331.事なかれ主義者は紛れ込んだ
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結婚式から一週間ほどが過ぎた。
毎日違う女性と夫婦の営みをし続けている。
そのうち枯れるんじゃないか、なんて事を思うけど下半身は夜が来る度に元気だ。
この一週間の間は、世界樹の世話をしながら溜まりに溜まった魔道具の依頼をこなしつつ、気分転換に以前作った魔道具をいくつか追加で作っていた。きっと誰かが買うだろう。
作れば作っただけ売れるからお金の心配はまずしなくていい。
むしろどんどん使わないといけない。
と、いう事で訪れたのはニホン連合の端っこの国!
僕は背中に小柄な女の子を背負って、時代劇のような街の通りの真ん中に立っていた。
行き交う人は着物を着ている人もいる。
僕はそんな中で、世界樹の番人と同じ格好をしていた。
髪の色も瞳の色も、日本人っぽい顔立ちもすべて魔道具によって変えている。
今の僕は金色の髪に緑色の瞳で、耳も尖っている。
顔は元の顔立ちよりもはるかに整っていて、どこからどう見ても普通のエルフだ。
どうしてこんな格好で街の中にいるかと言えば、明に忠告されたからだ。
黒い髪に黒い瞳というだけで囲い込まれたり、攫われたりとトラブルに発展しやすいらしいから、馬車の護衛をしてくれていたエルフたちに混じる事にしたのだ。
木を隠すなら森の中、っていうし。
街に入る前からエルフたちの中に加わっていたけど、特に問題なく街の中に入る事ができた。
ドラゴニアの国王様に加えて、ガレオールの女王様からのお手紙を馬車の御者をしていたショタエルフジュリーニが門番に渡したおかげだろう、たぶん。
折角看破の魔道具に打ち勝つ変装用魔道具を準備したのに、しばらく試す機会はなさそうだ。
「それでは、クー……様。どちらに参りますか?」
「んー、じゃあ適当に歩き回って~」
「かしこまりました」
慣れない言葉遣いだけど、世界樹の番人ごっこと思えばできなくはない……気がする。
言葉遣いとか怪しいけど、ジュリウスが特に何も言ってこないので今の所大きな失敗はしていないんだと思う。
街を歩いていると、時代劇の世界に迷い込んだような気もする。建物だけを見れば。
ただ、町を歩いている人を見ると、人族以外も普通にいる。まあ、妖怪と頑張って思い込めば日本だと言えなくもない……か?
「お食事はどうなされますか? オススメの店を町の者たちから聞いてきましょうか」
「別におに……あんたは何もしなくていい。そこのあんた、良い感じの店探してきて」
「承知しました」
そう言ってその場から消えたジュリウスはすぐに戻ってきた。
近くに数軒の食事処があったが、とりあえずうどん屋さんに行く事にした。
まだお昼前という事もあり、結構空いていたのですぐに可愛らしい従業員さんに座敷に通された。
長机が四つ並んでいて、座布団が四つずつ置かれている。
窓際の一番奥の席に陣取ると、とりあえずクーを座布団の上に座らせた。
僕もその隣に腰かけると、クーがのそのそと動いて、胡坐をかいた僕の足の隙間にちょこんと小さなお尻を割り込ませてきた。空のように青い髪の毛が僕の鼻先をくすぐる。
「クー……様、どいていただけませんか?」
「やだ」
……そうっすか。
気を取り直してメニューを見る。
カレーうどんはなかったけど、肉うどんやてんぷらうどんだけではなく、味噌煮込みうどんもあった。
悩ましい……とメニューを見ていたけど、ジュリウスを見るとメニューを見る事なくじっとしていた。
「ジュリウス……様はもうお決まりですか?」
「ああ。かけうどんでいい」
「せっかく観光に来たんですし、いろいろトッピングしないんですか?」
「食事は手早く済ませた方が敵につけ入る隙を与えんからな」
なるほど。確かに護衛対象を守る事が最優先だから食事に時間をかけない方が良いか。
そう考えたら僕もジュリウスと同じくかけうどんにした方が良いかな。
…………天ぷらうどんとかおいしそうだったんだけど。
メニュー表を裏返してかけうどんにすべきか考えていると、クーがメニュー表を強引に裏返した。
「あーし、あんたらに守られるほど弱くないし、気にせず食べればいいじゃん。ほら、おに……おにーさん、さっきこれ見てたでしょ? これにすればー? あーしも分けて欲しいし」
ジュリウスをチラッと見ると、彼も頷いていて「護衛対象の我儘を聞くのも我々の務めです」と言ってきた。
……今後は皆を困らせないように、あんまり我儘言わない方が良いかなぁ。どれが我儘だったのか判断に迷う所だけど。
…………護衛に扮して観光している時点で今更か。
そんな事を思いながら、結局天ぷらうどんを頼んだ。
クーは味噌煮込みうどんを頼み、僕に食べさせてもらってご満悦だったけど、ちょっと僕のうどんが伸びた。
まあ、久しぶりに食べた天ぷらが美味しかったからいいか。エミリーに今度作れるか聞いてみよう。
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