幕間の物語117.ちびっこ神様ズは食べてみたい
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シズトに加護を与えた三柱は、最高神のお手伝いをしつつ、暇な時間は自分たちの秘密基地の周辺で雪だるまを作り続けていた。静人から装飾について教わってから、三柱に雪だるま作りブームが来ていた。
秘密基地の周りの空間は、付与の神エントが作った雪を降らせる魔道具の影響で銀世界が広がっている。
そこかしこに大小さまざまな雪だるまがあり、他の神々が暇つぶしに見に来るようになっていた。
良く入り浸っているのは、まだ信者が少なく、気軽に下界を覗けない小さな神々だ。
その小さな神々よりも、大きくなったと自負しているファマたちは、彼らが自分たちの領域に無断で侵入してこようと、こっそり雪だるまをまねて作っていようと、怒る事はなかった。
いつしか神々の暇つぶし場の一つとなりつつある場所で、今日も三柱は集まって雪を転がしていた。
三人の中で一番大きな男神のファマは、ボーッとしたような表情だが、一生懸命雪玉を転がしている。毎日暇があれば雪玉を転がしていた事もあり、何とか三角形から脱却しつつあるのだが、やはりまだ丸みを帯びた大きなおにぎりを作っているようにしか見えない。
一心不乱に作っている彼の頭には雪が積もり始めているが、気づいた様子もなく、雪玉、というよりも雪の塊の下に手を差し込むと、えいっと持ち上げ、そのままゴロンと転がす。
ノッシノッシと歩いて、もう一度、雪の塊の下に手を差し込むと、えいやっと持ち上げてひっくり返す。
「あ、あとちょっとなんだな~」
そんなファマとは対照的に、形がとても綺麗な真ん丸の雪玉を二つ作り上げたエントは、雪玉の上に雪玉を乗っけた。
少し離れたところからバランスを見ようと思ったのか、小走りで雪だるまから離れていく。
彼女の黒い髪が、走る度に元気に揺れる。
黒い瞳で遠くからじっと見る視線は真剣そのものだ。まるで、職人が自分の作品の出来を見るかのように見ていた。
前回の雪だるま作り勝負で勝った彼女は、もう一度同じような勝負がいつ行われても問題ないように、毎日鍛錬を欠かさず、一日一つ、雪だるまを作っていた。
彼女の近くにはその作られた雪だるまが整然と並んでいる。
どの雪だるまにもそこら辺の石を二つ、上の雪玉につけて、頭にはバケツを被せ、さらには二つの雪玉の接合部を隠すように細長い布をぐるぐる巻きにしてある。
同じような雪だるまが並んでいるが、目が光るように魔法が付与されていたり、足が生えてトコトコ歩き始めたり、周囲に結界を張ったりと普通じゃない。
「やっぱり、光るのがいいかな……?」
以前、装飾についてシズトから聞いた時、それとは別にシズトが頭の中でクリスマスツリーの事を思い浮かべていた事に気付いていた彼女は、雪だるまをクリスマスツリーのように飾りつけようとしていた。
それを作るためには、必要なものがある。
秘密基地の中にある小道具を取るために、小さな足を懸命に動かして、建物中に消えていく。
入れ替わるように出てきたのはプロスだ。
大きく丸い目は今日も爛々と輝き、表情はとても明るい。
彼女の周りには、彼女に操られた鉄や銅などの金属が浮いている。
「今日もいっぱい作って、シズトをギャフンって言わせるんだから!」
そう言うと、彼女は雪の上を駆けだした。
以前までは滑ったり、足を取られて転ぶ時もあったが、今は慣れた様子で素早く動けるようになっていた。
プロスは秘密基地の建物がある所からだいぶ離れたところを拠点としていた。
少し前に、秘密基地の周りの雪を一人で使おうとして他の二柱と喧嘩になった事があった。それ以来、彼女はこの場所で作るようになっていた。
彼女が作る雪だるまは、常に大きな物だった。
ただ、最近は思うように雪だるまを作る事ができていないようだ。
それもそのはず、喧嘩になった時に作った雪だるまが、過去最高に大きかった雪だるまだったからだ。
それ以来、それ以上大きな雪だるまを彼女は作る事ができていなかった。
じゃあどうすれば大きな雪だるまを作る事ができるのか。
その答えは、シズトが雪玉をお手本で作っている時に脳内で思い浮かべていた「石を入れた雪玉って痛いんだよね」という内容からヒントを得ていた。
大きな鉄球を雪で覆ってしまえば、大きな雪だるまができるのではないか、と。
「とっても大きいの作って、シズトをびっくりさせちゃうんだから!」
そんな感じで各自思い思いの雪だるまを作っていて、すっかりシズトの様子を見る事を忘れていた。
思い出した頃には、シズトはいつの間にか違う国に着いてしまっていた。
「し、しっかり布教するんだな?」
「前の国じゃサッと作ってパッてバイバイしちゃったもんねー」
「獣人さんの国だと、しょうがないんじゃないかな……?」
「そ、それもそうかもしれないんだなー。さ、最近、少しずつオイラに祈る獣人が増えてきたから、こ、この前の国についてはまあいいんだな」
「私も、ちょっと増えてるかも……?」
「プロスの出番そんなになかった……でも、ドワーフたちがたくさんお祈りしてくれてるからいいもん!」
そんな事を話しながら、秘密基地の一室に集まっていた。
ファマが水晶に力を注いでシズトたちの様子を水晶に映す。
屋台のご飯を食べ歩きしている様子を見て、ファマとプロスの口からよだれが垂れる。エントもよだれが垂れかけて、すぐに気づいて口元を拭っていた。
「海のご飯食べてみたーい!!」
「お、オイラも食べてみたいんだな!」
「ファマ君も、食べた事がないの……?」
「お、オイラとは無縁だったから食べた事ないんだなぁ」
彼が以前加護を与えていたエルフたちの一部には、海に面した国に住んでいる者たちもいたが、魚介系の物を供物として捧げられた事はなかった。
「シズトにお供えするように言わなきゃ!」
「じゃあ、また力がたまった時にシズトくん呼ぶ……?」
「そ、そうするんだなー」
そうと決まっても、彼らは水晶の前から離れる様子はない。
シズトが食べ物ではなく、アクセサリーをどれにするか悩んでいる時でさえも、ずっと彼らはシズトの様子を見続けるのだった。
あと少しで書き始めて一年。
気を抜かずに毎日更新頑張ります。




