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後日譚457.若き女王は報告を受けた

 ディアーヌを連れたランチェッタは、いくつか転移陣を経由してタルガリア大陸の最南端に位置する国オールダムにやってきていた。出迎えたのはオールダムの民主化を推し進めている佐藤学と数人の議員たちだった。


「ランチェッタ女王陛下、本日は遠い所からわざわざお越しいただきありがとうございます。本日、仲介役をさせていただきますマナブです。よろしくお願いします」

「ちゃんと貴方の事は覚えているわ。また貴方たちの世界の話を聞かせて頂戴。……ただ、やるべき事が終わったら、ですけど」

「もちろんです。定刻には少し早いですが、部屋はすでに用意してありますのでそちらでお待ちください」

「分かったわ。そこでゆっくりと過ごさせてもらうわ」


 用意されていた馬車に乗り込み、迎賓館へと移動したランチェッタは、若い侍女の案内で部屋に通された。ついつい自国の応接室や、屋敷の調度品と比べてしまいがちなランチェッタだったが、いくつかジッと観察するくらい見事な品が部屋の中に紛れ込んでいた。


「ランチェッタ様、バーナンドが来たようです」

「通して頂戴」


 ディアーヌが一礼して扉の方へと向かう。ランチェッタは用意されていた椅子の一つに腰かけると丸眼鏡を外して首から提げた。ネックレスのように首から提げられるように紐で固定されているので落ちる事も無くす事もない。

 ランチェッタが身だしなみを整えたところでディアーヌが扉を開け、外で待機していた褐色肌の男を招き入れた。

 蓄えられた髭が特長的なその人物はトレードマークの内の一つである帽子は流石に身につけておらず、片手で持っていた。

 ランチェッタの正面に立った褐色肌の男、バーナンドは膝を折って頭を垂れた。


「こうして直接会うのは久しぶりね、バーナンド。息災だったかしら?」

「船員一同、元気が有り余っております。それもこれも、シズ……王配殿が作った品々のおかげです。特に魔動船に関しては新たにオールダムにやってきた外交使節団の方々の関心を集めているようです」

「そう。トラブルは起きてないかしら?」

「起きてはいますが、その度に船の護衛としてつけてもらっているエルフの方々に対応してもらっているようです」

「それならよかったわ。…………喋り辛いなら敬語を止めてもいいわよ?」

「ん? そうか? それならお言葉に甘えてそうさせてもらおうか」


 先程まで丁寧な言葉遣いをとても意識していたからかゆっくりとした話し方だったが、少し早口になり、声はとても大きくなった。船の上で指示をする事が多いからか船員も船長も声が大きい事が多いため慣れていたランチェッタは気にした様子もなく最近のオールダムの様子について話すように促した。


「報告した通りなんだが…………まずはこの大陸で大国と呼ばれているダンジョンと隣接している国の内、二ヵ国から使節団がこの首都にやってきてる。情報を集めるためみたいで、いろんな奴らに話を聞いて回っている様だぞ」

「彼らから接触は?」

「当然あった。が、今のところはこちらに敵対しないようにするためか昼間に来て話をするくらいだな。話の内容も大した事なくて、普通に商品の売り込みと珍しいものがないか聞いてくるくらいだそうだ。アドヴァン大陸での事はこちら側にも伝わっているんだろうな。それに、エルフの力はこの大陸でも十分証明されているのもあると思う」

「そう。無用な争いが起きないのならそれに越した事はないわね。他には何かあったかしら?」

「新しくやってきたアールスターやクレティア王国に限った話じゃないが、船でシグニール大陸まで運んでほしいって言う話がちょくちょくあるな。『転移陣』じゃなくて『魔動船』の利用に関しては女王陛下の判断次第だから保留にしてある」

「……金額次第ね。人数も交渉次第だけど、船の管理者として何人までならいいと思う?」

「今、申し出があるのはこの大陸で交流があるすべての国。それらすべてを平等に受け入れるのならば三人くらいまでだな。載せるだけなら何人でも行けるが、船員の安全を考えるのならそれが限度だ」

「そう。それを念頭に話を進めることにするわ。他に何か今すぐにわたくしが聞いておくべき事はあるかしら?」

「いや、後は帰ってからで十分な事ばかりだ」

「それならもう仕事に戻っていいわ」


 バーナンドが部屋から出て行く。それからしばらくの間、ランチェッタは腕を組んで何も言わなかった。

 ディアーヌはランチェッタが考え事に集中できるようにただ黙ってその様子を見ていたのだが、部屋の外の気配を感じ取って再び扉の方へと向かった。


「ランチェッタ様。会談の準備が整ったようです」

「早かったわね」


 学たちからも様子を聞きたかったランチェッタだったが、一先ず会談会場へと移動するため立ち上がるのだった。

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