242.事なかれ主義者は見せたがらない
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息子が鎮まるのに数分時間を要したけど、なんとか何もする事無く済んだ。
深呼吸をしてから浴室に入ると、レヴィさんとセシリアさんがこちらを見てきたのが分かる。
二人は泡風呂で遊んでいたようだ。
浴槽から溢れそうな程のもこもこが発生していた。ドーラさんが喜びそうだ。
「やっと来たのですわ!」
「私が泡の処理をしておきます。レヴィ様はシズト様のお相手を。くれぐれも走らないように……って言ってるそばから走るんじゃありません!」
セシリアさんの声が浴室に響く中、レヴィさんがこちらに駆けてくる。
大きな胸がゆっさゆっさと元気に揺れている。……走ると痛いって聞くけど、大丈夫なんだろうか。
そんな事を思いつつ、ポロリしてしまいそうで心配だからそっと視線を逸らし、洗い場の方へと向かう。
「待つのですわ~。水着の感想を聞いていないのですわー」
「…………ちょっと、目のやり場に困る」
「言うと思ったのですわ~。別に婚約者なのですし、じっくり見ても大丈夫なのですわ?」
「シズト様はムッツリスケベなのでそれは難しいかと」
遠くからセシリアさんが何か言っているけどスルーして、風呂椅子に座る。
だけど、そんな僕の気持ちを汲み取る事なく、レヴィさんはセシリアさんの発言に反応した。
「むっつりすけべ、てなんなのですわ?」
「無関心のフリをしつつも、色事の好きな殿方の事です」
「じゃあシズトは違うのですわ!」
「そーだそーだ!」
「シズトの頭の中はその事でいっぱいの時もあるから、無関心じゃないのですわ!」
「そーだそー……レヴィさん? なんか庇っているような雰囲気で、思いっきり僕を貶めてない?」
「そんな事ないのですわー。シズトは今、私の胸に関心がある事は分かっているから大丈夫なのですわ」
レヴィさんが座っている僕の後ろに立ち、両肩に手を添える。そのどの指にも僕があげた魔道具『加護無しの指輪』はなかった。
ニコニコしながら僕の後ろに立ち、僕の両肩に手を置いているため若干前屈みになっているレヴィさんを鏡越しで見ると、彼女の首元にあった。
それを見るとどうしても、巨大な二つの膨らみとその谷間が視界に入る。青い布も一緒に見えたけど、それはどうも小さく頼りない。今にもポロリをしてしまうのではないかとひやひやする。
「その時はその時なのですわ~」
「……レヴィさんて、露出癖あるの?」
「シズトだけになのですわ~」
そうですか。僕にだけあるのもどうなんですかね。
そんな事を思いつつ、視線をもう一度顔よりも下に向ける。
キュッと引き締まったくびれの下のお尻から太腿にかけて程よくお肉がついている。
腰のあたりに紐が結われていて、下腹部の大事な部分を最低限隠している布に繋がっていた。
こちらに近づいてきているセシリアさんも、先程の水着と同じように見えたけど紐ビキニだった。
紐ビキニばかりだけど、流行ってんのか?
「勇者様は布面積が少ないこのタイプか、すくーる水着っていう水着が好きだと伝わっております」
「マジで碌な事を伝承しないな!!」
「といいつつ嬉しそうですわー」
「…………そりゃ、僕も男だから嬉しいに決まってるでしょ。悪いっすか!?」
「全然悪くないのですわー。後からじっくり見てもらって構わないのですわー。まずはほら、髪を洗うのですわ~」
鼻唄を歌いながらニコニコしているレヴィさんが僕の頭を洗い始める。
シャワーのヘッドを取ろうとしたり、石鹸を取ろうとするたびに僕の体に彼女の体が近づいてやばい。
両足を閉じてジッとしていると、セシリアさんが何か言いたげにこちらを見ている。
「……やはりお手伝いした方がよろしかったでしょうか?」
「結構です!」
「何のお手伝いですわ?」
「何でもないよ!」
「元気すぎるシズト様を鎮めるお手伝いです」
レヴィさんの視線がセシリアさんに向いた後、加護で心が読めてしまったのだろう。
頬を膨らませた彼女は、鏡越しにジト目で僕を見てくる。
「………セシリアだけ見てずるいのですわ」
「レヴィさん? 手が止まってるんですけど」
「私にも見せて欲しいのですわ」
「レヴィさん? それよりも頭を早く洗ってほしいのですけど」
「洗ったら見せてくれるのですわ?」
「………」
「いま足を開いたら見えるのですわ?」
「…………そういうのは、もう少し時間を貰えたらなぁ、って……」
さっきセシリアさんに見られてとても恥ずかしい思いをしたばかりですので……。
ボソボソと答える僕の様子を見て、それから僕の心の声が聞こえたのか、レヴィさんはため息をついて「また見せてもらうのですわ」とだけ言って体を洗うのを再開した。
……いつか見せなきゃいけないのか。
いや、婚約者だからいつかそういう事になるのは分かってるんだけど……。
……いろいろ考えている間に、息子は鎮まったようだ。
体を洗った後、レヴィさんとセシリアさんとお湯に浸かった。
二人は両隣に座っていたけど、さっきのやり取りの事もあって、何かしてくる事もなく、いつものようにのんびりとしていた。
ただ僕はいつもと違って、二人の両肩がしっかり見えるので妙にドキドキするのだった。
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