237.事なかれ主義者はなかなか入れなかった
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ノエルといろいろな魔道具の実験をした翌朝。
今日のお世話係はレヴィさんだった。
目を覚ますと同時に、ベッドに腰かけて僕の寝顔をじっと見ていたレヴィさんと視線が合う。
彼女の金色の髪が窓から差し込む光に照らされてキラキラ輝いているように見え、綺麗な青い目はまっすぐに僕を見ていた。
僕が起きた事に気付いた彼女は、ふっと目元を和らげる。
「おはようなのですわー」
「おはよう、レヴィさん。セシリアさんも」
壁際に控えていたセシリアさんがぺこりと頭を下げる。
僕はとりあえず下半身に問題が起きていないかだけ確認してから起き上がった。
レヴィさんたちが廊下に待っている間に着替えを済ませて、食堂に行くと既に朝ご飯の準備は終わっていた。
ただ、いつもは皆揃っているのに、今日はノエルがいなかった。
「ノエルを連れてきましょうか、マスター?」
「いや、いいよ。今日一日は自由に過ごさせてあげてよ」
「かしこまりました、マスター」
止めないとノエルの足首掴んで引っ張ってきそうだから止めたけど、明日は流石にご飯食べるよね? 明日もノエルが部屋から出て来なかったらちょっと考えないといけないかも。
席に着いて、いつもの食事前の挨拶を済ませると各々食事を進める。
ラオさんとルウさんの前にあった料理は見る見るうちになくなってしまった。
二人は食後に魔力マシマシ飴を舐めている。今日は外にお出かけする予定はないんだろうか。
僕が屋敷で過ごしていると修行に出掛ける事が多いから珍しい。
「ラオさんたち、今日は家でのんびりするの?」
「あ? まあ、のんびりするって言えばするな」
「そうね~」
「シズトこそ、今日はどうするのですわ?」
「今日は依頼された魔道具作りでもしようかなって思ってるけど?」
「じゃあその合間に協力してほしい事があるのですわ!」
「別にいいけど、何をすればいいの?」
「その時になってからのお楽しみなのですわ! シズトは屋敷にいて欲しいのですわー」
「ユグドラシルのお世話をした後でも大丈夫?」
「問題ないのですわ! 私たちも選ぶのに時間がかかると思うのですわ。だから問題ないのですわー」
「そう? じゃあユグドラシルのお世話が終わったら部屋にいるね」
魔道具作りだったらノエルの部屋の方が良いと思うけど、今日はノエルの邪魔しちゃ申し訳ないし。
その後は他愛もない話をしながら食事を進めた。
食事中、ごはんのおかわりをした際に、狐人族のメイドのエミリーの尻尾が何度か当たった。
今日もしっかりモッフモフだった。
ユグドラシルのお世話をサクッと終わらせて、自室に戻って魔道具作りをする。
壁際に控えたジュリウスに見守られながら貴族とかから依頼されていた品物をせっせと作っていると、部屋がノックされた。
「開いてるよー」
「失礼します」
入ってきたのは先祖に日本人がいるメイドのモニカだった。
僕の近くまで来たモニカに視線を向けると、彼女はぺこりと頭を下げた。
「ラオ様の準備ができたようです。お部屋に移動しましょう」
「ラオさんの準備?」
「レヴィア様が仰っていたじゃないですか。私たちの準備が整ったら手伝ってほしい、と。その私たちにラオ様はもちろん、ルウ様もジューン様もドーラ様も含まれています。ホムラ様とユキ様はシズト様のお手を煩わせずとも決められる、という事でしたので」
「決めるって何を?」
「……それは私の口からは述べる事を許されておりませんので」
え、なんか怖いんだけど。
まあ、ラオさんだったら酷い事はしないだろうし大丈夫だろうけど……。
とりあえず、あんまり待たせるといけないと思ってモニカの案内の後をついて歩く。
皆は同じ階で生活をしていて、ラオさんの部屋は割と近い。女性陣で話し合って決めた部屋割りらしいので特に言う事はない。
ラオさんの部屋の扉の前に着くと、モニカがスッと扉の側に控えた。
「それでは、私たちはここでお待ちしておりますので」
「……え、私たちって、ジュリウスもいかないの?」
驚いていると、後ろにいたはずのジュリウスが門番のように扉の側に立つ。
ジュリウスとモニカの間に扉がある形だからか、二人が扉を守っている印象がより強くなった。
「室内に別の者の気配がしない限りは入りませんので、安心してお楽しみください」
「………?」
「ほら、シズト様。ラオ様が中でお待ちですよ」
「んー、なんか言い方が気になる……」
「入れば分かりますよ」
なんかモニカとジュリウスの笑顔が胡散臭い感じがする。
何か悪だくみでもしてるんじゃ、とは思うけど、確かに二人の言う通り入れば分かる事だ。
扉をノックすると、中から「開いてるからさっさと入って来い」と返事がした。
……やばい! 何気に、ラオさんの部屋に入るの初めてだからそういう意味でも緊張してきた!!
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