212.事なかれ主義者は男の奴隷について考える
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神様たちにお呼ばれされたんだけど、ウェルズブラに建てられた教会の事じゃなかった。
建物の形がヘンテコでも「無いよりはマシ」という感じらしい。
また、複数の事を司る事はよくある事らしい。
まあ、前世の神様も何とかと何とかの神様、的な感じだったしそういうものなのかも。
一つの事を複数人で分担する事もあるらしいけど、詳しくは聞けなかった。
プロス様が「そんな事よりも審査して!」と両手で僕の右手を掴むと、体全体を使って引っ張ったから。
引っ張られて連れて行かれた先にあったのは雪だるまだった。どうやらこれを審査しろという事らしい。
除雪雪だるまよりも巨大な物もあるけど、残りの二つは普通くらいの大きさだ。
フワッと浮いて大きな雪だるまの上に行ってしまったプロス様の声が頭上からする。
「エイッて入れてギューッてしながら作ったんだよ! おっきいでしょー! シズトの雪だるまよりも大きいよ!」
プロス様が自作の雪だるまの上で誇らしげに胸を張っている……気がする。
ぶっちゃけ見えない。
首を上に向けるのもしんどいわこれ。
「お、オイラは頑張って転がしたんだなー。の、乗せるのが大変だったんだなー」
ファマ様は、雪だるまを作るのにどれだけ苦労をしたのか説明してくる。
雪だるま……雪だるまかこれ?
何というか、おにぎりみたいな形の雪の塊が積まれている。
そりゃこれに乗っけるの大変でしょ。奇跡的なバランス感覚で三角形の雪の塊が上に乗っている。
転がすのも大変だったんじゃないだろうか。
「えっとね、真ん丸に頑張ってしたんだよ……? ちょっとずつ、ちょっとずつ頑張ったんだよ……?」
エント様は、エヘヘと可愛らしく笑いながら、彼女と同じくらいの大きさの雪だるまを見せてくれた。
指を差しながらここら辺を「ごしごし擦ったんだよ……?」と説明してくれる。
「エント様の勝ち」
「えーーー、なんでなんでなんで!! プロスの大きいでしょー!!!」
「ちょ、プロス様上から雪落とさないで!」
「な、納得できないんだなー!」
「いや、ファマ様の普通に見た目で違う感じがするから……」
「プロスのはちゃんと丸いよ! それに大きい!!」
「大きければいいという訳ではなくてですね。プロス様転がして作らなかったんですよね? だったらちゃんと転がして作ったエント様の勝ちです。後、形が綺麗」
ほんとに真ん丸だもん。
これは文句のつけようもなく一位ですわ。
「でもまあ、装飾がされてないのが残念なポイントですけど」
「装飾……?」
「そ、それをしたらオイラの勝ちなんだな!? お、教えるんだなー」
「抜け駆けずるーい! プロスにも教えてー!」
「ぐえっ!!!」
プロス様……流石に上から降ってきたら、下敷きになった僕死ぬっすよ?
あ、でも肉体は別の所にあるから死ぬ事はないのか……?
分からん。
僕に加護をくれた三柱に雪だるまの装飾について軽く話をしたら、彼女たちは満足したのか現実世界に戻してくれた。
パチッと目を覚めると、ジューンさんが僕の頬に手を当てて顔を見つめていた。
腰まで伸びたゆるく波打っている金色の髪に、優しい眼差しのエルフの女性で、僕の婚約者だ。
ユグドラシルの代理人として箔を付けるために婚約をしたんだけど、エルフらしくない体型の彼女は、今日は黒っぽい長いズボンに白色のセーターを着ていた。とても大きな胸が強調されているからついそちらに視線が言っちゃうのは仕方ない事だと思うのです。
帰還の指輪を左手の薬指につけたジューンさんは、その左手で僕の顔をぺたぺたと触り始める。
「あらぁ、起きましたぁ」
「だから大丈夫だって言っただろ」
「でもぉ、反応が全くなかったですよぉ」
「シズトくん、時々そうなるの。神様とお話をしてるって言ってたわ。今回もそうだったの?」
ラオさんとルウさんは慣れた様子で特に気にしてないけど、いきなり全く動かなくなったらビックリするよね。
……傍目から見て魂? 精神? がない時ってどう見られてるんだろう?
神様と話をしている時は、代わりに体を動かす魔道具を作った方が良いのかな。
「……またなんか考え始めてんぞコイツ」
「んー……視線が上に向いたらそうなのかしら? 魔力の流れはよく分からないわ」
「私たちエルフはぁそういうの長けているのでぇ、魔力の流れでぇ感情を読み取られないように躾けられますねぇ」
……僕も覚えた方が良いのかも。
ジュリウスさんにお願いしたら教えてくれるかなぁなんて考えながら立ち上がる。
祠へのお祈りを済ませたので、ファマリアへと向かう。
今日は町の様子を確認しながらお昼ご飯は食べ歩きをしよう。
世界樹の素材がユグドラシルの方で流通し始めたから、人通りは少し前ほどじゃないけど、奴隷がどんどん増えているから賑やからしい。
奴隷たちにお小遣いを上げているので、その奴隷に向けた商売をしている人たちもいるんだとか。
ファマリーの根元にあった祠から、綺麗に耕されて植物が無作為に育っている中を歩きながらファマリアへと向かう。
町には数分で着いたけど、今日も奴隷の少女たちが道を闊歩している。
奴隷仲間以外が珍しいのか、それとも男だからか、すごい見てくる。やっぱり男が少なすぎて目立ってるのかな。
「男の奴隷も増やしたら目立たなくなるかなぁ」
「お姉ちゃん、そういう問題じゃないと思うわー」
「そうですねぇ」
「だな」
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