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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう

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幕間の物語145.元引きこもり王女は夜遅くまで付き添った

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 ドラゴニア王国には遥か昔から多くのダンジョンがあった。

 ダンジョンの近くに町が生まれ、発展し、大都市へと至る所もあれば、ダンジョンから取れる資源に魅力がなく、廃れていく町もあった。

 国の最南端に広がる不毛の大地も、廃れた場所の一つだった。

 亡者の巣窟と呼ばれているダンジョンからは希少金属であるミスリルなどが手に入ったため、遥か昔に入植しようと幾度か試されたが、草木は育たず、アンデッド系の魔物が湧いて出てくる事もあり諦められていた。

 だが、それも一年ほど前までの事である。

 最南端の大都市であるダンジョン都市ドランと、都市国家ユグドラシルとの中間地点にファマリアという町が出来た。

 勇者と共にやってきた異世界転移者が、下賜された土地に世界樹の苗木を植え、その木を中心にどんどん町が大きくなっていっている。

 今までは魔物の間引きする際に手に入る強烈な臭いを放つ魔石しか旨味がなかったその土地が、他国との新たな玄関口となり、世界樹の素材を手に入れる事ができる数少ない場所にもなった事から、ドラゴニアの貴族が興味を示すのにも時間はかからなかった。

 多くの貴族関係者がドランに集まって情報を集めつつ、ファマリアという町を幾度も視察している。

 奴隷だらけのその町で問題を起こす者もいた。

 だが、ドラゴニア王国の国王であるリヴァイ・フォン・ドラゴニアが自治を認めているため、貴族だろうが庶民だろうが問題を起こした者は等しく捕らえられていた。

 それでもなお、ファマリアという町は多くの者が訪れていた。

 世界樹という存在はそれだけ影響力が大きいのだろう。


「だが、町を訪れるともっと興味深い物が至る所にあるのだがな」

「そうね。来る度に新しい魔道具があるのはとても興味深いわ」

「馬車で見て回った方が安全だとは思うのですが……」

「歩いた方がいろいろな物が見えるのですわ!」


 ファマリアの町を周囲に重装備の兵隊に固められながら移動する一団があった。

 先頭を歩いているのはシズトの婚約者であるレヴィア・フォン・ドラゴニアだ。

 金色の縦巻きロールが特徴的な彼女は、装飾が少ないドレスを着ていた。胸元が大きく開いていて、歩く度に今にも規格外の二つの膨らみが零れ落ちそうだ。

 その後を追いながらキョロキョロと興味深そうに周囲を見ているがっしりとした体つきの男性は、この国の王であるリヴァイ・フォン・ドラゴニアだ。レヴィアと同色の目を輝かせて興味の赴くままいろいろな所を見ていた。

 その隣でリヴァイと腕を組んで歩いているのは、パール・フォン・ドラゴニア。この国の王妃である。

 レヴィアと同じように赤い髪の毛を縦巻きロールにした彼女は、空いている左手でそれを弄りながら歩いていた。

 二人の後ろを眉を下げながらノッシノッシと歩いている大柄な男性は、二人の息子であるガント・フォン・ドラゴニアだ。母親譲りの赤い髪の毛を短く刈り上げていて、後ろ髪をぼりぼりとかいている。

 その周囲を煌びやかな装備を身に着けて護衛しているのは近衛兵である。普段は防具を脱いで農作業に勤しんでいる彼らだったが、久しぶりの本来の仕事で張り切っている様子だった。

 その気迫に周囲を行き交う通行人たちは道を開け、小さな子どもたちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

 そんな周りの様子よりも、通りを行き交う浮遊台車を押した子どもたちに気を取られているリヴァイは、顎を撫でながら呟く。


「浮遊台車、と言ったか。荷物だけではなく人間も運べるのは便利そうに見えるが、王都ではやはり難しいだろうか」

「そうね。ここと違って専用の通路を設けていないもの。馬車や通行人と接触して問題になるのが目に見えているわ」

「街灯は全て魔道具のようですよ、父上。これならば数さえ揃えば導入できるのでは?」

「この町と王都では状況が違うだろうからなぁ……。魔道具の魔力源はアンデッド系の魔石だろう? きちんと処理をしないと臭いが酷いから相場よりも安かったはずだ。それを使って維持していると考えると、王都では難しいかもしれんな」

「シズトに言えば、ゴブリン等の最低ランクの魔物の魔石でも灯りがつく物はできると思うのですわ。明るさか持続時間が減ってしまうかもしれないですけれど……」

「そうか。……まあ、検討しておこう」


 リヴァイは腕を組み、考え事をしながら歩いている。

 しばらく誰も話をしなかったが、ガントがふと思い出したかのように声を上げるとレヴィアに問いかけた。


「そう言えば昨日、エント様の教会に行ったが、勝手に開く扉も魔道具なのか?」

「そうですわ。自動ドアと言っていたのですわ」

「やはりそうか! あれは倉庫に欲しいな。両手が塞がっている時に便利そうだ」

「そんな物よりも、魔力を流したら映像が浮かび上がった物の方が利用価値があるんじゃないかしら?」

「ああ、いろいろなエント様が見れる物ですわね。……たしか、投影機とかプロジェクターとか言っていたような気がするのですわ」

「あれはエント様以外の物でも写す事ができるのよね?」

「そういう風に作ればできると思うのですわ」

「いろいろな事で活用できそうだから欲しいわね。他の物よりも優先度が高いと思うのだけれど、ガントはどう思うかしら?」

「母上の仰る通りです!」


 自分の母親に流し目を送られたガントがビシッと直立不動で答えた。

 いきなりの大きな声に周囲の子どもが驚いていたが、パールは満足そうだ。


「で、あればとりあえずその投影機とやらを依頼しましょう。内容はどんなものが良いか、じっくり考えないといけないわね」


 パールは周囲を見ながらぶつぶつと呟き始める。考えを口に出してまとめているようだ。

 両親二人とも考え込み始めてしまったのを見て、レヴィアとガントは苦笑するのだった。

 町の視察はその後も続き、夜遅くにレヴィアが浮遊台車に載せられて運ばれるのを何人もの奴隷や商人が見ていた。


「今度からは絶対夕方までには帰るのですわ~~~」


 そんな叫びが、夜なのに明るい町に響いたという。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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