195.事なかれ主義者はチラチラ見ている
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クーを乗せた馬車をユグドラシルで見送ってから数日が経った。
世界樹の世話以外にやる事がないので、溜まりに溜まっている貴族からの魔道具作成依頼をこなしていく。
人気なのは女性用の脂肪燃焼腹巻。ブルブルと震えてるだけであら不思議、徐々に痩せていく不思議な魔道具だ。
もちろん、食事制限しないとなかなか効き目悪いんだけどね。
甘い物が我慢できないという方向けに魔力マシマシ飴も作った。
その他にも、頭の毛を生やす増毛帽子などの身だしなみに関する魔道具の依頼が多い。
ただ、リヴァイさんやラグナさんからはオートトレースの依頼が定期的に来ているみたいなので、まとめて作る。
ちょっと飽きてきたらノエルの所や、ジューロさんの所に会いに行ってお話をしつつ、作業を見て過ごした。
ノエルはノルマを少しでも早く終わらせて魔道具の研究をしたい、という様子だったけど話し相手にはなってくれる。
ジューロさんはだんだん僕に慣れてきたのか、小刻みに震える事もなくなってきていた。
ゆっくり回転させるだけの魔法陣を作れる彼女は、粉を作る時に使う石臼を魔道具化したら便利じゃないか、と思いついて以来、それをせっせと作る日々だ。
空き時間には何か他の物が作れるようにならないかと、魔道具を観察し、模写しようと試みているようだ。
微弱な電気を放つ魔法陣を発明したので、それを真似してボタンを押したらビリッとするおもちゃを作って悪戯していたらラオさんに小突かれた。結構痛かった。
そんな感じの日々を送っていたけれど、他の同居人たちは新居の要望を伝えたり、工事現場を確認したりしている様だった。
朝食を食べている最中に、農作業用の服を着たレヴィさんがニコニコしながら様子を教えてくれる。
「最優先で作ってもらってるから一週間もあればできると思うのですわ!」
「すごい早いね」
「大きな屋敷を二つだから、これでも結構時間がかかってる方なのですわ。普通の一軒家だったらサクッとできるのですわ」
「へー……家か」
なんかこう、魔法のお家! て感じの魔道具作れないかな。
……イメージが曖昧過ぎて思いつかない。
そもそも、即席で簡易的な何かを作るなら、付与よりも加工の加護を使った方が手っ取り早い。
アダマンタイトで外側覆ってれば安全面はばっちりだし。
家を作るよりも異空間に部屋を作って、それとつながっている何かを持ち運べるようにした方がいいのかな。
アダマンタイトで出入口の安全を確保しておけば、出てきたら魔物たちに囲まれてました、とか誰かに移動させられてました、なんて事にならないだろうし。
「………」
「……! 悪戯するための物を考えてるわけじゃないよ!」
「だろーな」
朝食を食べ終えたラオさんが、ジト目で僕を見ている事に気付いて慌てて言い訳したけど、別にまだ何もしてないから言い訳する必要ないのでは…?
ラオさんが何か言いたそうな顔で僕を見ているけど、あんまり意識しないようにして、ご飯を食べる。
もうすぐ食べ終わるので、皆の予定を確認する事にした。
「今日はドーラさんが世話係だけど、レヴィさんと一緒に行動するの?」
「ん、今日はシズトと一緒」
全身鎧ではなく、白いワンピースを着たドーラさんが首を横に振った。
綺麗な金色の髪が動きに合わせてさらさらと動く。
レヴィさんは見た目通り、ファマリー周辺で農作業をするから、ドーラさんは護衛をする必要はないと判断したんだろう。
彼女の海のように青い色の目は眠たそうな印象を与えるが、しっかりと僕を見据えて首を傾げた。
「出かける?」
「いや、今日も魔道具作りかな。お店の方でもリクエストが溜まっているみたいだし、何か思いついたら作ろうかな、って思う」
「そう。見てる」
「見てても楽しくないと思うけど……」
「問題ない」
ドーラさんがそう言うなら、まあいいけどさ。
ラオさんとルウさんに視線を向ける。
ラオさんもルウさんも、武装していた。
「どこかいくの?」
「お姉ちゃんたちはドワーフの国用の装備を探すついでに、ダンジョンで鍛錬をしようかなって思うの。シズトくんは、温かい服、かったかしら?」
「温かい服?」
「ドワーフたちが住んでいるウェルズブラ周辺は山ばっかで、標高も高いから寒いぞ」
「へー、そうなんだ。街で聞いてもそういう話は出なかったから知らなかった」
「当たり前の事だから、誰も言わなかったんだろうな」
あと単純に、美味しい物や観光名所しか聞いてなかった僕の落ち度ですね、はい。
んー、そうなると依頼された物よりも先にカイロとかそんな感じの作らないとダメかな。
山の上なら雪とかいっぱいあるだろうし、スキーとかソリとか作ろうかな。
まあそれは置いといて、レヴィさんと同様、僕の婚約者であるジューンさんに視線を向ける。
彼女はのんびりとスープを飲んでいた。
なぜかメイド服を着ていて、胸がパツパツで苦しそうだ。
あんまりじろじろ見てはいけない、と思いつつもジュリウスに「婚約者なので、むしろ視線を逸らさないようにした方が良いかと」と言われた。
僕が視線を逸らすと、みっともない容姿だから逸らされたんだ、と思ってしまうんだとか。
ラオさんたちと同じ程度にチラチラ見るようにしている。
「ジューンさんはどうするの?」
「わたしはぁ、特に予定がないですぅ」
「じゃあ私と一緒に畑を広げるのですわ! シズトから許可をもらったから、放置してたファマリアとファマリーの間の空白地帯をとりあえず全部耕していくのですわー」
「分かりましたぁ。頑張りますぅ」
まあ、特に何か建てる予定もないし、フェンリルの事もあるから誰かを住まわせるつもりもないから別にいいかな。
やる気満々のレヴィさんと、ちょっと困り気味のジューンさんを置いといて、サンドウィッチの最後の一切れを食べきった。
今日も野菜一杯で美味しいっす。
章タイトルちょっと悩み中です。
途中で変更するかもしれません。
その際には活動報告でお知らせさせていただきます。




