200.事なかれ主義者はひたすら雪玉を作る
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ドスン、ドスンと一定のリズムで跳ねながら目の前を進むのは雪だるま。
ラオさんとルウさんが協力して、町の外で作ってもらった二メートルぐらいの雪玉を合体させて作られたその雪だるまの背中には、魔法陣が輝いている。
クーを背中に背負いながら、その巨大な雪だるまの後ろを苦も無く歩いて行く。
雪だるまが通ったところはほとんど雪が残っていない。くるぶしくらいが埋まるかな? 程度だ。
雪だるまが雪かき中のドワーフたちの視線を集めながら跳ねて進んでいると、唐突に止まる。
そろそろ集まったようだ。
しばらく経ってから、雪だるまの上から僕と同じくらいの大きさの雪玉が落ちてくる。
除雪をしながら真ん丸の雪玉をたくさん作れるのはとても便利だ。雪だるま作り放題! この大きさならカマクラも作れるかも?
でもカマクラはぶっちゃけ作り方をよく知らないから、とりあえず雪だるまを作る。
ホムラと一緒に落ちてきた雪玉を転がして、除雪した道の脇に並べていく。
「なんというか……シズトらしいな」
「魔物退治用のゴーレムでもいいのにね」
「まあ、そういうのは極力作らねぇだろ」
「ホムラ、これ持ち上げて」
「わかりました、マスター」
「……よし、これで全部かな」
ずらりと並んだ雪だるま。
バケツとか野菜とかつけてないから味気ない。
それに、いちいち雪だるまを手動で作らなきゃいけないのは面倒だなぁ。
もうちょっと機能を追加したいけど、これ以上追加したら魔力消費がちょっと増えちゃうんだよな。
普段使いしてもらうためには、あんまりランクの高い魔石じゃない方が良いだろうし。
うーん、ここら辺は改良が必要かなぁ。
まあ、改良方法については適当に考えるとして、元々の目的を果たそう。
除雪雪だるまと命名した大きな雪だるまに、周囲一帯を除雪してもらって、広めの空間を作る。
良い感じに身の丈くらいの雪玉が転がっていた。遮蔽物もいちいち用意しなくて良さそうだ。
「それじゃ、雪合戦やろっか!」
「かしこまりました、マスター」
「やるのは良いけど、どんな事なんだ?」
「合戦っていう事は、戦うのかしら?」
「鍛錬をするのですか?」
「いやいや、ただこうやって雪の球を作って、ぶつけて遊ぶだけだよ」
「……なるほど?」
「ドッジボールみたいね!」
以前、暇を持て余していた時にアンジェラとパメラの三人でしていた遊びを、ルウさんは見ていて覚えていたようだ。
ラオさんはその時いなかったので、首を傾げている。
とりあえず、持っていた雪玉をルウさんに向けて投げたら、彼女はひょいっと避けた。
「当たったら負けなのよね?」
「そうだね。あんまりした事ないから細かいルールは知らないけど、当たったら脱落でいいんじゃない?」
「分かったわ」
「私は周辺の警戒をしますので、遠慮させていただきます」
「そっか、それはしょうがないね」
精霊魔法でめちゃくちゃされたら困るから助かったけど。
ジュリウスさんは置物と化した除雪雪だるまの上に行ってしまった。そこから周囲を警戒するらしい。
残ったメンバーでくじを引いてチームに分かれて戦う事になったんだけど……。
「ホムラ、仕組んだ?」
「何の事か分かりません、マスター」
「お兄ちゃん、頑張ってー」
「クーも頑張ってよ?」
「え~、めんどくさーい」
僕は背負っているクーとセット扱いで、もう一人のペアとしてホムラが仲間に加わった。
ラオさんとルウさんは姉妹チームになった事に特に文句もなく離れたところで準備運動をしていた。
ルウさんはニコニコして、いつも遊びに付き合ってくれるから分かるけど、普段は遊びには参加せずに僕を見ているラオさんが相手ってなんか不思議な感じだ。
ジュリウスさんの開始の合図と共に、最初に動いたのはホムラだ。
雪諸共地面が抉れるほど踏み込んだかと思えば、一直線にラオさんたちに突っ込んでいく。
「やる事ないかも?」
「安心してたら危ないよ、お兄ちゃん」
「え?」
気がついた時には、一瞬にして先程まで立っていた場所から離れた場所に移動していた。
どうやらクーが僕と一緒に転移をしたらしい。
それまで立っていた場所を無数の雪玉が通り過ぎていく。
ラオさんかルウさん、どっちか分かんないけどめちゃくちゃ離れてるのに届くの!?
慌てて遮蔽物に身を隠す。
こそっと顔を覗かせてラオさんたちを見ると、両手に雪玉を持ったホムラが二人を追いかけていた。
ラオさんも身体強化を使っているが、速さはホムラが勝っている。
ただ、そのホムラよりも速いのはルウさんだ。
加護のとっておきは使っていなさそうなのに、ホムラと同じかそれより少し上の速さで動き回っている。
ホムラがすごいのか、ルウさんがすごいのかよく分からんな、これ。
適当に雪玉を投げても遠いから届かないだろうし、近づいてもホムラの足手まといになるのが目に見えている。
「んー、やる事なさそうだ。どうしようかなぁ。とりあえず雪玉でも作っとくか」
「たくさんできたらあーしに頂戴?」
「別にいいけど、何に使うの?」
「ホムホムと一緒に二人を脱落させるんだよ」
「……なるほど?」
よく分かんないけど、身の丈以上の雪玉を背に、せっせと手のひらサイズの雪玉を量産していく。
一通り出来上がると、クーが小さな手で二つ、雪玉を持つ。
首にしがみ付いていないので、落としてしまわないようにしっかりと背負い直すと、突然視界が変わって眼下にラオさんたちが見えた。
「って、だいぶ高いんですけど!!」
「あーしがいるから大丈夫だよ、お兄ちゃん」
楽しそうな声が耳元で聞こえる。
クーはラオさんたちの頭上から、先程作った雪玉を投げては転移で元の場所に戻り、雪玉を補充しては上空や近くに転移して奇襲の繰り返すのだった。
……僕いる意味、あるんすかね?
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