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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第17章 結婚しながら生きていこう

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幕間の物語153.元訳アリ冒険者は少し羨ましい

高評価&いいね&ブクマ登録ありがとうございます。

また、誤字脱字報告もありがとうございました。いつも助かっております。

 シズトが気晴らしに浴室にサウナを作っていた頃、ラオは二階の談話室にいた。

 大柄な彼女はソファーにドカッと腰かけ、足を組んでいる。

 ホットパンツを履いているため剥き出しになった太腿は筋肉質で太い。

 胸元が開いたタンクトップは、彼女の大きな胸によってパツパツになっていた。

 短い赤髪をぐしゃぐしゃとかいて、ラオは彼女と対面するように座っている女性を見る。

 彼女よりも大きな胸と、顔の側面に二つある金色のドリルのような形状の縦巻きロールが特徴的なレヴィア・フォン・ドラゴニアがそこにいた。

 まだ入浴前のためドレスは脱いでおらず、のんびりと紅茶を飲んでいる。

 ラオは口に咥えていた魔道具『魔力マシマシ飴』を取り出すと、レヴィアに最終確認のために尋ねた。


「本当に明日、順番をずらさなくていいのか?」

「くどいのですわ、私が問題ないと言ったら問題ないのですわ」

「明日の世話係のジューンは立場的に王の代理人だからいいとしても、元々奴隷だった奴らは気にして手を出せないんじゃねぇか? そうなるくらいだったら、順番を割り込ませて対応した方がお互いのためだと思うけどな」

「みんなに言った通り、気にせずに手を出せばいいのですわ。別にシズトの初めてが欲しいという訳じゃないのですわ。順番なんて些細な事ですわー」

「身分の事を考えたら些細な事じゃねぇだろうが……」


 ため息を吐いたラオの前に、ティーカップが置かれる。

 ラオが視線をあげると、レヴィアの侍女であるセシリアと目が合った。


「セシリアからもなんか言ってやれよ。お前も貴族令嬢なんだろ?」

「そうですね。ただ、レヴィア様がそれでいいと仰るのなら、それでいいかと」

「そんな事より、ラオたちが探索したダンジョンについて知りたいのですわ!」

「そんな事って……」

「町の子たち用の研修所の教員から、『冒険者希望の子たち向けの訓練場が欲しい』と言われているのですわ! ファマリアの外のアンデッドたちに対しては、魔道具を使って安全かつ迅速に魔石を集める練習をしていたのですけれど、魔物の脅威を知らずにいるからシズトの影響力がない所で訓練したいっていう事らしいのですわ」


 レヴィアがため息交じりに言った通り、ファマリアに住んでいる子どもたちの中には魔物の恐ろしさが薄れている子たちが増えてきている。

 ファマリアの外にいるアンデッドたちはシズトの結界を越える事ができず、シズトが作った魔道具を使えば簡単に処理ができてしまう。

 Sランク以上の力を持つフェンリルが世界樹の根元にいるが、時々街の外に出てはアンデッドを狩るくらいで、人間側だと思われてもいた。

 フェンリルは町の者たちに迷惑をかけないようにと言い含められているため、極力魔力を抑え、上位の魔物特有のプレッシャーともいえる濃密な気配も消しているのも恐れられていない理由の一つだろう。

 フェンリルは最近、ドライアドたちの手伝いをしている子どもたちがどれだけ近づいても放っているため、フェンリルの恐ろしさを感じろという方が難しい。

 ラオは先程までしていた話はどれだけ言っても無駄だと悟り、なるようにしかならんと気持ちを切り替えてレヴィアの質問に答える。


「初心者用のダンジョンには丁度良いとは思うな。ただ、途中で切り上げたから五十階層以降は知らねぇ。転移陣を設置したから、また今度途中から再開する予定だが、シズトの予定次第ではしばらく無理かもしれん。その時はホムラに金を出してもらって、冒険者を雇って調査しに行ってもらうさ」

「不確定要素があるのは少し心配ですわね」

「引退間際のおっさん共がついて行くんだろ? 引き際はしっかり教えるだろうから問題ねぇだろ」

「それもそうですわね。取れる資源としては何があるのですわ?」

「大したものは手に入らねぇと思うな。九階層目まではゴブリンがいるだけだからFランクの魔石くらいだ。十階層のボス部屋には上位種のゴブリンリーダーもいたから、そこからEランクの魔石が手に入るようになる」

「Fランクの魔石でも、町の子たちには良い小遣い稼ぎになると思うのですわ。ファマリアを中心に、魔石価格が上がっているそうですわ」

「そりゃあれだけホムラたちが買い漁ってたらそりゃそうだろうよ」


 魔石に魔法を込めるタイプの魔道具を作るためにはそれ相応の量が必要となる。

 腐るような物でもなく、アイテムバッグという物があるため置き場所に困る事もない。

 魔石を入れるためだけのアイテムバッグには、ハーフエルフのノエルや、別館に引き籠って作業をしている人族のボルドが魔石タイプの魔道具を作るために蓄えられた魔石が山のように入っている。

 そのほとんどがホムラやユキがファマリアやドランで大量に購入している魔石だった。


「日帰りで行くとしたら二十階層以降に行く事はねぇだろうけど、そこから先は罠があるから気を付ける必要があるな」

「罠を見分ける特訓になりそうですわね」

「そこまで行くのなら帰りの転移陣が今の所ねぇからダンジョンで野営する経験にもなるだろうさ」

「レヴィア様、シズト様がそろそろ入浴を終えそうです」

「分かったのですわ。一先ず、情報はこのくらいでいいのですわ。入浴前の準備があるから失礼するのですわ」


 そう言うとレヴィアは静かに席を立ち、談話室から出て行った。

 ラオは二人を見送ると、背もたれに思い切りもたれかかり、天井を見上げる。


「レヴィアが本当に気にしねぇなら、一番最初はルウ……か?」


 魔力マシマシ飴を舐めながら、指を折って何かを数え、「タイミングが悪かったなぁ」と呟くラオだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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