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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう

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294.事なかれ主義者は行きつけのお店を見つけた

高評価&いいね&ブクマ登録ありがとうございます。

 街を散策してちょっと疲れたから休憩のために訪れたお店は獣人の女の子たちが接客してくれるお店だった。魔道具で淹れた紅茶を毎日飲んでいるからか、舌が肥えてきた気がするけど、普通に美味しかった。

 味だけではなく接客もいい感じだ。服装も普通のウェイトレスみたいな感じだし。ただ、他の店と比べたら程よい距離感だったけど、近くを通り過ぎる度に尻尾がモフッと体に当たってその度に謝られた。

 お店を出る時に「もう少し休憩していきませんか?」と良い笑顔の店主さんが話しかけてきたけど、ジューンさんが「行く場所がありますからぁ」と遮り、僕の手を引いて店を出た。お会計はいつの間にか現れたジュリウスがしていたけど、なんか店主さんの顔から血の気が引いている気がする。


「シズトちゃん、前見て歩かないと危ないですよぉ」

「あ、ごめん」


 前に視線を向けると、隣を歩くジューンさんが満足そうに頷いた。

 円形闘技場に近づけば近づくほど行き交う浮遊台車が増えていく。

 ジューンさんに手を引かれて歩いていると、前回は使わなかった客席側の入り口から入る事になった。

 入り口にいたドランの駐屯兵の一人が建物に入るために並んでいた僕に気付いた。目と目が合い、それから視線が若干上に行き、最後に隣で一緒に並んでいたジューンさんを見た。

 慌てた様子で近づいて来る。


「担当者を呼んできますので、少々お待ちください!!!」

「別に呼ばなくても……って、行っちゃった」

「すごい速いですねぇ」


 武装していて動き辛そうに見えたのに、その場にいた一人の兵士が伝令に走った。

 残された兵士さんに視線を向けると、直立不動になった。冷や汗がだらだらと流れているけど大丈夫かな。


「……大人しく待ってようか」

「そうですねぇ。案内をしてくれるかもしれませんしぃ」


 それもそうだ、と思って立って待っていると慌てた様子で近くにいた兵士の一人がどこかに行って、丸椅子を二つ持ってすぐに戻ってきた。


「こ、こちらにお座りください!」

「ありがとうございます」


 お礼を言うとホッとした様子で兵士が仲間の元へと戻っていく。

 順番待ちの列から外れて、ジューンさんと椅子に座ってのんびり待っていると、建物の奥から誰かが走ってきた。


「うわ、本当にいらっしゃる」


 聞こえてますよ、とは言わずにぺこりと会釈をすると、やってきた隊長格の兵士さんも会釈を返してくれた。


「お久しぶりです。えーっと……ラックさん、でしたっけ?」

「覚えていただいて光栄です」


 困った様に笑うラックさんは、近くで成り行きを見守っていた兵士たちに「仕事に戻れ!」と指示を出した。

 以前見た時はお腹を擦っていたから大丈夫かな、って思ってたけど、パッと見元気そうだ。


「いえいえ。あれからお腹の具合だいじょうぶですか?」

「……まあ、なんとかやってますよ」


 あ、遠い目になった。

 やっぱりポーションか何か差し入れするべきだろうか。

 アイテムバッグの中をガサゴソと漁るといろいろあったけど、どれが効くのか分からん。

 ……エリクサーなら全部直しそうな気がするけど。

 チラッと見るとラックさんは怪訝そうに首を傾げた。


「……何でもないです。それより、とりあえず待つようにと言われたんですけど、今は闘技場の中に入れない感じですか?」

「いえ、入れますよ。ただ、護衛を連れている様子がない黒髪の少年がやってきた、と言われたので私が護衛替わりとしてやってきたわけですが……いますね?」


 ラックさんが周囲に視線を向けてボソッと「俺、いらなくね?」と呟いた。

 けど、結局何かあった時はラックさんの首が飛ぶ可能性が高いとの事で、一緒に建物の中を歩く事になった。

 広い通路を右側によってしばらくの間歩いていると、闘技場の観客席に出た。

 中央の舞台では大勢の人たちが作業をしているようだ。観客席も作業をしている人がちらほらといるけど、そこまで多くない。


「各ギルドから派遣された者たちが現在会場を建設中です。魔法建築士は外縁部の建設に回されていますが、数日後にはこちらに来る予定です。彼らがすぐに作業に移れるように準備をしつつ、簡単にできる建築はしているという感じですね」

「ふーん。魔力に余裕があれば建築が楽にできる魔道具とか作ったんですけど……」

「お気持ちだけで十分です。彼らの仕事ですから」

「それもそうですね。……それにしても、舞台めちゃくちゃ広いですね。町の子たちの料理大会みたいな感じイメージしてたんですけど……」

「シズト様としてはそちらが本命でしょうが、各ギルドと話を重ねるうちに、これを機会に何かしら祭りが出来たらいい、という事になりまして……町の外の者たちを招き入れて一般の部の料理大会をする事になったんです」

「へぇ~」

「大会に参加しない町の者たちも祭りに参加できるように、一般の部は屋台形式にして、誰の料理が一番多く食べられたかを競ったり、早食い競争や大食いチャレンジも行ったりするそうですよ」

「楽しそうですぅ。私が知らない料理もあるかもしれませんねぇ」

「ご興味がありましたら、シズト様と一緒に回られてはいかがですか? 設営完了後から奴隷たちによる料理大会が行われる前日まで行われるそうですよ」


 ジューンさんがとても興味深そうにラックさんの話を聞いている。

 んー、世界樹トネリコ次第だけど、余裕があったらみんなで一緒に回ろうかな。

 そんな事を考えながら、引き続きラックさんに案内をしてもらって円形闘技場の中を見て回った。

 ただ、流石に夕方になるまで時間を潰せなかったので、来るときにお邪魔した紅茶のお店でもう一度休憩した。

 ……青い顔して大人しくしてる店主さんには申し訳ないけど、紅茶も焼き菓子も美味しいからまた来よう。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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