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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第16章 片手間にいろいろしながら生きていこう

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幕間の物語138.世界樹の麓の町は今日も賑やか

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 ドラゴニア王国の最南端を治めているドラン公爵の領都ドランと、都市国家ユグドラシルの中間地点に生えた世界樹ファマリー。それを取り囲むように広がっているのはファマリアという町だった。

 町の外側は、草一つ生えていない不毛の大地。

 そこではアンデッドがわらわらと徘徊しているが、時折世界樹の根元から飛び出したフェンリルが蹂躙し、その攻撃から逃れたアンデッド系の魔物にとどめを刺しながら魔石集めをする中年の冒険者たちによって町の外に魔物が溢れる事を防いでいた。

 町の外側はどんどん拡張されている。外縁部にはレールが敷かれ、トロッコが平地であるのにも関わらず、ゆっくりと自走している。

 魔道具化されたトロッコの積み荷はたくさんの資材と、それを運ぶ小さな子どもたちだ。皆一様に奴隷の証である首輪をつけていた。


「ほらアンタたち! 目的地に着いたからさっさと降りなさい!」


 連結して長く連なっていたトロッコの一番前に陣取っていた少女の掛け声と共に、わらわらと小さな子どもたちが降りた。

 それから、近くで待機していた浮遊台車と呼ばれる地面から浮いている物の上に協力して積み荷を乗せていく。

 その一方で、成人に近い少女たちが、外からやってきた商人から預かった荷物をお喋りをしながら載せていく。


「料理大会、二週間後に行われるんだって」

「へー……」

「へー……って、反応悪いわね」

「だって、アタシ料理苦手だし。一週間後に行われる試験なんて合格できないよ」

「やってみないと分かんないでしょ! 仕事が終わったらマーケット行きましょうよ。調理道具一式を売ってる行商人探したいし」

「えー……アンタだけで行きなよ、めんどくさい」


 そんな話をしている二人組の少女もいれば、火傷痕が酷い黒髪の男の子と協力して大きな荷物をトロッコに乗せようとしている少女たちも料理大会について話をしていた。


「今回も賞品ですごいの出るのかな~?」

「でるんじゃね? 知らんけど」

「それならアタイ、やろうかな。前回の花を育てる大会……? みたいなので優勝した子、エリクサー貰ったらしいし」

「みたいね。火傷痕だけじゃなくて体調もすごくよくなったんだって!」

「バーンくんのために頑張ろうかなぁ」

「抜け駆けずるいわよ!」

「アンタだって出ようかな、とか言ってたじゃない」

「二人とも喧嘩は止めようよ~」

「意気込むのは勝手だけどさ、お前ら料理できるのかよ? 一週間後に予選みたいなのあるんだろ? 知らんけど」

「気合で乗り切るわ!」

「ばっかだなぁ。やった事もないのにできる訳ないじゃん」

「研修所で料理の基礎知識を教えてくれるらしいよ~。皆で行こうよ~」


 いがみ合う二人の少女を仲裁しようと、おっとりとした子がアタフタとしている。

 そんな三人の女の子の想いに気付いているのかいないのか、男の子は淡々と荷物をトロッコに乗せていた。




 外では奴隷だけではなく、商人やその護衛として雇われた冒険者が行き交っていて騒がしい。

 それとは対照的に、ドラン兵の駐屯地にある建物の一室は静かだった。

 円卓の席に着いているのは、冒険者ギルドのファマリア支部でギルドマスターを任されているイザベラと、商業ギルドマスターのギル。それから、新参者の工房ギルドのギルドマスターのドーントロスだった。

 イザベラは鋭い視線を他の二人に向けている。小柄な女性だが、冒険者ギルドの責任者を任されるだけあり、威圧感があった。

 それを飄々と受け流しているのは、胡散臭い笑顔を浮かべているギル。宝石やネックレス、耳飾りなどの装飾品をこれでもかと大量につけた彼は、狐目を細めて笑っている。

 もう一人のドワーフの男性ドーントロスは、腕を組んで目を瞑って気にした様子もなかった。

 円卓についていないのは二人。

 お腹をしきりにさすっているドラン兵代表のラックと、魔法使い然としたローブを身に纏っているユキだった。

 ラックは早く終われ、と思いながら直立不動のまま空気になる事に徹している。

 一方、ユキは気だるそうな様子で立っている。真っ白な髪の毛先をくるくると弄りながら、話をしていた。


「――と、いう事で催し物を二週間後に行うわ。ドラン兵には会場の警備を、工房ギルドには必要な用具の作成依頼と、闘技場内に炊事場を大量に作って欲しいわ。練習も好きなようにさせたいから、なるべく早く作って頂戴」

「その分金は頂くぞ」


 目を瞑ったままのドーントロスが低い声で端的に要望を言うと、当然の事だとユキは頷いた。

 だが、狐目の男ギルがそれに待ったをかけた。


「今から作るのではいろいろ足りないのでは? それこそ、我々商業ギルドが手配しましょうか?」

「それにどのくらい時間がかかるのかしら?」

「そうですねぇ、今のままでは最短で三日でしょうか。アンデッドを楽に倒せる魔道具をご提供して頂けるのであれば、夜も移動して二日ですね。転移陣を使わせていただけるのであれば――」

「残念ながらその事については私に権限はないね」


 話の途中でばっさりと切り捨てるユキに対して、ギルは肩をすくめるだけだった。


「ホーリーライトとやらは融通して頂けるのでしょうか?」

「残念ながら、新しく作るのは無理さね。ご主人様は今、世界樹にかかりきりだから、新しく魔道具を作る余力はないわ」


 夜な夜な魔力切れになるまで加護を使っているシズトの事は記憶の彼方に放り捨て、ユキははっきりと「無理だ」と要求を突っぱねた。

 ギルはやれやれ、と言った様子で首を振ると「であれば三日はかかりますな」と答えた。

 商業ギルドのファマリア支部に置かれた速達箱を用いれば迅速にドランやユグドラシルの市部に連絡を取る事が可能だが、そこから物を買い集めて送らせると考えたら三日でも足りないくらいだ。


「で、あればあなたたちには食材の調達でもしてもらおうかねぇ。一先ず一週間後。基本的な調理スキルを知りたいだけだからそんな凝った物は要らないから、適当に集めてきて頂戴」

「我々冒険者ギルドは、商人たちの護衛依頼を出せばいいのかしら?」

「理解が早くて助かるわ」


 ユキは言いたい事を言い終わると、踵を返して部屋を後にする。

 扉が閉まる時、まだ話し声が彼女の耳に届いていたが、これ以上長居しても無意味だと判断すると、その場を後にするのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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