227.事なかれ主義者は色々任せた
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オリーヴさんと会談した翌日。
アクスファースの首都の観光をする予定はないけど、馬車はまだ出発していない。
朝ご飯を一通り食べ終えて、畑で取れた果物をのんびりと味わって食べていると、ジュリウスがいつものように今日の予定の確認をしてきた。
「今日はやはりアクスファースの首都スプリングフィルドに向かわれるのですか?」
「そうだねー。教会を建てる場所は用意して貰えたし、布教のためにも建設してもらわないとだし」
教会の話をすると、レヴィさんの表情が曇った。
さっきまでニコニコしながら今朝採れた野菜で作ったサラダを食べていたのにどうしたんだろう?
「中心街からだいぶ外れた使い道もない場所を押し付けられたのですわ!」
「そうなの?」
「前の建物が取り壊される事なくあるから、まずは壊すところからしなくちゃいけないのですわ! それに、ウェルズブラの時と違って建物を用意してくれる事もないのですわ」
「自由にできていいじゃん」
「だけど職人を選定するのにも一苦労するのですわ!」
そっか。建物を建てるためにはある程度街を歩いて依頼する相手を探さなきゃいけないのか。
街中はそれこそ認識阻害とかそんな感じの魔道具を作れば余計なトラブルに巻き込まれる事は減るかもしれないけど、お店に入って交渉とかもしなくちゃいけないしなぁ。
「そこら辺はいつも通りホムラに任せようかな。できそう?」
「問題ありません、マスター。店も物件を探しますか?」
「そうだね。街の中で比較的治安のいい場所だといいかな」
「かしこまりました、マスター」
「……ホムラだけだと心配だからアタシもいくわ」
「ラオさん、ホムラの護衛してくれるの? ありがと! 獣人って強そうだもんねー」
「いや、そうじゃなくて止める側だけど……まあいいや。ホムラに任せるんだったらお前が行く必要ねぇんじゃねぇか?」
「……そうだね。そうなると何して過ごそうかなぁ」
「そう言えば、お兄様からお手紙が来たのですわ。お父様だけ息抜きしてずるいから、お兄様も遊びに来たいそうですわ」
「リヴァイさんの息抜きって何?」
「分からないのですわー」
レヴィさんは首を傾げてそう答えると、シャクシャクと梨を食べる。
まあ、分からないものは仕方ないか。
のんびりと梨を食べながら何となく視線を彷徨わせていると、ノエルと視線が合った。
「………」
「………」
なんか目が合ったけど、ノエルから何も言ってこないから黙って見つめ合うみたいな感じになっている。
何だろう、特に何も用件はないのかな。
そう思って口を開けようとしたらノエルはいきなり立ち上がって「ごちそうさまでしたっすー」というと、デザートの皿ごと持って食堂から出て行った。
この前実験に付き合ってもらったのが良くなかったのだろうか。
「これ以上仕事を増やされたくなかったんじゃないかしら?」
「ノエルちゃん、ず~っとお部屋でぇ、お仕事してますからぁ。私がぁ、お手伝いできる事だったらぁ、お手伝いしてあげたいくらいですぅ」
不思議に思って首を傾げていたら、ルウさんが苦笑交じりに理由を教えてくれた。
ジューンさんは、ノエルが出て行ってしまった扉を心配そうに見て片頬に手を当てて悩まし気にため息をついた。
でも、ノエルの負担がどんどん増えているのは確かな事だし、これからもお店をどんどん作っていくと結果的にそうなってしまうのは目に見えていた。その応急処置的な対応方法も一応考えてはいる。
「やっぱり支店が増えていくと、どんどん仕事量増えちゃうもんね。ユキ、ブライアンさんの所に行ってきて、魔道具の知識がなくてもいいから、手先が器用で頭がいい人がいないか聞いてきてくれる?」
「値段が桁違いに上がってしまうけど、それでもいいのかしら、ご主人様?」
「お金に余裕があるなら何人でも買ってもいいよ。モニカ、まだ別館の部屋数に空きはある?」
壁際に控えていた黒髪の少女モニカに尋ねると、モニカはその場ですぐに答えてくれた。
何も見ていないけどしっかり暗記しているようだ。
「最近、ドロミーさんからお母様とご家族が越してくるから部屋が欲しいと言われていますが、数人ですのでまだまだ問題はないかと」
「そっか。まあ、空きがなくなったらもう一つ別館建ててもらうのもありだもんね。そういうわけだから、どんどん買っていいよ」
「分かったわ、ご主人様」
とりあえず、新しく雇った奴隷に少しずつ魔法陣について教えていくしかない。
その役目が誰になるかと考えると……結局ノエルが苦労する事になるんだろうけど、そこはまあ……将来楽になるかもしれないから頑張って欲しい。
他の人に色々お願いして、今日やる事がなくなってしまったし、どうしようかなぁ。
とりあえず、いつもしているファマリーのお世話とかしてから考えるか。
最後までお読みいただきありがとうございます。




