチェッタ様を待っていると、立派な装飾が施された扉が開いた。

 中に入ってきたのは先程と変わらぬドレス姿のランチェッタ様だ。

 露出が少ない服なのに、規格外の胸の主張が激しくて目のやり場に困る。


「待たせたわね」

「いえ、こっちこそ時間を取ってくれてありがと」

「構わないわ。あなたのためだったら、いくらでもスケジュール調整はするわよ。それで都市国家フソウの状況や、大国ヤマトからの使者について話せばよかったのかしら」

「うん」

「分かったわ。といっても、昨日の今日だからそこまで情報は集まっていないけれど」


 ランチェッタ様が僕の正面に座り、首から下げていた丸眼鏡をかけて僕を真っすぐに見る。

 眉間に刻まれていた皺がスッとなくなって表情が和らいだ。


「まず都市国家フソウだけど、既に滅亡している様ね」

「……どゆこと?」

「世界樹の真実を知った者たちがそれまでのフソウの悪行に切れたって事」

「………なるほど」


 上層部が腐っていただけな気がするんだけど……。

 冤罪だと主張するため、ファマ様の加護の力で世界樹を育てる事ができると公表しちゃったけど、別大陸にまで影響を及ぼす可能性は考えてなかった。

 ランチェッタ様が「別に気にする必要のない事よ」と言ってくれたけど……何とも言えない。

 国を守り切れなかったエルフたちは殺されるか、奴隷として高値で売られているかという状況らしい。

 ……やらない善よりやる偽善ってどこかで聞いた事あるし……僕にできる事って、何かあるかなぁ。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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[一言] 奴隷ならば買えば良い
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