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後日譚497.魔法生物たちは放置して話を続けた

 深夜のホムンクルスたちの集会はまだまだ続く。魔動灯りのランプが室内を照らし、窓の外に光が漏れているため、窓には真っ黒な肌のドライアドたちが光に惹かれたのか集まって張り付いているのだが、ホムンクルスたちは気にした様子もない。

 魔道具『遮音結界』が起動されているため彼らの話が外に漏れる事はないから、という訳ではなく、そもそもシズトの関係者に聞かれて困る隠し事は特にないからだった。


「拙者からの話はこれで本当に特にないと思うでござる。次の話は…………子どもたちの様子を聞きたいでござるなぁ」

「それウチも聞きたい~! だってさー、ここに来るのっていっつも夜だし~。子どもたちガチ寝してるからさ~、見に行くのとかマジ気まずいじゃん?」


 ムサシに勢いよく同意したのはマリンというホムンクルスだ。普段は海の中で生活しているため下半身は魚の尾びれのような見た目にしていてシズトのイメージでいう所の『人魚姫』だが、今はどこからどう見てもただの人間だった。

 肌の露出が多い服を着ているためその魅惑的な体つきが露になっているのだが、それをじろじろと見る男はここにはいない。


「子どもたちは問題なく成長をしております。紫亜様は少々病気がちなので、万が一のために各種ポーションとエリクサーを常備していますが今のところ使った形跡はありません」

「そういう事務的な事じゃなくてさ、もっと『え、なにそれ超可愛いんですけど~』てきなエピがほしいわけ。そういうのないの~?」

「そう言われてもねぇ。私たちだってずっと子どもたちと一緒にいる訳じゃないんだよ」

「お食事の席で知った事は全部事務的な報告になりがちですから」


 ホムンクルスたちの中でも特別扱いされている二人の返答にマリンは納得していないようだ。他にないかと視線を他のホムンクルスに向けると、彼らは一様にとある人物に視線を向けた。ぐっすり眠っているクーである。


「クーであれば、パメラに連れ回されて子どもたちと遊ぶ事も多々あると思いますし、そういう話もできると思いますが……」

「あーね。…………次の議題とかどーぞ~……」


 無理矢理起こそうとすれば問答無用でどこかに飛ばそうとしてくる少女という事は全員が知っていた。自然に起きるのを待つしかない。

 マリンが机に突っ伏しながら次の話をするように促すと、ムサシはライデンの方を見た。


「そちらは何か変わった事はあったでござるか?」

「特にねぇなぁ。…………あー、でも強いて上げれば魔の森の攻略に力を貸せってなんか言ってきたな」

「前回も同じ事を報告していた気がするのでござるが、何か違いはあるでござるか?」

「あー……今回は集まりの時に言われたな」

「どういう集まりでござるか?」

「どういうって……あれだよ。国のトップが集まって話し合う奴だ」

「なるほど。各民族の代表者が集まる話し合いで求められるくらいには行き詰っているのでござるな」

「魔の山の方はどうなんですか?」

「あっちの方はお互いをけん制していてほとんど動きがないでござるなぁ。変に刺激したら魔物たちの大暴走が起きかねないっていう報告もクロトーネかされているでござる魔の森ではそういうのは起きていないでござるか?」

「たびたび起きているようです。ランチェッタが砂漠に魔物が大量に溢れ出た、という報告を時々するので」

「あー、それはこっちでも聞いてるなぁ。砂漠を越えてくるまでこっちは手出しできねぇから待ちの姿勢になってっけど、待ってる間に長い壁でも作っておくか、っていう話がでてたな」

「万里の長城みたいでござるなぁ」

「空飛ぶ魔物には効果がねぇけどな」

「ニホン連合やドタウィッチの方の話は入って来ないので分かりませんが、全方位に何かしら起きていると思った方が良さそうですね」

「手が空いてますし、私が調査をしてきましょうか?」


 ホムラたちの話に控えめには言ってきたのはセバスチャンである。

 ドランの屋敷の管理と来客の対応をモニカの代わりに任されていたのだが、モニカが出産を終え、体調も回復した現在、彼は手持無沙汰になっていたのでドランにあるシズトが信仰している四柱の教会の管理、運営を勝手にしていた。ただ、それもファマリアで新婦として活動をしているアッシュからの教育を終えた町の子たちが代わりにやろうと思えばいつでもできる状態だった。


「ニホン連合はシズト様が行くといささかトラブルが起きる可能性がありますし、ついでにぐるりと見て回ってシズト様好みの品物がないか見てくるのも良いかと考えているのですが……」

「各地の地酒とか飲んでみてぇなぁ」

「それはライデン様のしたい事でしょう」

「…………いえ、そういうご当地の物を見て回るのはありかもしれません」


 呆れ気味に言ったセバスチャンを否定したのはホムラだった。


「子どもたちのプレゼントで悩まれているので、何かヒントになる物があるかもしれません」

「なるほど。お酒に限らず、様々な物を見て回る必要がありそうですね。いっその事、モニカ様が再びご懐妊されるまでは行商人の真似事のような事をしてもいいかもしれません」


 お金儲けのためではなく、シズトが欲しがりそうなものを仕入れるつもりのセバスチャンは、一先ず魔の森近辺の国を見て回る事になるのだった。

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― 新着の感想 ―
クー・・・・・・・・・・・・・アンタッチャブル扱い!? ある意味一番の特別扱いでは・・・・・・・・・・?
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