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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第15章 三本の世界樹を世話しながら生きていこう

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277.事なかれ主義者は聞こえなかったふりをした

評価&いいねありがとうございます。

 森の外に出るまでクーは結局起きる気配はなく、一緒に浮遊台車に乗って運ばれた。

 森を抜けると、馬車が停まっている向こう側の街から歓声が届く。

 まだ完全ではないけれど、新しい葉が芽吹き始めたのを確認したからトネリコのエルフたちが喜んでいるらしい。

 レヴィさんたちはまだ戻ってきていないみたいだし、観光はせずにさっさと帰ろうかな。

 今の格好のまま街に行ったら大変な事になりそうだし、護衛に迷惑をかけてしまいそうだから。


「クーの事、お願いね」

「お任せください!」


 ジュリエッタさんがお姫様抱っこをしてクーを持ち上げ、僕はゆっくりと立ち上がった。

 やっぱり魔力を一気に使うとだいぶしんどいな、と思いながらのろのろと馬車に乗り込もうとした時、声をかけられた。


「お待ちください、世界樹の使徒様! 一つ、ご相談したい事があります!!」


 いきなりの大声に驚いてそちらを見ると、トネリコの世界樹の番人のリーダー格であるリリアーヌが跪いた姿勢でそこにいた。

 彼女の後ろではトネリコ側の番人たちがずらっと並んで同じ姿勢で待機している。


「とりあえず立ってもらっていいですか?」

「いえ! このまま、ご相談させていただきたく存じます!!」


 ジュリウスに視線を向けると、彼は頷くだけで助けてくれない。

 これも一種のパフォーマンスか何かなんだろうか、と思いながら跪かれた状態なのはもう諦めて先を促す。


「現在、世界樹の使徒様……ではなくトネリコの世界樹の使徒様がいらっしゃらない状況です! 現時点では我々世界樹の番人が代理で治めている状況ですが! 我々もユグドラシルのように世界樹を育てる事ができるシズト様に治めていただきたく存じます!」

「面倒だし、遠慮させていただきます。今後もあなたたちで運営していけばいいと思いますよ?」

「我々では力で言う事を聞かせるしかできぬのです!」


 恐怖政治的なものだろうか。

 政治の事はよく分からないけど、それはちょっとかわいそうな気もするけど、厄介な事になりそうなのでご遠慮したい。


「世界樹を育む事以外を煩わしいと感じられているのであれば、ユグドラシルのように代理人を選定していただいても構いません! 見目の麗しい者たちを集め、そこからお選びいただいても結構です!」

「あ、そういうのは間に合ってますので大丈夫です。いや、マジでほんと」


 神輿になるのはまあ仕方ない部分もあるだろうけど、正直マジで結婚相手はこれ以上要らない。僕と彼らの間に子どもができても、ファマ様から加護を与えられる可能性は僕が生きている限り低いだろうし。

 ジュリウスに視線を向けると、彼は一度頷いて立ち塞がるように僕とリリアーヌさんたちの間に割って入った。


「これ以上の問答は無意味だ。シズト様は大変お疲れになられているので、話の続きはシズト様の婚約者であるレヴィア・フォン・ドラゴニア王女殿下にするように。それに、世界樹の素材が採取する事ができないのが現状のはずだ。であれば、国の代表がいなくてもある程度は回るのではないか? お前たちもエルフであれば気長に待て」


 もう帰っていいっすかね。まだっすかね。

 ジュリウスがリリアーヌさんたちの方を見ているから分からないけど、リリアーヌさんはジュリウスをじっと見ている様だった。その眼差しは真剣そのもので、ジュリウスの真意を推し量ろうとしているのかもしれない。

 しばらく無言が続いたが、リリアーヌさんがスッと立ち上がる。


「分かった! レヴィア王女殿下にご意見を頂くとしよう!」


 リリアーヌさんたちは僕に向けて深く一礼をすると、去っていった。

 ジュリウスが僕の方に向き直って口を開く。


「それでは、屋敷へ帰りましょう」




 屋敷に戻って服を着替えて部屋着でゴロゴロとベッドの上で過ごしていると、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

 ラオさんとルウさんの話声が近くで聞こえる。

 そちらを向くと二人は武装を解いていて、タンクトップにホットパンツといういつものラフな格好でベッドに腰かけていた。


「――確かに、何もない事が一番よね。それでも……ってあら? シズトくん、起きたのね」


 僕が起きた気配にすぐに気づいたのか、話を途中でやめてルウさんが振り返る。

 ニコニコと嬉しそうに笑いながらずんずんと四つん這いの姿勢で僕の方に近づいてくる。僕は慌てて起き上がった。

 なんかそのままくっついてきそうな気がしたけど、ルウさんは僕の慌てようを見て、きょとんとした様子で首を傾げた。


「あら……何もしないわよ?」

「ほんとに?」

「ほんとほんと。だって、今日はお姉ちゃんの日じゃないもの。それまで我慢するって決めてるの」

「ルウさんの日でも我慢してもらえると僕としては嬉しいんですけど……」

「それは約束できないわ。だってシズトくんが可愛いんだもの。仕方ないわよね、ラオちゃん」

「アタシに振んなよ」

「ラオちゃんだってさっきまで……キャッ!」


 ラオさんに両足首を掴まれたルウさんが、ベッドから引きずり降ろされた。

 ルウさんの話の続きが気になったけど、顔を赤くしたラオさんにじろっと睨まれたのでそっぽを向いて窓の外の景色を眺めて過ごした。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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