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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう

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幕間の物語109.青バラちゃんのアルバイト

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 世界樹ファマリーの根元に広がる畑の所々に、いろいろな花が咲いている。

 気ままに咲いているその花々は、一瞥しただけでは普通の花と変わらない。だが、それらはドライアドという精霊に近い存在だ。

 朝日が昇る少し前の時間帯に、ファマリーの根元付近に咲いていた青いバラの根元が盛り上がり、ボコッと顔を出したのは、シズトに『青バラちゃん』と呼ばれているドライアドだ。

 彼女はドライアドたちの中で最年長で古株だった。一回りほど大きく成長しているドライアドの一人で、現在ではファマリー周辺で生活している。


「んっしょっと……ファマちゃん、おはよ~」


 青バラちゃんは地面から這い出すと、頭上を見上げて世界樹ファマリーに声をかける。

 それから自分が埋まっていた穴を元通りに戻すと、トテトテと歩き出した。歩く度に頭の上に一凛だけ咲いている青いバラが揺れる。

 ドライアドたちの中でも一番早起きの彼女は、ファマリーを囲う聖域の結界の中の畑を見て回った。

 以前までは全く問題はなかったため時々しかしていなかったが、先日、畑荒らしが突如飛んできてからは毎日のように巡回している。

 ぐるりと見て回る頃には、長袖長ズボン姿の女性が屋敷から出てくる。

 今日も金色のツインドリルを弾ませて、鼻歌でも歌いだしそうな程機嫌がよさそうなその女性の名はレヴィア・フォン・ドラゴニア。一応ドラゴニア王国の第一王女である。

 その後ろを汚れ一つないメイド服を着こなしたセシリアが静かについて歩く。髪と同じ薄い青色の目が、青バラちゃんを捉えた。


「おはようございます。青バラさん」

「おはよーですわ~。今日もいい天気で農業日和なのですわ~」

「おはよー、人間さん。今日も何も問題なかったよ! 『あるばいと』があるから後はお願いね! 皆も人間さんの言う事聞いてねー」


 青バラちゃんは畑の方を見ると、他のドライアドたちが目を覚まして地面に空いた穴を埋めている所だった。

 元気よく皆で「はーい」と返事をしたのを確認すると、青バラちゃんはその場から姿を消した。

 残されたドライアドたちは驚いた様子もなく、二人の人間も見慣れた事だったので特に気にせず仕事を始めるのだった。




 ファマリーの根元から姿を消した青バラちゃんは、遠く離れたドワーフの国ウェルズブラの首都ウェルランドにいた。

 山の頂上に建てられた王城のすぐ近くにある三階建ての建物の一室で、彼女は窓際に置かれた鉢植えに水を上げていた。

 その鉢植えには一本のバラが生えていて、青い花を咲かせていて、開けられた窓から入ってくる風に揺られている。


「これでよし、っと。人間さんに頼まれたあるばいとしなきゃ!」


 普通のじょうろを床に置き、代わりに鉢植えを両手で持つと、彼女の髪の毛が伸びてドアノブを回した。

 廊下の一番奥の部屋にいた彼女は、部屋の扉をあけ放ったままにして、ペタペタと足音を立てながら廊下を歩き、髪の毛を使って窓を開けていく。

 廊下に置かれた埃吸い吸い箱のおかげで埃一つ落ちていないが、新鮮な空気が外から廊下に流れ込んでくる。

 青バラちゃんは深呼吸を一回すると満足そうに頷き、ペタンペタンと足音を立てながら階段を下りていく。

 二階の廊下の窓も全部開けて一階に降りると、道路に面している大きなガラスが目立つ広い部屋へと出た。

 ガラスの向こうにはずんぐりむっくりした男たちがたくさんいて、室内を覗き込んでいる。

 青バラちゃんに気が付くと、ニィッと笑ってブンブンと手を振っている。


「ドワーフさん、おはよー」


 鉢植えをカウンターの上に乗せた青バラちゃんは、にっこりと笑って彼らに向かって手を振ると、ドワーフたちはデレッとした後、何か言い合いを始めて殴り合いの喧嘩へと発展した。

 残念ながら青バラちゃんは、すぐに視線を別の所に向けていたので何も気づいていない。外の音はシズトが作った遮音結界の効果で聞こえてこない。


「ニョキニョキニョキニョキニョッキ~ニョキ~」


 青バラちゃんはカウンターの内側に置かれていた大きな金庫を開けた。

 それはシズトたちが共用で使っているアイテムバッグと同期された魔道具で、手を突っ込むと望んだ物を取り出す事ができる。

 そこから数々の廉価版の品々を取り出してはカウンターの上に置いていく。

 一通り出し終えると、彼女はエイッと魔法を使って品々を浮かせて、室内の机の上に並べていく。

 それが終わると、チラッと壁にかけられた時計を見る。開店の時間までもう少しありそうだ。


「んー、ドワーフさんたちがいるけど、どうしようかな~。……あれ、みんな帰っちゃったのかな?」


 青バラちゃんが窓の外を見る頃には両手で数えきれないほどたくさんいたドワーフたちは一人だけになっていて、そのドワーフも肩で息をしていた。外は寒いのか、白い息を吐いている。


「ドワーフさん、もうちょっと待っててねー。時間まで開けちゃだめだよ、って人間さんに言われてるからー」


 そう言っても聞こえていないだろう。だが、ドワーフは内容は分からないが、青バラちゃんが話しかけている事は分かったのだろう。だらしない笑みを浮かべて手を振っている。

 青バラちゃんは時間になるまで、魔道具の明かりをつけたり、商品のリストを見て代金を確認したりして過ごすのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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