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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第14章 海洋国家を観光しながら生きていこう

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255.事なかれ主義者は奴隷たちと見て回る

評価&いいね&ブクマ登録ありがとうございます。

 別荘に転移陣を設置した翌日は、魔道具を作って過ごした。

 魔力を温存するために世界樹ユグドラシルのお世話をした後、ガレオールで働く事になるという奴隷たちと顔合わせを済ませたらあとはひたすら魔道具を作っていた。

 それでもまだまだ魔道具の依頼は溜まりに溜まっているし、『除塩杭』と名付けた魔道具以外の別荘用魔道具もまだまだ作りたい。でも昨日はひたすら作ってたし、今日くらい遊んでもいいような気がするんだよなぁ。楽しく生きるためのお金は十分すぎるほどあると思うし、一日くらい何もしなくても誰も怒らない気がする。

 エミリーが準備をしてくれた朝食を食べながら考えていると、朝食を食べ終えたノエルがガタっと立ち上がり、走って自室に戻っていく。今日も今日とて魔道具作りのノルマをさっさとクリアして除塩杭などの新しい魔道具の観察をするつもりなんだろう。

 研究熱心なのは良い事だけど……。


「ノエル、まだご飯食べてる人がいるんだから、室内で走らないでよ」

「埃は埃吸い吸い箱が吸うから問題ないっすぅ~~~………」


 まあ、そうなんだけどさ。気分とかあるじゃん。

 開け放たれた扉を壁際に控えていた人族の奴隷のモニカがそっと閉めた。

 僕と目が合うと目礼されたので返しておく。


「シズトは今日も魔道具作りですわ?」

「んー、どうしようかな……。昨日あいさつした子たちの事が心配だし、別荘の様子見てこようかなぁ? 不便な所があれば魔道具とかでなんとかしたいし。レヴィさんはどうする?」

「残念ながら今日はガレオールの王城で話し合いとかいろいろあるのですわ」

「ああ、だからドレス姿なんだね」

「そうなのですわー」


 今日のレヴィさんは魔道具化したドレスを着ていた。

 ドワーフの国ウェルズブラで大活躍した『適温コート』の魔法陣を流用しただけの物だけど、レヴィさんに求められて作った逸品だ。

 海のように深い青色のその服は露出がほとんどなく、生地も薄くない。話のきっかけになるようにあえて厚みのある服を選んだらしい。


「転移陣の話をしてくるのですわ! それ以外の事も話すかもしれませんし、帰りは遅くなると思うのですわー」

「夜ご飯は?」

「いつもの時間に間に合わなかったら食べてていいのですわー」

「わかった。ドーラさんもレヴィさんの護衛だよね?」

「ん」


 こくりと頷いたドーラさんは、目の前に並べられた山盛りの食事をどんどん食べていく。

 あの小さな体にどうしてあれだけ入るのか……気になる。


「ラオさんとルウさんは今日何するの?」

「あの島だから必要ねぇだろうけど、お前について行くつもりだよ」


 やらかさないかの監視ですね、分かります。

 ただ最近は止められる事が少なくなってきたんだよな。……諦められてるだけな気もする。


「お姉ちゃんもシズトくんと一緒にいたいからそうするわ!」

「じゃあ二人とも魔道具作りの手伝いお願い。ジューンさんは?」

「私はぁ、今日はエミリーちゃんとぉ、ガレオールの料理の研究をしようと思いますぅ」

「ありがとうございます」


 ついお礼を言っちゃったけど、是非ともお願いしたい。

 刺身がいつでも食べられるようになるといいなぁ。

 ……そう考えると、お魚を定期的に手に入れる事ができるようにしないといけないかな。


「私はサイレンスの店番かしら、ご主人様?」

「そうだね、お願い。ホムラはガレオールのお店の開店準備お願いね。なんかあったら島に来て」

「かしこまりました、マスター」


 食事を終えたホムンクルスコンビはとんがり帽子を被ると、部屋から出て行った。

 僕も早く食べて島に行くか。




 ジュリウスとラオさん、ルウさんの三人を連れて島の別荘前に転移すると、すぐ目の前にしゃがんでいる女の子がいた。

 そばかすが目立つ少女の名前は……たしかヘレンだった気がする。

 そのヘレンは先程まで転移陣の板を水拭きしていたのか、雑巾を片手に僕たちを見上げて固まっていた。


「えっと……こんにちは?」

「………は、はい! こんにちは!!」


 勢いよく立ち上がった少女が思いっきり頭を下げる。焦げ茶色のポニーテールがめちゃくちゃ暴れた。

 彼女は奴隷の子たちがお揃いで着ている真っ白なワンピースを着ていて、首輪も嵌めている。


「……おい、顔を上げるように言わんとずっとそのままだぞ」

「ああ、そっか。顔を上げて楽にして」

「はい!!」


 めっちゃ肩に力が入ってませんか?

 僕が声かけると逆効果な気がするんだけど、ラオさんどう思う?

 視線を向けたラオさんは肩をすくめるだけ。


「どうしようかな。……とりあえず、皆を食堂に集めてくれる?」

「分かりました!!」


 ピューッと脱兎のごとく走り去ってしまった彼女の後を追うように建物に向かう。

 開け放たれたままの木製の扉をくぐると、明るい雰囲気の広いエントランスに出た。部屋の隅っこには目立たないように埃吸い吸い箱が置かれている。

 ピカピカに磨かれた廊下を歩き、食堂として使うように伝えている部屋に入る。

 部屋の中央には長机が置いてあり、椅子が並べられていた。


「とりあえず椅子に座って待ってる?」

「だな。とりあえずお前はここに座れ」

「いつものお誕生席っすか。別にいいけど」


 ラオさんが移動させた椅子に座ると、ルウさんは僕の左斜め前に腰かけた。頬杖をついて、ニコニコしながら僕の方を見てくる。

 ルウさんの正面にはラオさんがドカッと足を組んで座っていた。

 ジュリウスは壁際で待機するつもりのようだ。


「いつもと違ってシズトくんが近くって、お姉ちゃん嬉しいわ! ね、ラオちゃん!」

「別に。どこだろうが関係ねぇだろ」

「そうかしら? 近くに座ったらシズトくんの口の周りが汚れていたら拭けるのよ? 食べ終わったらシズトくんの様子をずっと見てられるし、お話もしやすいわ! あーあ、席もお世話係みたいに交代でシズトくんの近くに座ることができる日があったらいいのに…」


 僕の方を見ながら言われても困ります。僕が決めたわけではないので。

 視線を逸らしてラオさんの方を見ると、彼女は腕を組んで出入口に視線を向けた。


「……来たみてぇだぞ」

「そうね」


 二人がそう言った後、扉がノックされた。

 ジュリウスが僕の方に視線を向けてくる。


「入っていいよ」

「失礼します!」


 扉が開かれると入ってきたのは十人の人族の奴隷たちだった。

 奴隷たちのほとんどが女性だった。同年代くらいの女の子たちが同じ服を着て並んでいる。

 その中に二人だけ男性がいるけど、一人は腕を失っていて、もう一人は火傷痕が酷い。

 ただ、まだ二人にはエリクサーを与えてない。

 何かしらの報酬として渡すべきだ、とラオさんに釘を刺されているので、まだ渡す予定はない。いつかは渡してあげたいけど。


「わざわざ集まってくれてありがと。ちょっと聞きたい事があったから呼んだけど、協力してくれると嬉しいな」

「私たちにできる事であれば、何なりとお申し付けください」


 どうやらヘレンが代表して話すようだ。

 他の子たちは誰も口を開かず、目も合わない。下ばっか向いてるんだよね。


「昨日暮らしてみてどうだった?」

「奴隷とは思えない程厚遇していただいた分、死ぬ気で働こうと思います!」

「ああ、そういうのじゃなくて……っていうか、死ぬ気で働かずに規則正しく生活してよ?」

「はい! 規則正しく生活します!!」


 なんか規則正しく夜間まで働きます、みたいな感じで捉えてそうで心配だけど……まあいいや、そこら辺は追々で。


「聞きたいのは、何か不便だなぁ、とかこうしてほしいなぁ、っていう事がないかって事」

「特にないです」

「そっかー、ないのかー」


 ないと改良すべきところが分からないんだけど……。

 ヘレンは答えたので、その隣に立っていた赤毛のおさげの女の子のリオノーラに視線を向けるが、視線が合わない。ずっと僕の足元を見てジッとしている。っていうか、ヘレン以外も僕の足元見てるし……なんか僕に見えない物でも見えてんの?

 じっと目を凝らして床を見てみたけど、汚れ一つ見つかる事はなかった。


「他の子たちもないの?」

「……ないようです」


 ヘレンが横に並んでいる面々に視線を向けるが、誰一人何も反応しなかった。

 んー、これはたぶんあれだ。主である僕が聞くといい所しか言ってくれない奴だ。

 聞き取りはレヴィさんに任せよ。

 ただ、全部任せるのは申し訳ないし、奴隷の子たちを連れて魔道具があったら便利そうな事を探そう。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 基本、人力でやる作業の世界で、聞いてもそりゃあ、何も無いよね(笑)
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