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後日譚459.事なかれ主義者はサクッと終わらせた

 あっという間に時間が過ぎて行き、二月になった。

 時の流れも早いけど、子どもたちの成長も早い。これは毎日家にいて、成長を見守る必要がある。だから仕事はほどほどにこなして、日中の残りの時間のほとんどは子どもたちと遊んだり面倒を見たりして過ごしていた。


「シズトは今日、どこに行くのですわ?」


 いつも通りのんびりとレモンのマーマレードをたっぷりと塗られたパンをかじっているとレヴィさんがいつも通り今日の行き先を聞いてきた。


「カラバを経由してアドヴァン大陸にある国の内の一つに手加護を使いに行く予定だったはずだよ。レヴィさんはいつも通り畑仕事?」

「残念ながら今日は王城に行く予定なのですわ。今後の事で話をしたい、って珍しく呼び出されたのですわ」

「呼び出された? ……それは確かに珍しいね。っていうか、僕が知ってる限りだと初めてな気がする」

「シズトが不在の時に急用で呼び出されたりしているのですわ。今回もそれだと思うのですけれど、大した事はないと思うのですわ」


 それならいいのかな。……いや、普通にスルーしそうになったけど、服装はそれでいいのかな。いつものオーバーオールで流石に王城を闊歩する事はないと思いたいけど、今のレヴィさんなら普通にやりそうな気がする。

 チラッとセシリアさんを見ると、彼女は肩を竦めるだけだった。どうやら諦めているらしい。

 そんな僕たちのやり取りを気にした様子もなく、レヴィさんは隣を見た。


「私なんかよりもラオとルウは大丈夫なのですわ? 今日から本格的にギルドマスターの仕事ですわ?」

「あー、まあ、なんとかなるだろ」

「ベラちゃんがドランに帰るのを見送るのがメインだから大した仕事はないの。今日の日常業務に関してはクルスくんが頑張ってくれるし」


 ああ、あの真面目そうなお兄さんか。じゃあ大丈夫か。

 イザベラさんが結婚を機にドランに帰る事になってしまったので今後の事がちょっと心配だったけど、細かいところまで気が利くあのクルスさんならきっと大丈夫だろう。

 しばらくの間は胃が痛い事が続くかもしれないから差し入れも何か考えておいた方が良いかな、なんて事を考えていたらラオさんにジト目で見られていたので、手近にあった野菜サラダを頬張った。


「それよりもシズトの方がアタシは心配だな」

「護衛はジュリウスがいるから大丈夫だよ。安心して外で仕事してきていいよ」

「そこはなんも心配してねぇよ。お前が無自覚にやらかさないかが心配って言ってんだ。ジュリウスなんてシズトに甘すぎるからなぁ」

「でもシンシーラちゃんにストッパー役をお願いするのは難しいでしょ?」

「まあ、否定はしないじゃん」

「パメラが止めるデス!」

「むしろ悪化しそうだからなにもすんな」


 パメラには申し訳ないけど、僕もパメラの事を信じて行動するのはちょっと不安だ。だからと言って、ジュリウスに「駄目な事をしていたら止めてね」とお願いしてもきっと「駄目な事なんて一つもありませんから止めませんでした」とか言いそうだからラオさんの懸念ももっともだ。


「イマジナリーラオさんに聞いてから行動する事を心掛けるよ」


 極力ね。

 心の中で呟いた言葉はレヴィさんにしか届いてないはずだけど、ラオさん以外の多くのお嫁さんたちが心配そうに見てきたのはなんでかな。




 アドヴァン大陸に転移した後、すぐに先行させていた魔動車に設置していた転移陣を使って目的地へと移動した。

 領主っぽい人と軽く挨拶を交わし、酷い日照りに襲われている領地一帯に向けて『天気祈願』をした。


「四柱の教会をしっかりと建ててくださいね」

「もちろんです!」


 すぐさま小雨が降った事で『天気祈願』の力をしっかりと把握した領主はとても協力的になった。協力的になりすぎて「食事でもしながらお話を聞かせてください。自慢の娘も同席させますので色々聞かせてもらえると嬉しいです」とかなんとか言ってきたので逃げるように立ち去ったけど、問題はないだろう。


「ね、ジュリウス」

「はい、何も問題ございません。このまましばらく進んだところでジュリエッタと操縦を代わります。シズト様はその間に私と共にカラバへ戻る、という流れでよろしいでしょうか」

「いいんじゃないかな。レモンちゃんたちもそれでいいよね」

「レーモー」

「問題なーし」

「なしでござる」

「なし……そういえば、梨はもうすぐ収穫できるよ!」

「レモンも―」


 車内でわちゃわちゃと自由に過ごしていたレモンちゃんたちがさらに賑やかにお喋りをし始めた。しばらくの間、収拾がつかなくなるくらい賑やかだった彼女たちだったが、転移陣を使ってカラバの根元に転移すると僕の体に引っ付いて息を殺すレベルで静かになった。どうやらカラバの根元で過ごしているドライアドたちと魔物に配慮しているようだ。

 静かにさせたいときはこの木の所に連れてくるのもありかもしれないな、なんて事を考えながらファマリーの根元に繋がる転移陣に乗り、ジュリウスとドライアドたちと一緒に再び転移するのだった。

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