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【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~  作者: みやま たつむ
第8章 二つの世界樹を世話しながら生きていこう

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111.事なかれ主義者はドライアドとお散歩した

高評価&いいね&ブクマ登録ありがとうございます。

 世界樹ユグドラシルの周辺に広がる森を進む途中で、青いバラを咲かせた他のドライアドよりも大きい子と再会した。

 彼女よりも小さく、いろんな花を咲かせているドライアドたちに周囲を囲まれながら、彼女の先導でユグドラシルへと向かっている。


「精霊の道を通ってきた?」

「そうだよ。向こうにいた子たちは、私以外その道を通ってファマリーに行ったんだよ。同種がいる場所なら繋げられるの」

「繋げられるんだよー」

「本当は向こうでのんびりしていようかな、って思ったんだけど、こっちの子たちが『なんか変』って教えてくれたから見に来たの」

「なんか変な感じするもん、ねー」

「「「ねー!」」」

「わんちゃんも急いでこっちに向かってもらってるんだよ~」


 フェンリルをそんな軽く動かさないでほしいなぁ。

 ドライアドたちにとっては昔から知ってる『わんちゃん』らしいから、人間がどれだけフェンリルを怖がるのか言ってもよく分からないだろうけど。

 そんな話をしながら歩いていると、体に巻かれたロープがぐいぐいと引っ張られる。


「はいはい、大丈夫ですよ、っと」


 ぐいぐいと引っ張ってみるけど、これってちゃんと向こう側まで伝わってんのかな?

 やっぱり魔力ケチらずに魔道具作ればよかったかなー。

 体に巻かれているロープを魔道具にしてもいいけど、魔石がないから自前の魔力で使うしかない。

 ……うん、やっぱり魔力を使うのは避けたいからやめとこ。


「あ、そうだ。誰かロープを辿って向こう側に行ってくれない? フェンリルが来るって伝えておいた方がいいと思うし」

「んー……ダメかなぁ」

「ダメー」

「どうして?」

「何かいつもと違う変な感じが、ちょっとずつ強くなってるから」

「なんだろねー」

「周りのエルフさんたちにお願いするといいと思う」

「エルフさんもいっぱいだもんねー」

「え?」


 ドライアドたちがあっちだよー、とそれぞれ別の方を指差しながら教えてくれるけど、木の上を見ても、森の奥を見ても見当たらない。

 ちょっと、これ……やばい感じなのでは?

 ロープを引っ張ろうか悩んでいると、青いバラのドライアドがのんびりとした口調でそれを止めてきた。


「大丈夫だよー。このエルフさんたち、世界樹を育てる人を守る人たちだから」

「出てこないねー」

「恥ずかしがり屋さんなのかな?」


 僕が世界樹を育てられれば、守ってもらえるって事っすかね?


「何かあっても私たちが守るよー。私たちも、ユグちゃんには元気でいてもらった方が助かるから。ユグちゃんを元気にしてくれる人間さんは大事だもん」

「大事だもんねー」


 見た目が幼女だから、めちゃくちゃ不安なんだけど。何かあったらこの子たちも連れて逃げなきゃ!

 周囲にいるらしいエルフの事は気になるけど、出てくる気はないらしいし、ここで長年生活していたドライアドたちが大丈夫というならそれを信じて進もう。




 森の中をドライアドたちの説明を聞きながら歩く。

 ドライアドたちは僕の周りで楽しそうに話したり、その辺に落ちている木の枝を拾ってブンブン振っている。その度に、生い茂っていて進むのに邪魔になりそうだった草が移動して道ができたり、木の実が飛んできて彼女らの手に収まったりする。


「これもあげるー。ちょっと酸っぱいよー」

「口がキュッてなるよー」

「あ、ありがと」


 流石にレモンを丸かじりはしないかなぁ。

 っていうか、季節とか全く関係なく生ってるけど、やっぱり世界樹の影響なのかな。

 その事を聞くと、ドライアドたちは首を横に振って否定した。


「ユグちゃんのおかげで育てやすいけど、私たちが育ててるんだよ―」

「ちょっとずつねー」


 なるほど。【生育】みたいなもので季節関係なく育ててるのか。ほんと、異世界って感じ。

 品種改良とかも過去の勇者たちの話を元にしていったのかな?

 いつもの癖でアイテムバッグに入れようと背中に手を伸ばすけど、バッグがない。

 物を持ち込んでエルフを刺激しないようにと、帰還の指輪以外は言われた物しか身に付けてなかったんだった。

 レモンを黄色い花を咲かせている小さい方のドライアドに渡す。

 もしゃもしゃと皮ごと食べてるけど、レモンってそういう風に食べるんだったっけ?

 キュッて酸っぱそうに口をすぼめるドライアドの頭をポンポンと叩いて森を進む。

 何だか分からない木の実を渡された時はその見た目にちょっとぎょっとしたけど、味は普通にリンゴだった。皮が虹色なだけで、中身は普通だった。

 ドライアドにホイホイと渡される木の実を食べるために時々小休止をしながら進んでいるとやっと森を抜けた。

 目の前には世界樹がそびえ立ち、その周囲がぽっかりと円形上に切り開かれている。世界樹の側には建物があって、誰かが生活しているようだった。

 建物の近くには畑があるけど、誰も世話をしていなかったのか枯れてしまっていた。

 上を見上げると雲の向こうまで伸びているとても大きな木が枝を空に延ばしている。

 葉っぱがあったら、この広い切り開かれた場所すべてが日陰だったのかもしれない。

 ファマリーもここまで大きくなるのかな。

 ぽかんと口を開けて上を見上げながらそんな事をふと思った。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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