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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第3章 居候して生きていこう

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幕間の物語14.引きこもり王女は魔道具に夢中

評価といいね、ありがとうございます。

 ドラゴニア王国の中央にある王都には、それはそれは荘厳な白亜の城がある。

 その城を取り巻くように各地の貴族たちの別邸があり、別邸をぐるりと囲むように内壁がある。

 その内壁を囲むように密集して建てられているのが、冒険者や商売人がお世話になっているギルドであり、その冒険者や商売人相手に商いをする王都民の家や店。そしてそれらを囲う内壁よりも高い白亜の壁が外壁だ。

 住んでいる王都民が内壁の内側に入る事は、そこまで珍しくない事だったが、白亜の城の中に入る事は滅多にない事だった。

 その白亜の城に住まう一人の少女は今日も自室に引き籠る。

 社交界デビューをした少女は、その日から自室から出るのが怖くなってしまったのだ。


「王女だからと甘やかされて育ったからあんなに醜いんだ」


 そんな事を陰で言いながら笑っていた婚約者に顔を合わせる事なんて考えられなかった。

 礼儀を弁えていない幼子からの棘のある言葉も、周りから晒される冷ややかな目も、読心の加護持ちだとどこかの誰かが恐れていた事も、すべて自分が気にしていた事だったからこそ、余計に堪えた。

 他にも、ごく一部の者しか知らない体の秘密の事もあって、彼女のなけなしの自尊心も粉々になって消えた。


「もう、婚約を取り消して貰うのですわ」


 社交界に出た後から、ストレスで暴飲暴食をした結果の自分を見てため息をつく少女。

 前までは確かに丸々していたけど、それでもまだ見た目的にはましだったと少女は思っていた。今と違って動く事にそこまで苦労はなかったし。

 10年ほど前はその愛くるしい見た目で今の婚約者のハートを射止めたほどだった。もともとの見た目は悪くないはずだ。

 彼女が母親に抱かれて挨拶を交わした人物は一人の例外もなく、心の底から彼女を褒めていた。

 ただ、元来太りやすい体質だったのに、最近の不規則かつ不健康な状況が本当に醜くなってしまったんだな、と少女は起き上がりにくくなった体をベッドに横たえて考えていた。


「その方が、きっといいですわ。あの方の心の中には、わたくしへの思いなど一つもないのだわ」


 彼女が呼び鈴を鳴らすと、部屋の入り口の扉の向こう側の誰かが返答した。


「ちょっと言伝を頼みたいのですわ」


 彼女が望めばなんでも叶う。そんな事を社交界で言われていたが、その通りですんなりと婚約が解消された。

 もっと揉めるかな、と考えていた彼女だったが、彼女の父親はすんなりと了承した。

 少女にとっては優しい父親だった。だから当たり前のように感じたが、本当にそうなのだろうか。

 少女はちょっと疑問に感じたが、気にせず部屋を歩き始めた。

 少しは歩かないと、いざという時運んでもらう事になってしまう。

 そんな迷惑をかけるのは嫌だったが、彼女の努力も虚しく、どんどん体は重くなり、動かし辛くもなり、ベッドで寝転がって過ごす事がほとんどになってしまった。




 そんな怠惰な生活も、終わりを迎える時が来た。

 何と少女の国に『異世界転移者』が異世界から転移していたらしいのだ。

 父親からその事を伝えられ、場合によっては婚約を解消した少女とその少年が婚姻関係になる可能性もある。

 そう聞くと少女は心が躍り、胸も高鳴った。物語で聞く異世界転移者と結ばれる空想を、当時幼かった彼女も庶民の女の子と同じようにしていた。庶民の女の子よりも結ばれる可能性が高い権力者の娘だったからなおさらだ。

 婚約解消も、神様が運命を調整してくれた結果だったのかもしれない。

 ただ、そうは思っても今の自分の見た目ではだめだ。努力をしなければ!と奮起する少女だったが、体は思うように動かず、少し動くだけでも一苦労だった。

 体は思うように絞られる事はなく、ついつい手が伸びてしまう甘いものをやめる事もできなかった。

 困り果てていると、ドラン公爵の領都に住み着いた魔道具師が作ったという魔道具が、彼女を少しいい方向に導いた。


「これ、とっても甘いですわ!」

「それは魔力マシマシ飴というものだそうです」

「魔力が増えるのですわ?」

「それはあくまで副次的な効果だったのでしょうね。ただ魔力を使って甘く感じさせているので、結果魔力を使うことになって魔力トレーニングにもなる、という事なのでしょう。ドラン公爵がレヴィア様への土産だと持ってきてくださいました」

「セシリアも舐めてみるのですわ!」


 さっきまでの暗い表情だった少女は久方ぶりの天真爛漫の笑顔で魔力マシマシ飴を舐めていたかと思うと、側に控えて話をしていた侍女に飴を差し出す。


「結構です、私は甘いものが苦手ですので」

「あら、そうでしたわね?」


 物怖じしない侍女のセシリアを気にした風もなく、この部屋に引き籠っている少女でありこの国の王女でもあるレヴィアは、残念そうに眉を八の字にしていた。

 セシリアは大の辛党だったので仕方ない。これは自分で楽しむものとしよう、とそれから毎日レヴィアは魔力マシマシ飴を舐め続けていた。

 甘いものが好きだからたくさん食べていたレヴィアだったが、魔力マシマシ飴を常に舐めていたらその欲は満たされた。

 同じ見た目だったが、味の違う魔力マシマシ飴が数個あったのも飽きずに舐め続ける事が出来た理由だろう。

 そうして少しずつ運動を頑張っていた彼女にある日、衝撃的なものが送られた。


「とてもブルブルするのですわああああぁぁぁぁ!!!!」

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぶるぶるしてる王女見たいですわ。
[良い点] ブルスコふぁ~!
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