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後日譚491.事なかれ主義者は余計な事を知った

 相手の思惑が分からない以上は慎重に動く必要がある。

 レヴィさんたちとかに相談したい気持ちもあるけれど、最近レヴィさんたちの妊娠が発覚した。

 そりゃあれだけの頻度でやっていたらその内誰かは妊娠するだろう。むしろよく今まで妊娠しなかったなと思ったくらいだ。

 今回妊娠したのはレヴィさん、ルウさん、エミリー、シンシーラのとても夜の営みに意欲的な四人だ。妊娠している彼女たちには特に余計な心配はかけたくないのでいつも通り過ごしてほしい。

 そうなると自分で解決する必要が出てくるわけだけど……下手したらチャム様の悪評が広まってしまうと考えると慎重に動いた方が良いのかなぁ。


「と、考えたので相談に来ました」

「はぁ。僕も忙しいんだけどねぇ」


 久しぶりに見る真っ白な空間の中で佇む僕の前にいるのが僕に新しい加護を授けてくれたチャム様だ。

 僕が加護を失うきっかけである邪神と呼ばれる存在だけど今は『まじないの神』として売り出し中の彼は、未だに外見に変化はないようで、下半身は蛇のままだった。


「忙しいと言いつつもちゃんとこっちまで呼んでくれるんですね」

「あれだけしつこく祈っておいてよくいうな」

「反応がなかったので祈りが届いていなかったのかな、って」

「届いていたけど無視してたんだよ。……はぁ。つい独り言が漏れなかったらあいつらもうるさくならなかったのになぁ」

「あいつら?」

「お前に前の加護を授けた奴らだよ。お前からの祈りに反応して独り言を呟いたのが運の尽きさ。早く応じてやれって後をついて回ってきて面倒だったんだからな」

「祈った僕も悪いのかもしれませんけど、チャム様が独り言を呟かなければバレなかったんじゃ? だって、僕の存在は他の神々には感じ取れないんでしょ?」

「そうだけど……長い年月、真っ暗闇の中で一人で過ごしてたら癖になっちゃったんだよ。仕方ないだろ?」


 一人で暮らすようになったら独り言が増えるとかそういう感じだろうか? 一人暮らしをした事ないから本当に増えるのか知らないけど。


「どうでもいい事考えてないでさっさと用件話してくれる?」


 余計な話をする事になったのはチャム様が余計な一言を言ったから……あ、はい。サクサク話します。

 蛇のような目でじろりと睨まれた僕は思考を切り替えて口を開いた。


「こっちに来てすぐに説明した通りの状況なんだけど、どうすればいい?」

「別に好きにすればいいんじゃない? 他の奴らを黙らせるためなら異常気象でもなんでも起こせばいい。お前なら魔力的にも余裕だろ?」

「余裕、とまではいかないけど、まあできるよ。ただ、その後信仰が歪まない?」

「噂を流された時点で今更さ。むしろ、こっちの言う通りにしないと噂を皿に広めるぞ、って悪意を感じるねぇ。最悪、間違った信仰が広まってどうしようもなくなったらその時こそあのジジイに言って他の神の一部にでもしてもらうさ」

「一部にしてもらうって……?」

「僕が担っている物を同化する事でそいつに任せるんだよ。筆頭候補は占いの神だね。力の内容が似てるし」

「同化したらチャム様は消えたりするんじゃないの?」

「そりゃ消えるだろうさ。元々、下界で好き勝手暴れてた時からその内存在ごと消されるだろうと思ってたし。……結果的にはこうして存在してるわけだけど、いつでも消えてなくなる覚悟はできてるんだよ」


 …………姿形が変わるの、そこまで嫌なんだ。じゃあやっぱり慎重に行動しないとなぁ。

 どうしたものかなぁ。

 実践した所で、最近の異常気象の原因が僕じゃないって証明できないし……。


「いや、異常気象が続いている原因はお前だよ」

「…………へ?」

「お前って言うか、僕たちって言うか……ああ、僕たちの中にはもちろんあいつらも含まれてるからな」

「あいつらって?」

「お前に加護を授けた奴らだよ」

「エント様たちも原因って…………」

「この面子なら心当たりしかないだろ?」

「……神降ろしが原因って事?」

「そういう事。まあ、直接的な原因じゃなくて副次的な効果なんだけど……。あのジジイが力を振るわないのは影響力が大きすぎるからだけど、それは他の神々にも言える事なんだ。下界に膨大な神力が流れ込むと歪みが生まれ、それが時として異常気象の原因にもなるし、他の空間と繋がってしまってトラブルになる事もある。神降ろしは術者の魔力で神力の代用をするとはいえ、多少神の残滓が残るみたいなんだよ。しかも、あの時神降ろしをしたのは一柱じゃなくて三柱だ。世界に多大な負荷がかかっていてもおかしくない。その影響が出始めた、ってだけだろうさ」

「……………………なるほど」


 知りたくなかった事実を知ってしまった。

 これで嘘を見破る魔法や魔道具の前で原因を知らないか聞かれたら知っていると答えるしかなくなってしまったじゃん。


「知ったこっちゃないよ。お前が聞いてきたんだろ」

「いや、聞いてないから! 思っただけだから!」

「うるさいなぁ。……とにかく、加護をどう使おうがお前の好きにしろ。その後どうなろうとお前の責任で何とかしろよ」


 チャム様は言いたい事だけ言うと、僕を元の場所に戻したようだ。周りの喧騒と温もり、それから花のようないい匂いを感じた。

 目を開くと世界樹ファマリーが聳え立っていて、僕の周りには大勢のドライアドたちが密集していた。

 僕がそのまま体を倒して横になると、ドライアドたちが「日向ぼっこするの?」「ここはあんまりなところだよー」等と話し始めたけど放っておいた。

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