291.事なかれ主義者は人の事言えない
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ラオさんたちがガレオールにあるダンジョンの調査に行った翌朝。
魔道具『安眠カバー』の効果で、今日もパチッと目が覚め、すぐに意識が覚醒した。そして緑色の瞳と目が合った。
婚約者の一人のジューンさんが僕の様子をじっと見ていた。
ベッドに女の子座りをしているジューンさんは、真っ白なネグリジェを着ていた。レースのような細かな装飾が全体的にされているせいで、肌が透けて見える。大事な部分は腰まであって波打っている金色の髪の毛と透けていない布が最低限隠しているようだけど、目のやり場に困る服だった。
「シズトちゃん、おはようございますぅ。寝癖がすごいですねぇ。直しますからこっちにきてくださぁい」
「お願いします」
ジューンさんが言うように、今日は髪の毛があちらこちらに跳ねていた。
……寝相がいいはずなのに何で寝癖ついてんだ?
んー、分からん。
けど、とりあえずジューンさんが隣をポンポンと叩いて待っているので、あんまり視線をジューンさんの肩より下に向けないように気を付けながら向かう。
背中を向けて彼女の近くに座ると、彼女の動きに合わせてマットが沈み込んだ。
「じっとしていてくださいねぇ~」
「うん」
端的に答えてそれ以外の事を考えないようにしていると、ジューンさんの柔らかい手がそっと頭に触れる。
絶妙の温かさのそれに撫でられてしばらくすると、無事に寝癖が直った。
ジューンさんにお礼を言った後、着替えるから外に出て行ってもらう。
のんびりと着替えの準備をしていると部屋の扉がノックされた。
……ノック?
パーテーションの向こう側に扉があるから聞き間違えかと思ってしばらく待っていると、部屋の外から声が聞こえてきた。
「モニカです、シズト様。本日から私たちも世話係を務めさせていただく事になりましたので参りました」
「あー……なるほど」
そういえばレヴィさんがそんな事になるかもしれないって言っていたような気がする。
奴隷から解放された彼女たちがそれをしたがるか疑問だったから気楽にオッケー出しちゃったけど……もしかして失敗だったかも?
「……シズト様?」
「あ、ごめん。今から着替えるからちょっと待ってて!」
「かしこまりました」
大きな声で伝えると、向こうも若干大きな声で返事をしてきた。
……いろいろ考えるべき事がある気がするけど、何はともあれ朝ご飯を食べるために、早く着替えよう。
今日の予定は特にないし、サクッとトネリコのお世話をしたら町の様子でも見に行こうかな。
料理大会の準備で慌ただしいらしいけど、楽しそうだ。
護衛とかはジュリウスに言えば何とでもなるだろうし……そうなると、動きやすい服装の方が良いか。
ササッとラフな格好に着替えて、モニカが待っている方の扉に向かう。
扉を開くと、メイド服を着た黒髪黒目の女の子がぺこりと頭を下げる。
「おはようございます、シズト様。昨夜はお楽しみでしたか?」
「普通に寝てたよ」
「そうですか、参考にさせていただきます」
表情からは読み取れないけど、世話係としてしっかりと勤めを果たすのだ、というやる気を感じた。
特にやってもらう事なんてないんだけどなぁ、と思いつつ食堂へと向かう。
食堂にはすでに皆が揃っていた。ただ、ラオさんとルウさんがいないから、いつも二人が座っている席はノエルとジューンさんが詰めて座っている。
使用人として働いているモニカやエミリーは一緒に食事をするつもりはないようで、壁際に控えていた。
パンがこんがり焼けたいい香りが漂っているので、さっさと席に座って、いつもの食事前の挨拶を唱和した。
焼け目が良い感じについたトーストに、レモンのマーマレードを塗りながら食卓を見て思う。
「……果物多いね」
「トネリコのドライアドたちから頂いた果物を早く消費したいので。こちらで消費しきれない分はいつものように町の子たちに供給しています」
普段よりも食後のデザートが多い理由をエミリーが教えてくれた。
ラオさんもルウさんもいないから食べ切れるか自信がないけど、余ったらこの後の使用人たちの食事の際に頂くから大丈夫だ、という事だった。
……ドーラさんとレヴィさんがさりげなくデザートを確保している。
「私たちの分もちゃんと余っているので食べ切って頂いても大丈夫ですよ」
「ん」
「分かったのですわ~」
「レヴィア様、あまり食べ過ぎない方がよろしいのでは?」
「シズトの魔道具があるから大丈夫なのですわ~」
セシリアさんからの指摘も、レヴィさんは気にした様子もなくニコニコしながら野菜サラダを食べていた。
果物の食べ過ぎとか間食のし過ぎとか……そういう食生活を見直す事も大事だと思うんだけど、まあ確かに魔道具で何とかなるし人の事は言えないから、何も言わずにレモンのマーマレードがたっぷり乗ったトーストを齧った。
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