325.事なかれ主義者はあんまり口を出さないようにした
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いつも助かっております。
リヴァイさんたちに説明をしに行ったレヴィさんは、夕食の時間には戻ってきた。
「明日、時間を作る事はできるそうですわー」
「早すぎない!? 国の王って忙しいんじゃないの!?」
「神前式に立ち会うだけですから、そこまで時間は必要ないんですよ。その後のイベントがあればまた話は別だったんでしょうけどね。私の両親も転移陣の利用の許可さえあれば今すぐにでも行ける、との事でした」
「別に好きに使ってくれればいいけど……」
それにしたって早すぎるよ。
展開が急過ぎてまだ心の準備ができてないよ。
「シズトくん、レヴィちゃんたちと結婚式をあげるのね! とっても素敵な事だと思うわ! レヴィちゃん、おめでとう!」
「ありがとうですわ! ただ、ルウたちも式を挙げる事を考えているみたいですわ。もちろん、エミリーたちもですわ!」
レヴィさんの話を聞いていた皆の視線が僕に集まっている。
……とりあえず、食事前の挨拶だけしようか。
皆で「いただきます」と唱和して、食事を始めようと思ったんだけど、皆の視線が僕から料理に向かわない。
その瞳は期待で満ちている……かは微妙だ。
ルウさんが恐る恐ると言った感じで口を開く。
「気を使ってもらって嬉しいけれど、流石にレヴィちゃんたちと一緒に式を挙げるのはちょっと……」
「やっぱり一人一人挙げた方が良いかな?」
「いや、それはマジでやめろ。対外的に、どうしたって身分の問題があるんだよ」
「そこら辺は問題ないのですわ! 王侯貴族出身組とその他で分けて行う事にしてるのですわ」
「あ、もちろん個別でしたいって希望があったらそうするよ」
結婚式の主役は女性って言うし、希望は極力聞く所存。
ただ、皆レヴィさんの提案した方法でいいらしい。
「合同で式を挙げるのは平民だったらよくある事だしな」
「信仰している神様の教会で数カ月に一回、合同神前式が行われるのよ」
「へー……」
世界が違うと文化も違うんだなぁ。
神様もいつも世界を見守っているわけではない、と伝わっているから決められた日にまとめて行っているんだとか。ただ例外として、加護持ちであればいつでも大丈夫との事だ。
……神様も世界を覗くにはそれ相応の力が必要だって言ってたもんな。つまりそういう事なんだろう。
「……皆が信仰している神様の所でも式を挙げた方が良い?」
「いや、別にいいんじゃねぇか?」
「そうね。そこら辺は話し合って決める事が多いから、シズトくんの神様たちの教会だけでいいわ」
「ん。シズトの加護が受け継がれた方が良い。シズトの負担、減る」
珍しくドーラさんも話に加わってきた。
僕の視線に気づいたドーラさんが「私の神様、そこそこ信仰されてる」と付け加えた。
「式を上げたら加護が受け継がれやすいとかあるの?」
「そうかもしれない、って言われている程度ですわ。ただ、加護持ちの相手と結婚した際に、同じ加護を神様から授けられたという話もあったのですわ」
「ちなみに、私の両親は金銭的に厳しかったそうですが、神前式だけは行ったそうですよ。一人娘の私には加護は受け継がれませんでしたが……」
壁際に控えていたモニカがボソッと呟く。
黒髪に黒い目と日本人の特徴が色濃く出ているが、彼女は加護を授かっていない。
別に子どもに加護が受け継がれなくても全然気にしないんだけど、子ども側からしたら思う所もあるのだろう。
神様に聞いたら教えてくれないかな、等と考えている間にも、レヴィさんとセシリアさんが主導となって結婚式についての話が進んでいく。
どうやら決めていた方法で行くようだ。
あとはだれがどの神様の教会で式を挙げるかを決めるだけ。
「希望があれば聞くのですわー」
「レヴィとジューンは生育の神ファマ様の所でいいんだよな?」
「そうですわね……ジューンの事を考えたらその方が良いと思うのですわ!」
「私は別にどこでもいいですよぉ?」
「立場的にファマ様じゃないとエルフたちが暴動を起こすかもしれないのですわ」
「シズト様がお決めになった事だと言えば問題ないかと」
それまで静かにしていたジュリウスがレヴィさんの発言を訂正したが、結局ファマ様の所で、という事になった。
レヴィさんと一緒の所で式を挙げる事にしていたセシリアさんも同じくファマ様の所だ。
「ボクはどっちでもいいっす。テキトーに決めておいて欲しいっす。ごちそうさまでしたっす~~~」
ノエルは言いたい事だけ言うと、食堂から出て行った。式の話よりも魔道具優先なのはノエルらしい。
僕も食べないとな、と魔物の肉を使って作られたステーキをナイフでせっせと切り分けていく。
どんな魔物かはいつも聞いてないけど、きっと強い奴なんだろうなぁ、とか思いつつ肉を切り分けている間にも話し合いは進み、元奴隷組はノエルが含まれるからエント様で、ラオさんたちはプロス様の教会で行う事が仮で決まった。元奴隷組は言わずもがなだったけど、ラオさんたちも家族に出席してもらう必要はないとの事だった。
「あとは教会側に話を通しておくだけですわね」
「前世では考えられないくらいの速さで結婚式の段取りが進むなぁ……」
神様の前で誓いの言葉的な感じの事を言って、キスをするだけだからだろうか。
平民の間ではそれが主流らしいけど……それだけのためだけにわざわざ遠くから家族を呼ぶという考えには至らないのも当然かもしれない。
まあ、ラオさんたちが納得しているなら僕がとやかくいう事ではないか。
せっせとステーキを細かく切り分け続けていると、セシリアさんから「今のままのペースだと、寝るのが夜遅くになってしまうのですがよろしかったでしょうか?」と言われ、急いで細分化したサイコロステーキを口の中にたくさん入れた。
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