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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第15章 三本の世界樹を世話しながら生きていこう

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268.事なかれ主義者は一応聞いてみる事にした

 屋敷の外にある転移陣を使って転移をすると、馬車は街の外にいるようだ。

 諸外国、特にニホン連合などに向けたパフォーマンス的にもう一度街に入り直すらしい。

 馬車の周囲は畑が広がっていたが、どの畑も枯れているか、出来が悪いかのどちらかのようだ。

 その様子を車窓から見ていると、ひょこっと一輪の青いバラが視界に割り込んできた。

 ドライアドの青バラちゃんの頭から生えているバラが元気よく咲いている。

 連れてくるつもりはなかったんだけど、世界樹トネリコの世話をしに行くと伝えたら興味を示してついてきちゃったようだ。

 青バラちゃんが心配そうな表情で窓の外の景色を見ていたんだけど、僕を見上げてきた。


「みんな元気ないね、人間さん」

「そうだねぇ。世界樹の影響って結構大きいんだね」

「んー、そうだけどそうじゃないかも?」

「どういう事?」

「世界樹から漏れ出る魔力とかで確かに植物は育ちやすいの。でも、それだけなんだよ? 世界樹がお休みしてても、たくさん収穫できないだけで、普通の植物が枯れちゃうほどの影響はないと思うの」

「ふーん……じゃあ、畑が大惨事なのはまた別の理由があるの?」

「そうだと思う。でも、それが何か分からないの」


 ドライアドが分からなかったらきっと誰も分からないんじゃないかなぁ。

 もう一度窓の外に視線を向けると、畑の世話をしていたエルフとおそらくその奴隷たちが作業を止めて、僕たちの馬車に向けて平伏している様子が見えた。

 遠くの畑に目を向けても、同じような光景ばかりだった。

 さっさと街に入った方がよさそうだ。

 護衛の面々は馬車から既に降りていた。

 僕は馬車の中でこのまま待機なので、座席に腰かけると、ジューンさんでもレヴィさんでもなく、小柄な少女が僕の隣に腰かけ、そのまま僕の方に倒れ込んできた。


「久しぶりのお兄ちゃんだ~。膝枕して!」

「いいよ、って言う前に既にしてるじゃん」

「別にいいでしょ~、減るもんじゃないしー。それにお兄ちゃんなら『いいよ』って言ってくれると思ってたしー」


 まあ、そうだけどさ。

 僕の太ももの上に頭を載せて、すりすりと擦りつけているのはホムンクルスのクー。

 先程まで寝ていたのか、空のように薄い青色の髪は寝癖であちこち跳ねている。

 それを押さえ込むように頭を撫でていると、夕日に染まった空のような橙色の目が気持ちよさそうに細められ……そのまま寝た。


「寝る子は育つって言うけど、ホムンクルスも育つのかなぁ」

「どうなんでしょうねぇ」

「分からないのですわ。ただ、相手の攻撃などに合わせて姿形を自在に変える魔法生物もいたそうですし、その様に作られていれば可能かもしれないですわね」

「……そのように作ってないので育つ事はないっすね」


 僕の正面に座ったレヴィさんとジューンさんは優し気な眼差しをクーに向けていた。

 そのタイミングで、セシリアさんが車内に戻ってきた。一度馬車から下りて護衛としてついて来ていた近衛兵や周囲を警護していたエルフたちと話をしていたんだけど、話が終わったようだ。


「馬車はこのまま世界樹の根元に行くのではなく、街の大通りをぐるっと一周するようです」

「パフォーマンスですね、分かります」

「ご理解いただけてなによりです」

「他にも、トネリコの窮状を見せる意図もあるようですわね」


 首飾りにしていた『加護無しの指輪』を指で弄びつつ、レヴィさんが呟いた。

 そんな事しなくても、ファマ様を広めるためにお世話するんだけどなぁ。

 馬車がゆっくりと動き出す。

 ユグドラシルの特注品であるこの馬車に色々細工したから揺れもほとんどない。

 クーは起きる事なくすやすや眠っているし、青バラちゃんは窓の外をじっと見ている。頭の上に咲いている青いバラが風に吹かれて揺れていた。




 街の中はエルフ以外も大勢いて、『生育』の加護を一目見ようと集まってきているようだ。

 日本人のような見た目の人もそこそこいるのは、ニホン連合が近いからだろう。

 街の中の街路樹や、花壇の花は枯れかけている様子だ。

 ただ、話では世界樹に頼らずに生活していた周辺のエルフの村や里ではそういう事が起きておらず、なんとかそういう所やニホン連合、ガレオール等の他国から食料を買い集めているらしい。

 ただ、今まで世界樹の素材を売る際に結構強気な事をしていたらしく、商人たちには足元を見られているんだとか。

 流れていく景色を見ている間に色々集めてきた情報を説明してくれたセシリアさんが、僕に視線を向けてきた。


「『トネリコに神罰が下っているのではないか』という者もいるそうです」

「ファマ様が神罰~?」

「はい。何かお聞きになってますか?」

「いやー、特に何も聞いてないよ? 強いて言うなら、海鮮系の貢物をたくさんしてほしい、って言われたくらいかなぁ」


 毎日買い出しして捧げるのはちょっと大変だから、ガレオールの奴隷たちに買いに行ってもらおうかな、って検討中だけど。


「エルフたちについては?」

「ジューンさんと婚約する時にも聞いたけど、エルフには興味がないって……そのくらい?」


 僕とエルフの誰かとの間に子どもができても、ファマ様は加護を授けるつもりはないって言ってたけどそのくらいだ。……暗殺されると怖いので、僕が死んだ場合は以前の縁があるから、どうしようもなくなったら加護を与えるかも、と言っていたのは内緒だ。


「だから、今回の事に関してはファマ様は関係ないよ。別の何かがあるんじゃないかなぁ」

「承知しました。では、その旨を後程、皆に共有しておきます」


 ……万が一があるかもしれないから、ちょっとお祈りする時に聞いてみようかな。

 最近、神力を蓄えるために接触を控えているみたいだし、答えてくれえるか分かんないけど。

 そんな事を思いながら、馬車に揺られて目的地まで連れて行かれるのだった。

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