160.事なかれ主義者はまだ慣れない
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半分以下になった資料を一つずつ見ていく。
見ていくんだけど……興味がわかない。
他国の王族も混じっているし、この国の貴族や大商人の娘などもいた。
「人間ばっかりだね。ジュリウスさんやドフリックさんが止めてくれたのかな?」
「いえ、エルフは普通に年齢で除外しました」
「ああ……長寿だもんね」
エルフで同い年ぐらいの人ってどんな見た目なのかな。
成長はある程度人間と同じなんだろうか。それとも赤ちゃんの時期が長いんだろうか。
どうでもいい事を考えていたら、ラオさんが付け加えるようにドワーフがこの中に入っていない理由を教えてくれた。
「ドワーフの方は、単純にお前の体型が好みじゃねぇからだろうよ。人間みてぇに他種族と交わる事が少ないドワーフだが、ドワーフの男と小柄な人間だったり、背が小さいが筋肉モリモリの人間とドワーフの女が結ばれる事はあるみてぇだけどな。ドフリックも娘を嫁に、なんて言ってないだろ?」
「そうだね。暇な時に手を貸せ、ってくらいしか言ってきてないかも。ドロミーさんともあんまり交流ないし」
「良くも悪くも見た目重視の種族なんだよ」
なるほど。遺伝的にそういう人が好きになるようにできているんだろうか。謎だ。
魔法とかあるから古の契約で種族ごと縛られてる、とかありえそう。
「じゃあ、二人にお礼とか言わなくていいか」
「まあ、いいんじゃねぇか」
ラオさんがソファーにどっかりと座って魔力マシマシ飴を口の中でもごもごと動かしている。
モニカは省かれてしまった書類をトレーごとどこかに持って行ってしまった。
まあ、見ないからいいけど。
一つ一つ見ていても時間がかかりすぎるので、今度は絵姿をパラパラと流し見していく。
可愛い子が多いなぁ、とは思うけどいつも周りにいてくれる人ほどではないかなぁ。
胸はレヴィさんが一番大きいだろうし、太腿はラオさんやルウさんが魅力的だ。
っていうか、見た目で選ぶんだったらホムンクルスでも作ればいいじゃん。理想の女性を作るってなったら僕のイメージ次第だけど、不可能じゃない。
じゃあ中身で選ぶか、と思って絵姿は横に置いといて、紙に書かれた情報を読み込んでいく。
どこどこの家の者で、とか書かれてもよく分からない。
派閥とか諸々あるんだろうけど、そこら辺の情報をレヴィさんが最低限走り書きで残してくれているようだ。
違う派閥の人たちから選んだ方が良いんだろうか。それとも同じ派閥の人で固めた方が良いんだろうか……分からん!
周辺諸国についてはユグドラシルとエンジェリア帝国しか名前を聞いた事がないから、聞いた事もないような国の名前が多数あった。
「……国外を旅行してみたいなぁ」
「シズトも旅に出るんか? ジュリウスがついて行くだろうから要らんだろうけど、アタシも連れてけよ」
「ストッパー役大事だよね、分かります」
「自分でブレーキかけろ」
「どうも過去の常識や価値観とズレがありますのでぇ……あ、はい! 善処します!!」
ラオさんの目つきが危険なものになったので背筋を伸ばしてそう答えると、ラオさんは再び足を組みなおしてのんびりと飴を舐め始めた。
そのラオさんに時折睨まれながら、僕は資料を読み続けた。
翌日、書斎の机の上には昨日と同程度の量の紙が高く積まれていた。
レヴィさんたちはどんどんやってくる使節団や貴族の対応に忙しいらしい。ルウさんは昨日から帰ってきていない。
飴を舐めながらモニカの仕分けを待っていたが、モニカに省いてもらったのに三分の二くらい残っていた。
「……もしかしてどんどん増える?」
「もしかしなくても増えるだろ。加護を広めるって事はそういう事だ。それを承知で、龍の巣を最終的にやるって決めたんだろ?」
「……まあ、ね。呪いの加護の厄介さは十分すぎるほど分かったからね」
ルウさんの様にずっと目を覚まさないようになってしまう可能性もあれば、レヴィさんの様にどんな後遺症が残るか分からないものもある。
食らわない事が大事だってのは分かった。
それに、呪いの加護を完全に防ぐ方法は思いつかなかったし。
呪いの加護持ちに加護無しの指輪を嵌めさせれば無効化はできるだろうけど、見えない所からだったら緩和したり、即死を防いだりするくらい。
これから加護を使って行けば思いつくようになるのか、知識を増やせばイメージできるようになるのか、神様の力が増せば防げるようになるのか分からないけど、これからも定期的に呪い対策の魔道具は作っていく事にしてる。
「でも、どんどん増えるのかぁ……面倒だなぁ」
「あんまり断りすぎると、別の行動し始める輩も出てくるかもしれねぇぞ。実力行使はジュリウスたちがいるから問題ねぇけどよ。ハニートラップは、シズトが屋敷からほとんどでねぇからそうそう起きねぇだろうし、護衛のアタシや何よりジュリウスが許さねぇけど、やっぱり権力者は対応しづれぇわ。ドラン公爵の庇護下にあるように見られてるから国内の奴らは無茶苦茶な事はそうそうしてこねぇだろうけどな」
「何か面倒事が起きるよりかは今のうちに、表向きだけでもこの人を選んだから他の人は無理! てアピールしろって事っすか」
「まあ、そうだな。一人だけじゃ足りねぇからもう数人は娶る事になりそうだけど」
「ん~~………価値観が……違う……」
机に頬をピタッとくっつけながらパラパラと資料を見ていく。
文句のつけようのない美女と婚約しても、後ろ盾がないと押し付けられるの何だかなぁ……。
他国の姫君と婚約してもその国の力や繋がりによって連鎖的に押し付けられるかもだし。
……円満な家庭を築いていきたいんだけどなぁ。
やっぱり、ここから選ぶのは難しいなぁ。
最後までお読みいただきありがとうございます。




