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後日譚477.事なかれ主義者は道を用意してもらった

「あ! 人間さん、もうお話は良いの?」

「終わったでござるか?」

「終わったわけじゃないけど、とりあえず見て回ろうかなって」


 正面玄関から出るとすぐにドライアドたちに囲まれた。その多くが褐色肌の子たちだったけど、すぐに話しかけてきたのは肌が白い子と小柄な子だった。

 レモンちゃんはというと真っ先に体によじ登って肩の上を占拠しているし、褐色肌の子たちは誰が引っ付くかで話し合いをしている様だったけど、僕の言葉を聞いてバッとこちらを見た。


「人間さんどこかに行くの?」

「探検するの~?」

「冒険かも!」

「いや、ただ町の様子を見て回るだけだよ。……そういえばここら辺はドライアドの中でも君たちの方が詳しいよね? ちょっと案内についてきてもらえる? 気になった事があったら聞きたいし」

「「「い~よ~」」」


 先程まで揉めていた事なんて忘れて仲良く返事をした褐色肌の子たちのなかで、一番小さい子が僕の体に引っ付いた。来る時とは違うけど、こっちに遊びに来ていたのだろう。


「それじゃあ行きましょうか。プランプトン侯爵、案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「もちろんですとも。まずこの敷地内からでいいですかな?」

「この敷地内の惨――いえ、状況は十分理解しましたので結構です。とりあえず正面から外に出たいんですけど……どっちの方向ですか?」

「あちらになりますが、御覧の通りのありさまで、迂回しながら進む事になりますな」

「なるほど。……一応聞くけど、向こうの方に進みたいんだけど道を作ってくれないかな?」

「駄目だよ、人間さん。ここは私たちが自由にしていいって言われてるんだから」

「そーそー」

「自由にしていいんだったら道を作ってくれてもいいんじゃないかな? 歩き辛いし」

「それなら私たちが運んであげる~」

「持ち上げるのは駄目って話はしたよね?」

「そうだった」

「そんな事言われてたねぇ」

「じゃあ通り道つくる?」

「人間さんは『ばしゃ』に乗るから私たちが通れる道じゃ狭いもんね」


 どこからともなく現れていた褐色肌の子たちが元々僕の周りにいた褐色肌の子たちに合流して話し合いを始めた。


「……個の概念が無くて記憶が集団で共有されるのならああやって話し合う必要はあるのかな」

「同じ出身の子でも好きな作物が違うので、個の概念が希薄なだけで意識自体は一人一人別れているんだと思います。だからああやって話し合う事に意味はあるんじゃないでしょうか」

「なるほどなぁ」


 何か言いたげなプランプトン侯爵は手で制してドライアドたちの話し合いの様子を見守っていたら、彼女たちの中で答えが出たのかこちらを一斉に見た。


「真っすぐ向こうに道を作ればいいの?」

「幅はこのくらい?」

「草は何も生えてない方が良いの~?」


 一斉に話し始めたドライアドたちに対してそれぞれ返答すると、ドライアドたちは納得した様子で進行方向を見た。そして、一斉に動き出した。散り散りになったのはなぜだろうか、と思ったけれど、どうやらスペースを空けるためのようだ。そこかしこで植物が急成長したかと思ったら一気に枯れ始めるのがちらほらと見えた。

 それは正面の門がある方向に鬱蒼と茂っていた草木も同様で、間引かれた後に残った草木はドライアドたちの魔法によって土ごと移動させられた。

 そうなると凸凹の道ができるのだが、移動させられた草木を植える時に邪魔になった元々あった土を入れ替える形で穴の中に入れていった。

 そうして作られたのが地面がむき出しになっている一本道だった。


「こんなあっさり……」


 ポーカーフェイスが僕よりも上手なプランプトン侯爵が驚いた様子でその光景を見ていた。

 植物を育てたり動かしたりする魔法は初めて見るとやっぱり驚くよなぁ、なんて事を思いながらラピスさんと護衛のジュリウス、それから案内する気満々の褐色肌のドライアドたちを引き連れて遠くに見える門に向かって歩くのだった。

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