175.事なかれ主義者は部屋に案内した
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神様に質問をしてから数日後、ジュリウスさんが転移陣を使って、優しいお母さんっぽい雰囲気を漂わせている……ジューンさんと、小動物系ロリエルフのジューロさん? を連れてきた。名前が似てるし、奴隷として働いているジュリーンと間違えないように気を付けないと。
男装が似合いそうなジュリエッタさんは、禁足地で世界樹の番人として働くことができるように鍛錬に励んでいるようだ。
屋敷の玄関で出迎えると、僕に気づいたジューンさんが慌てた様子でぺこりと頭を下げた。
大きなお胸が揺れるが、そちらに視線が行かないようにグッと我慢して気を付ける。
「改めましてぇ、ジューンですぅ。私にできる限りの事をがんばりますのでぇ、よろしくお願い致しますぅ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ジューンさんとは顔合わせの後、本当に婚約してもいいのか確認するために事前に会っていた。
世界樹の使徒の代理人として働く意思はしっかりとある事と加護目的ではない事は確認できたので、婚約する事にした。
ラグナさんには直接会って確認したし、リヴァイさんは第一夫人がレヴィさんであれば問題ないと手紙で返事が来たし、なによりラオさんたちも良いって言ったので。
っていうか、した方が良いとも言われたし。
まだそこら辺の価値観の違いには慣れないけど、皆が賛成なら、問題ないんだろう、きっと。
「ジューロさんもよく来てくれたね。これからよろしくね」
「は、はい! よろしくお願いします!」
「とりあえずジューロさんのお部屋案内するね。ノエルにお願いしたかったんだけど、断られちゃったし」
本館ではなく、別館に向けて歩いて行くと僕の後ろをついて歩くジューンさんとレヴィさんが何やら話をしているのが聞こえてきた。
「シズトのために一緒に頑張るのですわ!」
「私なんかにできる事であればぁ、死ぬ気でがんばりますぅ」
「そんなに気負わなくても大丈夫なのですわー。とりあえずユグドラシル関係でシズトに負担が行かなければそれだけで役目は果たしているのですわー」
そうだね。
婚約者云々は外向けのアピールらしいから、あんまり気にしないで過ごしてくれればいいし、使徒の仕事を肩代わりしてくれればそれでいいです。
彼女たちの後ろを歩くジューロさんに視線を向けると、視線があったらビクッとされた。
なんかずっとプルプル震えているような気がするし……そんなに僕って怖いっすか?
とりあえず愛想笑いをしておいて、前を向く。
別館の入り口では、元貴族令嬢のモニカが待っていた。奴隷という立場だけど、まとめ役や確認役みたいな感じで働いてくれている。
「室内の最終点検は終了しました」
「いつもありがと、モニカ。それじゃ普段の仕事に戻っていいよ」
「かしこまりました」
モニカは本館の方へと向かって行った。
婚約の申し込み関係はもうほとんど送られてこない状況らしいんだけど、その他の貴族関係は来るらしい。
それに目を通してもらって僕が見る必要があるのかどうかを判断してくれている。
レヴィさんやセシリアさん、ドーラさんを信頼していないわけじゃないけど、念のためね。
静かな別館の廊下を歩いて目的の部屋に到着したので、皆で中に入る。
「ここが今日からジューロさんの作業場兼お部屋だよ。自由に使ってくれていいからね」
「広い……」
「これでもノエルの部屋の二倍くらいあるからね」
あそこ元々物置だったらしいし。
いや、でもあの部屋普通に一人暮らしできそうな感じだけどね?
感覚がこっちになりつつあるかも……?
ちょっと自分の中の変化に驚いている間に、ジューロさんは興味深そうに部屋の中を見回していた。
この部屋は僕のマイルーム予定地ではないので、他の部屋と同じで土足で生活する想定で改造してある。
高さ調節機能の付いた木製の椅子の魔道具に、広めの作業台はもちろんアイテムバッグと同期してある引き出し付きだ。
「……他の魔道具と、つながっている机……?」
なんかずっとプルプル震えているジューロさん。
「シズトと過ごしてると慣れてしまうのですけど、これが普通の反応ですわね」
「まあ、だよな」
「そのうちお二方も慣れるかと」
魔力マシマシ飴を舐めながら僕たちについて来ていたラオさんが、レヴィさんに同意した。
セシリアさんもうんうんと頷きながら二人に同意している。
「照明は魔石を入れたらつくから便利だけど、間違っても夜更かしして魔道具研究とかしないでね。そういうの間に合ってるから」
「………」
「水が欲しければこのコップに魔力を流せば勝手に溜まるし、紅茶はこっちのティーポットに魔力を流せば出てくるから」
「………」
食器などが入っている棚を説明している時は何も反応せずにプルプル震えていた。
クローゼットはまだ魔道具化してないけど、いい香りがつくようにしてみようかな? あとは虫よけ?
一通り説明が終わったタイミングで、こっちの館に住んでいるアンジェラがひょこっと扉を開けて顔を出した。
「シズトさま、あたらしいひと?」
「そうだよ。この子がジューロさん。これからこの部屋で生活するから、建物の案内してあげて」
ノエルに任せようかな、と思っていたけどいつも探検しているアンジェラの方が適任だろう。
トテテテ、とみんなの間をすり抜けて、震えているジューロさんの隣に立つアンジェラ。
こうやって見ると本当にジューロさんがロリに見える。うん、やっぱりアウトだわ。息子も反応する可能性ホントにゼロな気がする。……だよね?
そっと下を向くが何も反応がない。知ってた。
もう僕から説明する事はないし、怖がっているのか分かんないけど会ってからずっと小刻みに震えているジューロさんの案内はアンジェラに任せて、ジューンさんを連れて別館を後にした。
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