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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう

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幕間の物語139.青バラちゃんは口を噤む

たくさんの高評価&いいね&ブクマ登録ありがとうございます。


 シズトたちが転移させられた大陸の南西部にある都市国家トネリコは、一本の大樹を中心に作り上げられたエルフたちの街だった。

 国の中央に天にまで届くほど巨大な木が生えており、その周囲を普通の大きさの木々が守るかのよう森を形成していた。

 そこからさらに外側はエルフたちの居住区で、精霊魔法で木の中に家を作り上げたり、木の上にツリーハウスを作ったりしていた。観光客が訪れるのはそのさらに外側にある建物群で、そちらは人間の街とほとんど変わらない。少し街路樹が多い程度だ。

 同じ世界樹を中心に作られた街である都市国家ユグドラシルと比べると気温が高く、街の中を行き交う人たちも薄着だった。

 加護を剥奪された影響で面倒を見る事が出来ず、その結果世界樹の葉っぱが全て落ちてしまったせいで、少し前までは閑散としていた街並みだったが、今はかつての賑わいを取り戻している。

 ユグドラシルから世界樹の使徒がやってくる度に、トネリコの世話をしていた。最初は一部の者しか感じ取れない変化だったが、しばらくすると目に見えて世界樹の様子が変わったからだ。

 日に日に枝から芽生えた葉っぱが増え、大きくなっていく。

 まだ完全とは言えないが、少なくとも状況は好転しているという事でエルフたちの表情は明るかった。

 エルフ以外の種族たちも、世界樹の素材を得るために遥々大陸の北まで行かなくてすみそうだと安堵している。

 ニホン連合から大勢の観光客がやってきて活気づく街とは別の意味で世界樹の根元も騒がしかった。


「そだてー、そだて~」

「おおきくそだてー」

「たくさんそだて~」

「やなかんじ、いなくなれ~」


 世界樹の地表に露出している根の上にたくさんのドライアドたちが集まっていて、植物魔法を駆使して新たな草花を生えさせていく。

 世界樹の根元をぐるりと囲むように行われているその作業を見守っているのは、他のドライアドたちよりも体が大きく白い花が頭の上に咲いている褐色肌のドライアドと、シズトに「青バラちゃん」と呼ばれている青いバラを頭の上に咲かせたドライアド、それから金色の毛に九本の尻尾が特徴的なナインテールフォックスと呼ばれる魔物だった。


「人間さんのおかげで、リコちゃんも元気になってよかった~。連れてきてくれてありがとー」

「どういたしまして~。でもまだ森の方にはヤな感じ残ってるから気を付けないとダメだよ? 私はなんでか知らないけど大丈夫だったけど、皆はダメな気がするのー」

『それはそうでしょう、貴女に向けた呪いではないのですから』


 褐色肌のドライアドが不思議そうにナインテールフォックスを見上げる。

 つぶらな瞳と、鋭い瞳がしばしの間見つめ合った。


「九ちゃん、あの変な感じの事知ってたの?」

『呪いを使う輩と、過去に何度かやり合った経験がありましたから。ただ、術者を潰そうにもはるか遠くにいるようですし、今回はどうしようもありません。この国全域を呪うほどの術者となると、ここの出身者でこの土地の事を熟知しており、それ相応の魔力量がないと難しいと思うのですが……おそらくどこかへ行ったあのエルフでしょうね』

「でもこの子がこのまま元気になっていけば大丈夫だね!」


 青いバラを咲かせたドライアドがそう言うと、うんうんと褐色肌のドライアドが何度も首を縦に振る。

 それから意気込むように胸の前でギュッとこぶしを握った。


「早く人間さんに元気を分けてもらわないと!」

『呪いの力を跳ね返すために相応の魔力が求められるというのに、これほど短期間で元に戻しつつあるのは素直に称賛に値しますね』

「だったら姿を見せて褒めてあげればいいのに」

「九ちゃんは人見知りだから仕方がないんだよ」

『人見知りではありません。私に気付けない程度の低い者の相手をするつもりがないだけです。あの人間について来ていた一部のエルフは私の存在に気付いていた様子ですから、あの者たちであれば多少会話を交わすのも無駄ではないでしょうけど……目と鼻の先に私がいるのに気づきもせずに無防備な姿をさらすあの人間には姿を見せるつもりはありません』


 そう言い切ると、九ちゃんと呼ばれたナインテールフォックスはトネリコの根元まで行き、丸まって動かなくなる。

 それから少しして、九ちゃんの姿がだんだんと消えていき、見えなくなった。

 ナインテールフォックスが得意としている幻影魔法の一種を応用して自身の姿を見えないようにしているようだ。

 魔法を行使している反応を感じ取れるドライアドやエルフたちと比べると、シズトにはそういう感覚が備わっていないから気づかないのも仕方がないだろう。

 だから狐さんと人間さんの対面は当分先になりそうだな、と青バラちゃんは考えたが、それで困る事はなさそうだから別にいいかと植物を育てるドライアドたちの様子を見守るのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

ランキングが久しぶりに上がっているようで驚きました。

今後ものんびり更新し続けますので、少しでも楽しんで頂けると幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] へぇー、ここは九尾が守ってるんだ 呪いの主に当たり付けてるのなら、それを現地のエルフ達に説明すれば 「これだけのものを差し出したので許してください」という安心を買うために エルフ幼女をシズ…
[一言] どこぞのフェンリルにも言えるけど、この作品の獣ってどれも何の役にもなってないなー。もういらないでしょ。駆除した方が逆に上手く行くんじゃ?って思う
[一言] まあ、そんなことを言ってるから容易くやられてるでせう……お狐さんは
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