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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう

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260.事なかれ主義者はむせた

高評価&いいね&ブクマ登録ありがとうございます。

 レヴィさんと一緒に通されたのはランチェッタ女王陛下の私室の一つのようだ。

 非公式に話をしたい事があるとの事でランチェッタ女王陛下に手を引かれてこの部屋に入ったんだけど、二人っきりだと何か誤解が生じると困るからレヴィさんの手をとっさに掴んで一緒に室内に入った。

 レヴィさんとランチェッタ女王陛下が笑顔で見つめ合う謎の時間があったけど、レヴィさんはその場にとどまる事になったのでちょっとホッとする。

 でも、護衛としてついて来ていた男性のジュリウスだけではなく、女性のラオさんとルウさんも室内には入れてもらえなかった。部屋の扉の前で待機しているので万が一何かあったらすぐに入ってきてくれるだろう。

 ちょっと心細いけど、『加護無しの指輪』を指から外して首飾りにしているレヴィさんは堂々とした様子で椅子に座っているので、僕もあまり気にせずにレヴィさんの隣に腰かける事にした。

 この部屋の中に唯一いた褐色肌のメイドさんが紅茶を淹れて目の前のテーブルに並べ終わったところでランチェッタ女王陛下が口を開く。


「さて、今回呼び出した件については分かっていると思うけど………あなたが作った魔道具の件についてよ」


 ですよねー。

 まあ、ガレオールの軍船に囲まれた状態で『濾過サーバー』を作ったからそりゃそうなるよね、分かる。

 レヴィさんの方をチラッと見るけれど、彼女はランチェッタ女王陛下の目を真っすぐに見ていてこちらを見る様子がない。


「なんでも、帆を張らずに進むように船を改良したり、湯水のように真水を使いまくったりしたそうですね。……詳しく話を聞いてもいいかしら?」

「詳しく知りたい、という事は購入を検討している、という事でよろしかったですわ?」


 レヴィさんが口を挟んだところでピクッと眉を動かしたランチェッタ女王陛下。

 何だか二人の雰囲気が怖いんですけど! 助けて! セシリアさん!

 なんて事を思うけど、今この場にいないのだからどうしようもない。


「わたくしはシズト殿にお聞きしているのですが?」

「それは大変失礼な事をしてしまったのですわ。ただ、以前もお伝えましたけれど王侯貴族に対する魔道具の販売、交渉については私に一任されているのですわ。ですので、何かしらの交渉を考えていらっしゃるのであれば、私が承るのですわ」

「………」

「………」


 二人とも笑顔だけど怖いんすけど!!

 プルプルと震えているのを見かねたのか、それとも元々その予定だったのか分からないけど、部屋にいた唯一のメイドさんが机の上にケーキなどを置いてくれた。

 ありがとう、メイドさん! と、心の中で感謝してとりあえず目の前のケーキに手を付けるのだった。




 食べてなくなれば次のスイーツが出てくるので、せっせといろんな種類の焼き菓子やらケーキやらを食べている間にも話は進む。

 絶えず何かしら食べているのでレヴィさんとランチェッタ女王陛下が二人で話をしている。


「なるほど。『魔動スクリュー』に『濾過サーバー』だけでなく『除塩杭』もある、と。それらは魔道具店で売り出すのかしら?」

「いずれの商品も現状ではシズトしか作れないのですわ。ですから、店で大量に出しているような同じ品質の物を大量に並べて売る事はしないのですわ」

「いずれは他の人物も作れるようになるのかしら?」

「それは分からないのですわ。性能は落ちるけれど実用的な物もあれば、まったく使い物にならない物もあるのですわ。これからの魔道具師に期待ですわね」


 このケーキに乗ってる果物美味しいけど何だろう?

 見た目は苺だけど青い。

 首を傾げながら考えていると、レヴィさんがボソッと小声で教えてくれた。


「ブルーベリーですわ。過去の勇者様が名付けたと聞いているのですわ」

「そいつに物申したいわ。絶対ふざけたでしょ」


 これがブルーベリーなら本物のブルーベリーは何ベリーじゃ。

 口に含むと苺っぽい味だ。ブルーストロベリーでいいんじゃね?


「……ダンジョン産の魔道具も模倣する事ができていないから、あまり期待しない方がよさそうね」

「そうですわ? シズトが抱えている魔道具師は『ダンジョン産の物は高すぎて、王様レベルの金持ちじゃない限りいろいろな物を見て比べる事ができないのがネックだった』と言っていたのですわ。だから、効果の似た物をシズトが作れるから今後できる可能性もあるかもしれないのですわ~」


 ああ、ノエルが不健康な生活をしていた原因の一つね。

 加護の事もあって金銭感覚狂っちゃうけど、ダンジョン産の魔道具、一般庶民だと高いらしいからそうなるのも仕方ないか。

 あ、紅茶切れた。

 褐色肌のメイドさんがすでにスタンバっていたみたいで、すぐに淹れて貰えた。


「そう………まあ、いいわ。シズト殿しか作れないならこの場で依頼すればいいのかしら?」

「依頼されても、いつになるのかは分からないのですわ。それこそ、ドラゴニアの王侯貴族だけではなくいろいろな国の方々から依頼が舞い込むため、依頼がたまり続けているのですわ」


 作っても作っても減るどころか増えてるもんね、依頼数。

 最近は内容を一覧にしてもらって軽く目を通しているし「急ぎでお願いします」と言われた物は作ってるけど、ありったけの魔力を毎日使わない限りは増え続けるだろうなぁ。

 大陸一周している間にも増えると思うし、ほんとにどこかで何とかしないと。

 馬車馬のように働いて人生楽しめないなんて嫌だ。


「最優先でやってもらう事は出来ないのかしら?」

「一つにつき数倍の値段を払ってもらう事になるのですわ」

「…………それは、難しいわね。魔動スクリューは大陸間用の船に取り付けるだけにとどめたとしても、除塩杭と濾過サーバーはあればあるだけ欲しいし、以前あなたが着ていた『適温ドレス』も欲しいわ」

「国庫が空になりそうなのですわ」

「まったくね」


 お金が一カ所に集まり過ぎたらやばい事が起こりそうだなぁ……。

 紅茶を飲みながらそんな事を思っていると、悩ましげな表情だったランチェッタ女王陛下が深く息を吐いた。


「これはもう、あれね。わたくしがシズト殿と婚姻するしかないわね」

「ゴフッ!!!」

「そうかもしれないですけれど、それはシズト次第ですわー」

最後までお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] やったねシズト、嫁が増えるよ!
[一言] 追い越されるラオさんが可哀想でならない。 存在意義も揺らいでるからこの辺りでテコ入れしないと埋もれてしまいそう。
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