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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第13章 獣人の国を観光しながら生きていこう

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222.事なかれ主義者は味噌をつけたい

いいねありがとうございます。

 アダマンタイトで三人の神様たちの像を作って宿屋兼村長の近くに置いておいた。

 子どもたちが興味深そうにペチペチ叩いているけど……まあ、神様たちは許してくれるでしょ、きっと。

 そんな事よりも、ちょっと先程から気になる光景が視界に入っているのが気になる。


「ねえ、ジュリウス」

「なんでしょうか、シズト様」

「じょうろってああいう風に使うものだっけ?」

「少なくとも私はあのように使った事はないですね」


 ジュリウスに念のために確認してみたけど、じょうろは普通に植物に水をあげるための物らしい。

 ただ、今は兎人族の大人の女性が、魔法のじょうろを使って子どもの髪の毛を洗っていた。

 その近くでは、もう一つの魔法のじょうろを使って、子どもたちが代わる代わる喉の渇きを潤している。……飲み辛かったのか、子どもたちが協力して、子ども一人くらい入りそうな鍋を宿屋から持ってきて、その中に魔法のじょうろを使って水を溜め始めた。

 ピョンピョンピョンピョンと鍋の周囲で飛び跳ねる小さなウサミミの子たち可愛いわぁ。

 だが静まれ僕の左腕。ぴょこぴょこしている尻尾を触るのは一発アウトだ。

 グッと左腕を右手で押さえながら耐えていると、今日のお世話係であるホムラが僕の左腕にそっと触れて何かを確認するように触ってくる。


「どうしたの、ホムラ」

「苦しそうでしたので、どこか具合が悪いのかと思いました、マスター」


 うん、頭の具合が悪いだけだから気にしないでいいよ。

 獣人の国二日目はお世話係であるホムラもついてきた。

 ホムラはいつもの魔女っぽい見た目のまま、メイスを背負っている。

 とんがり帽子にローブだけを見れば魔法使いっぽいんだけど、魔法を使ったところを見た事がない。


「問題ありませんでした、マスター」

「うん、知ってる」


 ホムラは満足したのか、盾を身に着けた状態の僕の左腕を解放した。

 クーとジュリウスに加えてホムラもいるから不要かもとは思ったけど、この国では襲われないためには見た目も重要だという事らしいので、しっかり完全装備だ。


「それで、本日はいかがいたしましょうか」

「んー……ファマ様の力を見てもらうついでに餌付けをしようかな、と」

「胃袋を掴むという事ですね、マスター」

「そういう事。ホムラ、アイテムバッグから植木鉢取り出してくれない?」

「かしこまりました、マスター」


 畑ではなくても、勝手に土に何かするのは極力避けるべきタブーらしいので、今回は持参した植木鉢と屋敷にたくさんあった雑草堆肥を混ぜ込んだ土を活用する事にした。

 底が深く、土を入れたら両手で持ち上げる必要があるくらいの大きさの植木鉢を出してもらって、その中に土を突っ込む。

 ……そう言えば種ってアイテムバッグの中に入ってたっけ?

 最近はドライアドが種を植えるからあんまり意識した事なかったけど。


「問題ありません、マスター。どれになさいますか?」

「んー、夏って言ったらやっぱキュウリ? ああ、でもここの人たちならニンジンの方が良いのかな。……植木鉢でニンジン育てるイメージがないからやっぱキュウリで」


 種を植えてもらっていると、ウサミミの子どもたちが興味深げに遠くからこっちを見ている。

 全員耳がこっちに向いてピーンと立っていて、控えめに言って可愛い。

 ただ、不作続きで満足にご飯も食べる事ができていないようで、みんな病的に痩せているように見える。

 今すぐ美味しいキュウリを食べさせてあげよう。

 アイテムバッグから出してもらった鉄のインゴットを【加工】して支柱を作り、植木鉢にセットする。

 支柱がぐらぐらしない事を確認してから、魔法のじょうろを使って水をたっぷり上げて準備完了だ。


「実るまで育て! 【生育】!」


 何も生えていない植木鉢に向けて右の手のひらを翳し、加護を使い神に祈る。

 しばらくすると、ニョキッと芽が出て、それがワサワサワサッと急成長した。黄色い花が咲いたかと思えば、その花が枯れて実がどんどん大きくなっていく。


「……こんなものかな。いい感じに実ってるし、今すぐにでも食べる事できそうだね」

「そうですね、マスター」

「とりあえず、誰が食べるかが問題ですが……」

「……そうだね」


 目をまん丸にして見ていた子どもたちの目が、いつの間にか狩人の目になっているような気がするのは気のせいだろうか。

 皆で仲良く分けて食べようよ~。美味しいぞ~?




 結局、植木鉢の数を増やして大量にキュウリを量産する羽目になった。

 子どもたちだけ、と思っていたけど大人の女性の視線にも勝てなかったよ。

 獲物を狩るような目はしていなかったし、子どもたちを押しとどめて順番を守らせようとしていたのはとても助かったんだけどね。

 同世代くらいのウサミミの女の子が目をウルウルさせながら上目遣いでお願いしてきたら断れないよね。耳が垂れていて可愛かったし。


「キュウリを食べた人はしっかりファマ様にお祈りしていってくださーい」

「シズト~~。おにいちゃんがキュウリとったーーー!!!」

「仲良く分け合って食べてくださーい」


 足元でしがみ付いて来るウサミミの幼女の頭をポンポンと叩きながら自分の分のキュウリを齧る。撫でられるためにウサミミがペタッとして可愛いなぁ、もう。

 キュウリは生でも美味しいんだけど、やっぱり味噌が欲しい。

 屋敷からくすねてくれば良かった。


「いやー、アンタには水だけじゃなくて食料まで貰っちまって申し訳ないね」

「いえいえ。その代わりに……分かってますよね?」

「ああ。しっかりファマ様にお祈りさせてもらうさ。あと、この先の村に向けて紹介状も書いてやるよ。中央に近い村で、土地に余裕があるところだったら小さな祠くらい建てさせてくれるかもしれないよ」

「ありがとうございます」


 キュウリをあげただけでは焼け石に水だった。

 だから、ドライアドたちが作り大量に余っていた野菜を与える事にした。

 何を対価に貰うのかはホムラに一任したから知らないけど、これでしばらくは大丈夫でしょ、きっと。

最後までお読みいただきありがとうございます。

味噌って何につけても美味しい気がします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ジョウロは水をあげるもの、という認識ではなく、水が出るもの、と認識したからで、村人たちの行動は、正直なだけなだね。水は貴重なのよね。 [気になる点] 半端な施しはその自治体や民をダメにす…
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