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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第8章 二つの世界樹を世話しながら生きていこう

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127.事なかれ主義者は謝罪された

評価&いいね&ブクマ登録ありがとうございます。

 陽太たちが敷地内に入ってくるのが見える。

 屋敷の門から彼らは歩いて入ってきた。

 言われた通り、三人だけで来ているようだ。看破の結界が効かない姿隠しの魔道具が向こうになければ、だけど。

 自室からその様子を見降ろしていると、姫花と目が合った。

 『聖女』の加護に相応しい装いの彼女は、遠くから見ている限りでは確かに聖女だなぁ、って思う。中身がアレだからどうせ話し始めたらこんな気持ちはどこかに消えてしまうんだろうけど。


「シズト様、先に部屋で待ちますか? それとも待たせますか?」

「わざわざ待たせる意味あるの? さっさと終わらせたいから応接室に通して」

「かしこまりました」


 セシリアさんが礼をして部屋を出て行った。

 僕はセシリアさんが用意してくれた新品の服を着て、応接室と呼ぶ事にした部屋に移動する。

 無駄に数が多い部屋の一つで、物置と化していた部屋だ。

 今はちゃんと家具を作ってそれっぽい内装にしてある。

 世界樹の近くに落ちていた枝を加工して、部屋の床を覆っている。ソファーはホムラに高そうなやつを買って来てもらった。その他の机や置物は全て木製にしてある。

 窓を背にして、ふかふかのソファーに座ってしばらくすると、ノックの後に「私なのですわー」と、レヴィさんの声。


「開いてるよ」

「入るのですわー。ラオとルウはもうすぐ来るのですわ」


 レヴィさんが、高そうな黒いドレスを着て現れた。体のシルエットがはっきりと分かるそれは、彼女の豊満な胸部をより際立たせていてどうしても目がそこに吸い込まれちゃう。

 意識して彼女の方を見ないように気を付けていると、レヴィさんは体が触れるくらい近くに腰かけて扇子で仰ぎ始めた。

 彼女からいい香りが漂ってくる。いつもと香りが違うけど、これ何のやつだろう?

 それに意識が持っていかれそうになったが、ガチャガチャという音でハッとする。音をたてながらドーラさんがやってきて、僕の斜め後ろに立つ。


「ラオさんとルウさんは?」

「もう来る」


 端的にドーラさんが答えると同じタイミングで扉が開く。

 ラオさんとルウさんだ。

 ルウさんは僕の顔を見ると、にっこりと微笑んでずんずんと近づいてきた。


「シズトくん、顔が固いわよ? ほら、笑って笑って~」

「遊ぶのは後にしろよ。もうすぐ来るんだから」

「いいじゃない、ちょっとくらい。ラオちゃんのケチ!」


 僕の顔をむぎゅむぎゅとしていたルウさんの頭を叩き、ラオさんがルウさんを引っ張っていく。

 後ろに並んだ三人は全員武装していて、ちょっと違和感がある。いつもはだらしない恰好で部屋をうろついているのに。いつもその恰好なら目のやり場に困らないんだけどなぁ。あ、レヴィさんはいつもの作業着でお願いしたい。あれでも胸やお尻を見ちゃうけど、今日の服装よりはちゃんとレヴィさんを見る事ができるから。

 そんなどうでもいい事を考えている間に、客人たちがやってきたようだ。

 ノックの音が聞こえた後に、「お客様をお連れしました」と扉の外からセシリアさんの声がする。


「どうぞ」

「失礼します。神聖エンジェリア帝国の特使様をお連れしました」


 セシリアさんが開いた扉から、陽太たちが入ってくる。

 立って出迎えようとしたら、そっと太腿にレヴィさんの手が置かれた。

 ……立つなって事?

 なんかこう言う話し合いの時のマナーみたいな物があるのかもしれない。

 大人しく座っていると、特使としてやってきた三人は机を挟んで向こう側に並んで立っている。

 中央に立っているのは陽太ではなく、明だった。

 眼鏡の位置を直して、僕を真剣なまなざしで見つめてくる。……何回見ても女っぽい見た目だなぁ。


「久しぶりですね、静人。元気にしてましたか?」

「三人が来るって聞くまでは元気に過ごしてたよ」

「そうですか。それは申し訳ない事をしました。座ってもいいですか?」

「どう――」

「座られる前に、シズトに謝罪の一つもないのですわ?」


 扇子で口元を隠しながら、レヴィさんが鋭い眼差しで明を見据える。

 明はそれもそうだ、と頷いた。


「エンジェリア帝国からドラゴニア王国には謝罪をしているため、失念しておりました。仰る通りですね。シズト、先日はユグドラシルの言葉を鵜吞みにして、あなたを犯罪者呼ばわりしてしまい、申し訳ありませんでした」


 明が謝罪と共に上体を45度ほど傾けると、両隣にいた二人も、遅れて頭を下げる。

 その状態のまま、三人とも動かない。

 レヴィさんをチラッと見ると、レヴィさんもこちらを見ていた。


「……シズト、謝罪を受け入れるのですわ?」

「え? あー……うん。一つ貸しね?」


 僕の言葉待ちでした。

 前の世界の事もあって、三人に思う所はある。いや、ぶっちゃけ僕も僕だったけどさ、それでも……ね。

 ただ、国に言われて依頼として僕を捕まえに来た三人にはちょっと同情もしてる。

 僕がもし彼らの立場だったら、同じ事をしていたと思うから。

 今回の事で評判も悪くなっただろうし、大変だろうけど、次からはしっかり下調べしてから行動してよね。

 ゆっくりと頭をあげた明が苦笑を浮かべた。


「大きな借りを作ってしまいましたね。謝罪の品で済ませたかったんですけど」

「それでもいいよ。面倒だし」


 つい口をついて出てしまった言葉だけど、貸しを作っておくと何だかんだ今後も関わる事になりそうだし、むしろそれでいいよ。

 明が何とも言えない気持ちで僕を見るのを無視して、のんびりとセシリアさんが淹れてくれた紅茶を飲んだ。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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