幕間の物語101.ちびっこ神様ズは元気に外で遊ぶ
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神々の住まう世界の片隅に、シズトに加護を与えた三柱の秘密基地がある。
そのすぐ近くの空き地が真っ白に染まっていた。
普段は雑草が生い茂っている場所だったが、樹上に設置された魔道具から生み出された雲から雪が降り、銀世界へと変えていた。
その雪原の真ん中には不揃いの雪の塊が転がっていた。
真ん丸というよりもおにぎりのような形の白い塊をみて、首を傾げているのは生育の神ファマ。
少しの間、その場で考え事をしていたのか、坊主頭に雪が積もりつつある。
「う、上手くできないんだなぁ」
シズトの様子を覗いていた時に知った作り方を真似たのだが、思い通りにならない。
だが、ファマは諦める事もなく、再度雪を集めて手の平で小さなおにぎりのような形の雪の塊を作ると、コロコロと転がし始めた。
そこから少し離れたところでは、適温コートを羽織り、手編みの手袋を身に着けた付与の神エントがゆっくりと雪の塊を転がしては形を整え、また転がしては見栄えが良くなるように余分な所を削っていた。
ファマとは異なり、数よりも質を重視しているのか彼女の周りには雪玉はほとんどなかった。
「このくらいかな……?」
二個目の雪玉を作り終えると、先に作っておいた雪玉の近くに並べてみる。
全く同じ寸法の雪玉が二つ並んでいた。
「あ、ちょっと大きくするんだったかな……?」
確かそうだったはずだと、彼女は腰くらいの高さがある雪玉をまた転がし始める。
まだまだ雪だるまを作るには時間がかかりそうだった。
そこからさらに離れたところでは、手編みの耳付き帽子を被り、もこもこのコートを着て着膨れをしている加工の神プロスがムムムッと口を尖らせて集中していた。
彼女は自身の権能を使って金色に輝くアダマンタイトを操作して、雪だるまの型を作っていた。
型が出来上がると、雪だるまの頭頂部に穴をあけて、その中に雪を詰め込んでいく。
時々、金属を操って圧縮をしつつ雪を詰め込んでいると、一杯になった。
「できたー!」
型となっていたアダマンタイトを取ると、無事に雪だるまが出来上がっていた。
満足気な彼女の声が気になったのか二柱がプロスの方を一瞬だけ見たが、自分の作業に戻っていく。
小さな神々は今、だれが一番上手な雪だるまを作る事ができるのか、勝負をしていた。
審査員はその内、また彼女たちの様子を見に来る黒髪の少年だ。
顔出さなければ呼び出せばいいやとも考えている神様たちだった。
一通り雪だるまを作って遊んだ後は、今度は背丈くらいの雪玉を量産した。
雪原に突如として遮蔽物が出来上がると、三人はそれぞれ陣地を張って、余分に作った雪だるまを守るように前に立つ。
「準備いーよー!」
「お、オイラもいいんだなー!」
「じゃあ、光ったら始まりだよ……?」
エントがアイテムバッグから取り出した大きな球状の魔道具を三人の中間地点に向けて投げ込む。
それが一回、二回と弾んだ後、三回目のバウンドの際に頭上高く跳ね上がった。
それが激しく光った瞬間、三人共近くの雪をかき集めて手のひらサイズの雪玉を作る。
最初に動いたのはプロスだった。
茶色の髪をたなびかせ、自分の力を使って雪の上に鉄の床を作り上げた彼女は、その上を疾走する。
向かう先はボーっとした表情でせっせと作るファマのところだ。
「ち、力を使うのはずるなんだなー!」
「勝てばいいんだもーん! 今日のおやつはプロスが貰うんだから!」
ファマの足元まで液体化した金属が迫るが、突如としてファマの足元から木が伸びる。
ファマを乗せてぐんぐんと伸びていく木は、周囲の木と同じくらいの高さまで成長すると、そこで成長が止まった。
頭上からプロスに向かって両手いっぱいに抱えた雪玉を落とす。
だが、自然落下する雪玉に当たるプロスではない。
彼女が手を掲げると、足元にあった鉄が彼女を守るように傘の形になった。
「ず、ずるなんだなー!」
「ずるじゃないもーん!」
「え、エント、協力して倒すんだな!」
「え? あ、うん。いいよ……?」
蚊帳の外状態だったエントは、せっせと雪玉を作ったり、雪兎を作ったりしていて雪合戦をしていた事を失念している様だったが、ファマの声で思い出したようだ。
エントは雪兎に魔法陣を刻み、魔力を流し込む。
すると十匹ほどの雪兎が動き始めた。
エントはアイテムバッグから魔石を取り出してそれぞれに付与を行うと、エントを見上げて待っている雪兎の上に魔石を乗せた。
「あの雪だるまさん、倒してきて……?」
彼女の号令と共に、体の上に怪しく点滅し始めている魔石を乗せた雪兎の群れが雪原を這うようにしてプロスの陣地の真ん中にある雪玉に向かって突き進んでいく。
「ムムムッ! させないよー!」
雪兎に向けて指を差したかと思えば、プロスはそのまま人差し指を上に向けた。
その瞬間、雪の下から先端の尖った鉄の柱が数匹の雪兎を貫く。
雪兎は粉々になり、点滅していた魔石が宙に放り出され、爆発した。
「まだまだ!」
自陣にある雪だるまの方に掌を向けたエントはそのまま雪だるまを握るかのように、握りこぶしを作った。
すると、雪だるまの周囲をアダマンタイトが覆う。
「これなら負けはないもん!」
「それは流石に卑怯なんだなー!」
「確かにそうかも……?」
「私も亜空間にしまっちゃうよ……?」
「お、オイラは……オイラだけ完全防御出来ないんだな!!」
頭上の上でアタフタとし始めるファマ。
それを見上げたあと、エントとプロスはお互いの顔を見合わせた。
結局、三柱は話し合って雪合戦の時、雪だるまを守るために神の力を使わない事になるのだった。
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