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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第12章 ドワーフの国を観光しながら生きていこう

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209.事なかれ主義者と露天風呂

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 黄金の巨大なだるまを作ってから数日が過ぎた。

 朝から夕方までは、お世話係の人と日替わりでウェルランドの観光を楽しみ、夕方以降はファマリーのお世話で余った魔力を使って魔道具の作成をこなす。

 いい加減、ドラゴニア貴族からの依頼が溜まりすぎてやばかったし。

 ただ、今度はウェルズブラからの魔道具作成依頼が大量に来ている。主に除雪雪だるまだけど、ドワーフの女性からは適温コートを求められていた。

 女性のドワーフは寒さに弱いからそりゃ必要だよね、と思うんだけど残念ながら手が足らない。

 困っていたところに、ノエルが廉価版のコートを作る事に成功した。

 沸騰魔石と適温コートの共通点を見つけて、『温める魔法陣』を完璧に仕上げて見せたのだ。

 ただ、残念ながら適温コートそのものを作る事は出来なかったらしい。


「それでも十分なんだけどね。という事で、後は任せた!」


 フランスパンのような長細いパンを口の中に詰め込んでいるノエルを見て言うと、彼女は食べるのをやめて、きょとんとした表情で端的に答えた。


「え、嫌っす」

「どうしてっすか?」

「真似しないでほしいっすー。どうしても何も、また業務が増えるじゃないっすか」

「でも前よりもだいぶ業務が減ってるっすよね?」

「そうっすけど、自由時間が減るっす!」


 まあ、それは嫌だろうけどさ。

 ホムラの方に視線を移すと、彼女は察してくれて無表情でこくりと頷く。


「少し教育が必要ですね、マスター?」

「ひえっ!」

「いや、違うよ? そんな事求めてないからね? ノエルのノルマ減らせない?」

「……そうですね、マスター。無くても世界樹の素材など売り物には困りませんが……」

「流石シズト様っす! シズト様が死ぬまではついて行くっす!」


 ノエルが大喜びをしているけど、一時的な措置になるかもしれない事を伝えるべきか。

 何とも言えない気持ちで考え込んでいると、レヴィさんが何かを思い出したように口を開く。


「でもシズト。今後、どんどん魔道具は必要になるのですわ?」

「まあ、そうなんだけどね」


 立ち上がって変な踊りをしていたノエルがピタッと固まった。


「…………なんでっすか?」

「ドワーフの王様のドゥイージ陛下から直々に、魔道具店をウェルランドに作って欲しいって言われちゃってね。そこら辺はホムラたちに一任してるから交渉を任せていたら……建設する事になっちゃった」

「どうして断らないんすかーー!」

「条件が良かったからです。建設予定地の中から好きな場所をこちらが選んで良くて、ウェルズブラ随一の建築家が建築を担当してくれるそうです」

「それにかかる費用も向こう持ちだから断る理由がないわね」

「それに、お店の中に転移陣の設置を許可してもらったし…………いつでも観光したいし」

「ボソッと言っても聞こえてるっすからね!」


 騒がしいノエルを放っておいて、ユキが困った様に頬に手を当ててため息をつく。


「今後の事を考えると、通過する国に一軒は立つ可能性がある事は考えるべきね」

「お父様に新しいお店を作った事を伝えたら、きっとドラゴニアの王都にも出店してくれと言ってくると思うのですわ」

「やっぱり作り手をたくさん集めるしかないか」

「世界各地に散らばっている魔道具師を勧誘するのですわ?」

「んー、そうなるとそこにいた魔道具師がいなくなっちゃうからなぁ。……育成するか」


 幸い、奴隷に対しての教育は主人である僕の自由という事は以前確認済みだ。

 奴隷の子たちの中で手先が器用な子がいるといいんだけどなぁ。後、魔力がたくさんある子!




 朝食を終えると、ホムラとユキはファマリアに向かった。

 奴隷たちの様子の確認と、魔道具師として見込みのある者を探すためだ。

 魔道具店の店員は、ドラゴニア王国公認奴隷商のブライアンさんが見繕う事になっているらしい。

 ファマリーのお世話が済むと特にする事はないので、今日のお世話係であるジュリウスとウェルランドへと向かう。

 クーの相手ができない事を謝り、目的の場所へ向けて歩く。

 男二人だけで向かった先は、ウェルランドにある公衆浴場だ。

 穴倉の中ではなく、山の斜面の上の方に作られたそこは、場所柄男専用だ。

 ドワーフの女性は寒さに弱いので穴倉の中に専用の公衆浴場があるらしい。

 流石にクーを連れてくる事は無理。幼い見た目だけど可愛い女の子だし。

 見た目が可愛いからか、ドワーフの国でクーを背負っていると、視線が良く集まる。

 背負っている僕にではなく、背負われているクーに。

 男性のドワーフは基本的に小柄な女性に惹かれるらしいし、そういう事なんだと思う。

 そんな種族の男風呂にクーを連れて行くのは絶対ダメだ。

 だが、ここにはどうしても来たかった。なぜなら――。


「ああ、やっぱりこの臭い……懐かしい」

「温泉特有の匂いですね」

「ジュリウスも知ってるんだ?」

「遥か昔、勇者と一緒に入った事がありますので」


 なるほどなぁ。

 遠い目をするジュリウスさんに深く尋ねる事はせず、タオルを腰に巻かずに歩く。

 温泉の熱だけではなく、鍛冶等によって発生した熱を再利用して足元が温められているからかそこまで寒くない。

 眼下に広がる雪景色と、黄金のだるまを見下ろしていると、体を洗う場所が空いたのでそこで体と髪の毛をさっさと洗う。そこまで寒くはないけど、やっぱり裸じゃ寒いので。


「ジュリウス、体洗うの早いよね」

「シズト様をお待たせする訳には行きませんので」


 体を洗い終えるとお待ちかねの入浴タイムだ。

 ここのお湯は温度が高めなようだ。のぼせないように気を付けないと。

 そう思いながらお湯に浸かると、ついつい声が漏れる。


「はぁ~~~……極楽だねぇー……」

「それは良かったですね」


 転移陣の許可が下りてよかったわー。いや、ほんとに。これでいつでも温泉に入る事ができる。

 穴倉の方には、旅人用の公衆浴場もあって、そこにはサウナがあるらしい。

 過去の勇者がドワーフの国で広めたのだろうか。それにしては温泉とサウナだけと種類が少ない事が気になる。

 まあ、細かい事はどうでもいいや。

 しばらく入ったら次はそっちに行ってみよう。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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