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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第17章 結婚しながら生きていこう

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312.事なかれ主義者はまた食べなかった

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 世界樹トネリコのお世話をしてジューンさんと別れると、ファマリーの根元に戻ってきた。

 転移陣の前ではルウさんが待ち構えていて、ギュッと抱き着いて来る。大きな胸が僕の顔に押し付けられた。タンクトップを着た彼女の胸はとても柔らかく、良い匂いがしたけど、問題が起きそうなので彼女の拘束からするんと抜け出すと、呆れた様子でルウさんを見ていたラオさんの後ろに避難する。


「あら、逃げちゃった」

「そりゃそんな事したら逃げるだろ」

「その通り! ラオさんもっと言ってやって!」

「そういうのは夜にやれ」

「そうね! 今日は私がお世話係だし、夜にたくさんギュッてするわ!」

「……ラオさん?」

「あんだよ」

「とめてくれるんじゃないの?」

「結婚する予定の奴らがそういう事して、何か問題あんのか?」

「まだ僕十七歳なんすけど」

「真夜中には十八だろ」


 そうだけどそうじゃないんすよ。

 まだ婚姻届とか出してないし……婚姻届ってあるのか、この世界。


「婚姻届っていう物は聞いた事がないわね」

「この人と結婚しますよ、って役所に届け出なきゃいけないんだけど、この世界ではそうじゃないの?」

「地域によってはその土地を統治する人に報告して承認を貰わないといけないわね」

「上が屑だと婚姻税とか初夜権とか色々ある場所もあるが、ドラゴニアはそういうのは聞いた事がねぇな」

「なるほど。統治している人ってなると、ラグナさんに結婚するって言えばいいのかなぁ」

「………」

「………」

「………何で二人とも黙るの?」


 ラオさんとルウさんがきょとんとした表情で僕を見ていたけど、お互いに顔を見合わせた。

 ラオさんは肩をすくめ、ルウさんが困った様に眉を八の字にしながら、笑っている。


「私たちの勘違いじゃなければ、今目の前にいるわ」

「……なるほど?」


 土地を貰っただけなんだけどなぁ。

 何とも言えない気持ちになっているのを察してか、ラオさんがルウさんの言葉に付け加える。


「と言っても、実際に統治しているのはレヴィアだから、レヴィアに言えば後は何とでもしてくれるだろうし、もう対応してる頃だろ」

「国王陛下に会いに行くって言ってたものね」

「……結婚の報告だったら僕も行った方が良かったのでは?」

「レヴィアが一緒に来いって言わなかったんだから問題ねぇだろ。事前の根回しとかそういう目的で先に会いに行っただけだろうさ」

「そうかなぁ……皆のご両親には挨拶に行かなくていいの?」

「貴族じゃあるまいし、わざわざ挨拶は要らねぇな」

「何より、私たち冒険者だもの。たまたま里帰りをする時があったら報告をするくらいかしら」

「他の奴らもだいたい似たようなもんだろ。奴隷組はむしろ会わない方が良いパターンや会えないパターンもあるな」

「そういうものなのかなぁ」

「そういうものよ。心配だったら、一人一人に聞いて行けばいいじゃない。とりあえず今は、今できる事を楽しみましょ?」


 そう言うと、ルウさんは僕の手を取った。

 ルウさんに促されたラオさんも、やれやれと言った感じで僕と手を繋ぐ。

 背の高い二人に両手を掴まれて連れて行かれる宇宙人ってこんな気持ちだったのかなぁ。

 なんてくだらない事を考えながら、町へと繰り出した。




 今日の目的地である円形闘技場では、たくさんの人が詰めかけていた。その多くが奴隷だ。

 女子どもばかりではなく、自警団として雇っている強面の男たちや、細身だけど頭の良さそうな知識奴隷たちもいる。

 まだまだ女子どもの割合が多いけれど、町らしくなってきた。

 観客席は使われておらず、舞台に降り立ち、たくさん並んでいる屋台を見て回る。

 ラオさんとルウさんが片っ端から食べていくのでそのおこぼれを少しずつ二人から貰うんだけど……。


「はい、あーん」

「ルウさんルウさん、周りの小さな子たちが見てるんですけど」

「そうね。早く食べちゃえば見られる数が少なくて済むわ。ほら、お口開けて?」


 ニコニコしながらスプーンですくったスープを差し出してくるルウさん。

 もう何度目か分からないやり取りだけど、その度に抵抗するのも時間の無駄かもしれないと思い、諦めて食べさせてもらう。

 ここら辺じゃあんまり食べない味だったけど、魚介系のスープらしい。

 僕の視線に敏感に反応したルウさんが、首を傾げて問いかけてくる。


「これが気に入ったの?」

「いや、珍しい味だなって思っただけ」

「そう、残念。気に入ったならエミリーちゃんに伝えておこうと思ったんだけど」


 しょんぼりと肩を落としているルウさんを気にした素振りもなく、魔力マシマシ飴を舐めながら一休みしていたラオさんが僕に視線を向けてきた。


「それで? 行きたい店まであとどのくらいなんだ?」

「もうそろそろだよ。前回お邪魔した時はあんまりお客さんきてなかったのに、食べずに帰っちゃったから申し訳なかったし、今度はちゃんと食べようって思って……ここら辺だったはずなんだけど」


 見回しても空いているお店は一つもない。

 最終日という事もあり、たくさんのお客さんが詰めかけているようだ。

 お店の中には贔屓の客を捕まえる事ができたのか、早食い競争みたいな感じになっている所もあった。お代は貰わずに食べさせてるけど、後で払うのかな。

 また、少人数にたくさん食べてもらうお店と対照的に、たくさんの人が並んでいるお店もあった。

 列が長すぎて正直どこをどう並んでいるのか分からないけど、それほど美味しいのかな。

 どんな物を売っているのかちょっと覗いてみよう、と列を辿ってお店に向かって行くと、だんだんと見覚えのある屋台が増えてきた。

 そうして、列の先頭まで辿り着いてやっと思い出す。


「あった。っていうか、客すごいね」

「探してたのここだったのか。まあ、飯が評判だった店だから口コミで広がったんだろ」

「昔、私たちもお世話になっていた時期があったわね。懐かしいわ」


 目の前には、『猫の目の宿』と看板が掲げられたお店があった。

 商売繁盛しすぎていて、調理場が戦場と化しているし、注文を受け付ける人も増員されている。

 これだけの列に並んだらどのくらい待たなきゃいけないのかな。


「……んで、どうするんだ? 並ぶのか?」

「並んでいる間に、別行動でご飯買ってきてもいいのよ? お姉ちゃん頑張るわ!」

「……そこまでしてもらわなくても、いいかな」


 商売繁盛しているみたいだし、大丈夫でしょ。

 今度ドランに行った時にお邪魔しよう。

 そう思って、僕はその場から離れた。

 なんかどこからか女の子に呼ばれた気がしたけど………気のせいだったみたい。

 その後は出店しているお店をぐるっと一周して、ラオさんとルウさんに分けてもらいながら料理大会を楽しんだ。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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