240.事なかれ主義者は断り切れなかった
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ジューンさんの部屋を後にした僕は、モニカの後をついて歩き、僕の部屋を通って反対側の扉から外に出ると、レヴィさんの部屋の前に到着した。ずっと水着で悩んでいたらしく、後回しになっていたらしい。
毎回のごとくジュリウスとモニカは何も言わず、出入口の門番のように二人並んで静かに立っている。
モニカからの無言の圧力を感じつつ、レヴィさんの部屋の扉の前で深呼吸をした後、扉をノックする。
「僕だけど、準備終わってる?」
「はい。開いているのでご自分で開けて中に入ってきてください」
扉の向こう側からセシリアさんの綺麗な声が聞こえてきた。
てっきりセシリアさんが扉を開けてくれると思っていたもんだから、ちょっと戸惑ったけど、扉を開けて中に入ったら理由はすぐに分かった。
「お待ちしておりました、シズト様」
そう言ってぺこりと頭を下げたセシリアさんも、水着姿だったからだ。
髪や目の色と同じ薄い青色のビキニを着ていた。この姿のまま扉を開けたらびっくりするわ。
セシリアさんは頭をあげると、部屋の奥の方へと歩いて行く。
セシリアさんの後姿を見ながら歩いていると、いつの間にか後ろを見ていた彼女と目が合って、クスッと笑われた。
「あら、視線を逸らしてしまうんですか? もっとじっくりお尻を見ていただいても構いませんが」
セシリアさんの水着は正面から見た時はしっかりと布があるな、って思ったけどお尻を覆う布はほとんどなかった。
おそらくこれがTバックとやらなんだろうな、なんて思いつつじっと見過ぎたら揶揄われてしまった。
「ほら、私の水着姿よりもまずは先に見惚れる相手がシズト様にはいらっしゃいますよね?」
セシリアさんは壁際の方へと移動した。いつものようにそこで待機するようだった。
僕は視線をセシリアさんから、先程から静かに大きなベッドに腰かけているレヴィさんに移す。
レヴィさんは黒いワンピースの様な物を着ていた。
ただ、透ける素材なのか、下に着ている黒の水着と共にとても大きな二つのふくらみが目に入ってくる。
サッと視線を逸らしたところで、レヴィさんが口を開いた。
「やっぱり、シズトには前だけじゃなくて背中も見せたいのですわ。セシリアだけずるいのですわ」
「私に言われても困ります」
唇を尖らして、足をプラプラさせているレヴィさんに、呆れた声音でセシリアさんが返答した。セシリアさんに視線を向けると、彼女は肩をすくめた。
「私の口から申し上げても良いのですが、自分でお願いした方がよろしいと思いますよ」
「分かってるのですわ! それは水着を決めた後に話すのですわ!
別に今でもいいんだけど、なんだろう。
こっちから聞いちゃダメなんかな。
そんな事を考えていたら、レヴィさんが立ち上がってこちらを真っすぐ見てきた。
「シズト!」
「はい!」
「この水着、どうですわ?」
「えっと……似合ってるよ?」
「ドキドキするですわ? あ、言わなくていいのですわ。加護を使わなくとも、セシリアを見る目と今私を見る目が違う事から分かるのですわ……」
唇をちょっと尖らせて指に嵌められた指輪を弄るレヴィさん。
「レヴィさんも、えっと……十分魅力的だよ? 皆、ほとんどビキニで目のやり場に困ったから、正直レヴィさんとジューンさんが服を上から着てくれてるのは助かる」
「ジューンの物とこれは少し違うと思うのですわ! この上に着てる物も含めて水着なのですわ。これで水に入っても多少遊べるのですわー」
「そうなんだ?」
改めて彼女の服……じゃなくて水着を見る。
僕の意図を察した様子のレヴィさんはゆっくりとその場で回り始めた。
一見ワンピースの様なその服は、生地がとても薄そうだ。部分的にだけど、うっすらと透けている。
前はV字にとても大きく開いており、レヴィさんの大きな胸が零れ落ちるんじゃないか心配になる。
腰回りは体のラインに合わせてキュッと引き締まっていて、腰に同じ素材の布が巻かれている。
背中部分は腕やお尻の近くは透けているけど、以前見せてもらった文様の部分は透けておらず見えない。
「もっと近くで見るのですわ?」
一回転したレヴィさんがそう尋ねながら近づいて来る。
腰に巻かれた布の間から真っ白な足がチラッと見える。
「もう十分見たよ」
「そうですわ? 背中、しっかり見えないようになっているですわ?」
「うん、見えなかったよ? ……肌が透けているように幻を見せる魔法とか……ありそうかも?」
んー、だけど水着に付与ってなるとどこかに魔法陣を描かなきゃいけない関係で難しいかな?
結界内の物を見えないようにする物とかは作れるからそれで充分かも?
「そこまでしてもらう必要はないのですわ~。それに、シズトが作った物を信じていないわけじゃないですけれど、万が一魔道具の効果が何らかの理由で発動しなかった時の事を考えると、これでいいのですわ」
「……そっか」
「ただ、やっぱり皆みたいな水着を着てシズトとお話をしたり遊んだりしたい気持ちもあるのですわ」
「じゃあ――」
「魔道具は要らないのですわ」
「そう……」
僕に対する皆の気持ちは少なからず知ってるし、出来ればみんな平等に接したいけど、魔道具だと不安と言われたら解決案は思いつかない。
しばらく考え込んでいると、目の前に立っていたレヴィさんがそっと僕の頬を両手で包む。
「それで、お願いがあるのですわ」
「セシリアさんがさっき代わりに言おうとしてたやつ?」
「そうですわ。今度から湯浴みじゃなくて、水着でお世話をさせて欲しいのですわ!」
「ちょっとそれは……我慢できるか自信ないし……」
「我慢できなくても問題ないのでは?」
なんかボソッと壁の方から聞こえたけどスルー! スルースキル大事!
ただ、結局レヴィさんのお願いに押し切られて、水着を承諾してしまった……。
「レヴィさんの当番の日までには何とか心の準備をしておかないと……」
「お忘れの様なのでお伝えしておきますと、今日がレヴィア様の当番の日です。私も水着で入りますので、よろしくお願いしますね」
最後までお読みいただきありがとうございます。




