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後日譚498.魔女たちは以前から気にしていた

 一般的な魔法生物には休憩は必要がない。ゴーレムやガーゴイルのような物であれば自壊するまで動き続けるし、生物を模して作られたものでもそれは変わらない。

 魔法ではなく、加護を用いて作られたホムンクルスもまた、人を模して作られてはいるものの、人とは異なり眠りの必要性はなかった。精々魔力温存くらいだろうか。

 そんな彼らだからこそ、シズトに気付かれないように夜中にひっそりと集まって情報交換を行っていた。今日の定例会もまだまだ続いている。


「ファマリアの方はどうなっているでござるか?」

「特に問題ありません」

「そうだとしても、何か変化があるのなら知っておきたいでござるよ」

「……分かりました。貴族街を作る事になった話はしましたね?」

「タルガリア大陸のお姫様が事の発端だったと聞いているでござるよ」

「そうですね。私としては今のままでも問題はないと思っていましたが、子どもたちの教育にも悪影響が出るのではないか、という意見があったので南の区画に貴族街を設ける事になりました」

「立場が立場だから守られている状況なのは仕方ないと思うでござるが……。こちらの世界に生まれた以上、こちらの世界の考え方や価値観に少しでも早く慣れておくためには仕方がない事でござるな」

「シズト様の子どもに対して不敬だとか何とか抜かすような奴はしばらく出て来ねぇと思うけど、まあ余計な面倒事を避けるのならこっちに慣れさせるのが無難だわな」


 ズズズッと揃って湯呑に入ったお茶を飲むムサシとライデンに対して頷いたホムラは話しを続けた。


「その後、しばらくは特に何もありませんでしたが、つい先日、他の教会もファマリアに建設する事になりました。受け入れる教会の選定はアッシュに任せていましたが……」

「そこら辺は既に終わっておる。受け入れない所の断り方はそっちに任せても問題ないんじゃな?」

「ええ、こちらで対応ができると思いますので大丈夫です。……便宜上『宗教区』と呼ぶ事にしますが、そこそこの大きさの教会を建てるためにはそれ相応のスペースが必要になります。住居のように集合住宅のような感じにするわけにもいきませんし、スペースが足りないと言えばある程度は引き下がるでしょう。問題は――」

「どの教会をどこに建設してもらうか、じゃな」


 ニコニコしていたアッシュの顔から一瞬笑みが消えたが、湯呑に入ったお茶を飲むとすぐにまた優し気な笑みを浮かべた。


「とりあえず大地の神アイア様を祀っている教会は宗教区の中でも奥まったところにあった方が良いじゃろうな」

「そうですね。いわゆる花街などはシズト様の反対で作られておりませんのでその近くに建てることもできませんし、それで問題はないでしょう。後は創造神様の教会を中心に建てる感じになると思いますが……。信者同士で揉め事も起こりうるので慎重に決めて行こうと思います」

「他にはファマリアで何かあったでござるかな?」

「特にないですね」

「そうでござるか。じゃあ、次は…………ユキ殿からは何か話はあるでござるか?」


 気だるそうな姿勢で話しの成り行きを見ていたもうひとりの魔法使い然とした格好の女性が話を振ってきたムサシを見た。


「特にないさ。可もなく不可もなし。強いてあげるのなら、店を町の子に任せても問題ないんじゃないかと思うくらいには対応できるようになってた事くらいかね」

「防犯面の問題は初期の頃にシズト様に作ってもらった魔道具の数々がありますからクリアしていますし、いいんじゃないですか?」

「そうなったら私の仕事がなくなるのが問題なのさ」

「一緒に行商でもしますか?」


 セバスチャンに誘われたユキは剣呑な眼差しで「今のポジションは譲るつもりはないさね」と言ったが、セバスチャンに他意がない事をすぐに察して「…………申し訳なくは思っているんだよ」と付け加えた。


「申し訳なく思う事なんてありません。もしも私たちも本気でシズト様のお傍で仕えたいと感じていたらすぐに言ってますし、シズト様の事です。すぐに了承してくれるでしょう。ただ、少なくとも私は何かしら別の方法でお役に立ちたいと思っているのでそれを求めるつもりはありません」

「シズト様にそっちの趣味はないだろうからオイラも別の方法で役立てりゃそれでいいな」

「何か思う事があるとしたら同性のクーとマリンくらいじゃないかのう」

「べっつに~、ユキっちたちと同じ扱いとかいらないし? マリンはさー、自由な海で好き勝手したいって感じ~。まあ、もちろん? ヌシたんのお願いは何でも聞いてあげるつもりだけど、それとこれとは別なんだよね~。クーっちもそうっしょ?」

「…………」


 突っつかれても反応しないクーを起こそうとさらに突っつくマリン。そんな彼女にユキはただ一言「そうかい」とだけ返すのだった。

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