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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第15章 三本の世界樹を世話しながら生きていこう

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278.事なかれ主義者は祭りの気配を察する

評価&いいね&ブクマ登録ありがとうございます。

 レヴィさんがセシリアさんとドーラさんを連れて帰ってきたのは夕食の時間を少し過ぎた時だった。


「ただいまですわ~」

「お帰り。あれ? ドレス脱がなくていいの? あんまり好きじゃないって言ってなかったっけ?」

「お腹が空いてどうでもよくなったのですわ~」


 レヴィさんはドレス姿のまま食卓に加わると、ナイフとフォークを優雅に使って食事を始めた。ドーラさんは甲冑を脱いで来たのか、インナー姿だ。お風呂の時にだいぶ慣れたつもりでいたけど、ちょっと目のやり場に困る。

 そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、二人とも「いただきます」と唱和すると、食事を始めた。

 レヴィさんは好みの焼き加減で作られたミノタウロスのステーキを切り分けて口に運び、その後に肉の倍以上の量の新鮮なサラダをもしゃもしゃと食べた。


「今日もお野菜が美味しくて幸せなのですわ~~」

「美味」

「ドライアドたちとレヴィさんが丹精込めて作ってるおかげだね」

「それもあるだろうけど、シズトの影響もあるだろ」


既に食べ終わり、デザート代わりに魔力マシマシ飴を舐めていたラオさんがジト目で僕を見てきた。

ドーラさんもこくりと頷いて、後に続く。


「堆肥、水、世界樹……諸々検証中」

「魔道具で作られた水の影響が何かしらあるのであれば、耕耘機も土に何かしらの影響を与えていても不思議じゃないかと」


 レヴィさんの後ろに控えていたセシリアさんも話に入ってきた。

 どういうわけか、水やりをしやすくするために作った水が湧くじょうろで水をあげると育ちが良いらしい。

 栄養素が豊富とかあるんだろうか。分からん。

 戦闘系じゃないから知られていないだけで、農作物を育てやすい水を作り出す魔法があって、その魔法陣を無意識で付与している可能性があるってジュリーンだったかノエルだったか、前に言ってた気がする。

 耕耘機も耕しやすくするために作ったけど、ジューロさんが作った回転の魔法陣と微妙に差異があるらしいし、あり得ない話ではないか。

 付与する時に魔法名が分かる時もあるけど、分からない時の方が多くて不思議だった。ただ、それは世界には名付けられていない魔法がたくさんあるからなのかもしれない。


「野菜の話はまたその内してもらうとして……レヴィさんはトネリコの番人たちから何か言われなかった?」

「国のトップの事ですわ? シズトに関わる事ですから、しっかり話してきたのですわ。今までの慣例から世界樹を育てる事ができる者に上に立ってほしいみたいですわね。次善の策としてエルフが使徒の代理人として国を治める事も考えているみたいですけれど、その場合はやはりシズトと関わりが深ければ深いほどいいと考えているみたいですわ」

「これ以上関係深めたくないなぁ」

「そうですわね……ジューンが前例になってしまっているから向こうがそうしようとしてくるのは想定の範囲内だったのですわ。シズトがトップにも立たず、代理人とも結婚せずに済む方法は何か話し合ってみたのですけれど、エルフであれば最悪誰でもいい、という事だったのですわ。向こうは代理人が奴隷でも構わないと言っていたのですけれど、他国の王と会談する時にはそれはあんまりよろしくないですわね」

「まあ、そりゃそうだろうね」


 常に立場が下になってしまうような気がする。

 ファマ様は無関心だし、僕も興味ないし、なにより別に都市国家トネリコの人たちに辛い思いをしてほしい訳じゃないからそれはなしだ。


「あとは、ジューンをトネリコとユグドラシル二国の代理人とするのもありのようですわ。ただ、この場合ジューンの負担が大きくなると思うのですけれど……」


 僕とレヴィさんの視線がジューンさんに向かう。

 ジューンさんは口元を拭いて片付けの手伝いをしようと立ち上がったところだった。


「わ、私ですかぁ?」

「そうですわ。ノエルやジュリーンも奴隷から解放すればありかも、とは考えたのですわ」

「断固拒否っす!! ごちそーさまでしたっす~~~」


 そういいながら食べ終えたノエルは早足で部屋から出て行った。

 口元ぐらい拭ったらいいのに、と思いながらノエルを見送る。

 レヴィさんは肩をすくめて話を続ける。


「と、言うと思ったからノエルは無しですわね。ジュリーンは別館に住んでいるのもあって、シズトとの関係性は浅いですわ。今後もきっと、シズトが望まない限りこのままだと思うのですわ」

「そうだね。奴隷だとしても解放されたら自由に過ごしてほしいから、奴隷から解放して結婚、っていうのは考えてないかなぁ」


 なんか食べ終わった食器の回収をしに隣までやってきたエミリーの尻尾がしょんぼりと垂れた。

 悩みがあるのか、とぼとぼと配膳台に空いたお皿を置きに行くエミリー。

 理由が分からないからモニカに後でそれとなくフォローしてもらおう。


「シズトがそう言う事も想定済みですわ。だからこそ、消去法にはなってしまうのですけれど、現在婚約者であるジューンが適任であると判断したのですわ。もちろん、他国のトップに近い人間が、代理人の地位に着く事に反対する者も出てくるでしょうけれど、それ以外道がないのだと突き付ければ何とでもなると思うのですわ。少なくとも、トネリコの世界樹の番人は味方してくれるようですわ」

「なるほど……ジューンさんはどう思う?」

「私ですかぁ。そうですねぇ、シズトちゃんの負担が少しでも軽くなるのであればしてもかまいませんがぁ、その場合は新しく料理人を追加した方が良いと思いますぅ」


 確かに、二つの国の代理人になるのであればより忙しくなるだろうからエミリーのお手伝いも必要か。

 ……お手伝い、か。


「それなら、料理が得意な子をファマリアから見繕うのはどう? 下手に他の所から連れてくるとエミリーが働き辛くなるかもしれないし……」

「そうですねぇ、町の子たちの仕事の幅が広がるのは良い事だと思いますぅ」

「じゃあそういう事で」


 そうと決まれば、誰にお手伝いに来てもらうか、何だけど……どうしようかなぁ。

 料理大会みたいな事をして、優勝した人に来てもらうとか……?

 審査員を誰に頼むべきか分からないけど、しばらくお祭りみたいな事をしてなかったし、奴隷たちの息抜きがてら遊びでやってみるのもありかなぁ。

 なんて事を考えていたら、指輪を外したままだったレヴィさんが勢いよく立ち上がった。


「面白そうですわ! 審査員には当てがあるから早速連絡してくるのですわ! ごちそうさまですわぁ~~~」


 早歩きで外に出て行ったレヴィさんを、セシリアさんはやれやれと言った感じで追って出て行った。

 ……なんか大事になりそうな予感がする。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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