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後日譚454.自称お姉ちゃんたちは見慣れている

 ファマリアのギルドマスター用に設けられた部屋で、ラオとルウは大きなソファーに並んで座っていた。

 ふかふかのそのソファーに座っても、家にある物の方が良い物ね、なんて事を思うくらいには高級家具に慣れてしまった事を自覚して苦笑を浮かべたルウの正面には、彼女たちの元パーティーメンバーであり、ファマリアにある冒険者ギルドのギルドマスターをしているイザベラが座っていた。

 銀色の髪にツリ目がちな赤い目を持つ彼女は、人族の女性の中では平均的な身長なのだが、彼女のすぐ後ろに控えている大男や、ラオ、ルウに囲まれると小さく見える。

 また、手土産として渡された焼き菓子を齧っている様子も相まって小動物のような印象を室内にいた者に与えていた。

 そんなイザベラだったが、焼き菓子を一通り食べ終わり、紅茶を飲み干してから口を開いた。


「……これ、どこの店の物なの?」 

「売り物じゃないわ。オクタビアちゃんが作ってくれたのよ」

「エンジェリアの皇帝陛下がお作りになったものが手土産って……」

「私もちゃんと手伝ったのよ?」

「どうせ味見とかでしょ」

「そんなことないわよ。ちゃんと生地を作るのにだって協力したんだから」

「あのルウが菓子を作ってちゃんと食える物ができるなんてなぁ」

「最近は割と食える物が多いぞ」

「二人ともうるさいわよ! それで? 今日呼び出したのはどういう理由なの?」

「どうもこうも、大体想像できてるでしょ?」


 イザベラが首を傾げ、二人を意味ありげに見ると、ラオとルウはそれぞれボビーとイザベラの手元を見た。

 二人の手には揃いの指輪が嵌められていた。


「やっと結婚したの!?」

「やっとは余計よ。ただまあ、そういう事になるわね」

「無事にくっついたようで安心したわ! ボビーくんも頑張ったわね! 言ってくれたらお祝いの品も用意したのに……」

「イザベラに口止めされててな。年末年始は忙しそうだから黙っていよう、ってな」

「それでよく黙ってられたな」

「もし話したら白紙に戻すなんて言われたら黙るしかないだろう?」

「なるほどな」

「良かったわね、ベラちゃん。ボビーくんを静かにさせるとっておきが手に入って」

「流石に多用しないでもらいたいんだがなぁ」

「貴方の口がもうちょっと固くなったらそんな事する必要もなくなるのよ?」

「無理だな」


 深いため息を吐くイザベラの隣でボビーが上機嫌に笑っている。

 そんな二人を心底嬉しそうに見ていたルウだったが、隣でラオが考え込んでいる様子になったのが気になってそちらを見た。


「あとはクルスか」

「ん? 知らんのか。クルスは俺たちよりも少し早く結婚したぞ」

「そうなの!? 全然知らなかったわ!」

「俺も知ったのはつい最近だったんだが、イザベラは事前に聞いてたみたいでなぁ。俺に教えてくれても良かったのに……」

「歩く魔動拡声器のような貴方に話したらあっという間に王国全土に伝わるじゃない」


 イザベラが呆れた様子でボビーを見上げたが、彼は「いやぁ、それほどでもないぞ?」なんて言いながら照れている。


「褒めてないわよ。……まあ、そういう訳でギルドマスターである私と、副ギルドマスターであるクルスが大体同時期に結婚する事になったのよ。クルスの方はお嫁さんが解放された奴隷の一人だから解放区で一緒に生活する事になるみたいだけど、私たちはドランの方に家を建てようかって言う話になっててね。それで相談のために来てもらったの」

「お金が必要なの? それなりにお給金は貰っているでしょ?」

「ええ。だからそっちは問題ないわ。どちらかというと、私の後任が問題なのよ」

「ここで働き続けないの?」

「毎日ドランからここに通うのは現実的じゃないわ。だからドランで再びギルドマスターをするって言う話になっているの。まあ、転移陣を使わせてもらえるのなら話は変わってくるけどね」

「なるほど。転移陣を使わせてもらえるように口添えをしてほしいって事ね!」

「そうじゃないわ」

「……アタシかルウのどっちかに後任のギルドマスターになれってか?」

「そういう事。ただ、正確には両方に、だけどね。ギルドの規定の中に特例事項があって、そのうちの一つを利用するつもりよ。あなたたちには共同でこのファマリアの地のギルドマスターになって欲しいの。ここが特殊な街って言うのはあなたたちが一番よく分かってるでしょ?」

「まあ、そうだけどよ。それなら猶更経験豊富な奴に来てもらった方が良いんじゃねぇのか? アタシらだと実力不足だろうし……」

「十分足りていると思うし、なにより今も部屋の外であなたたちを警護しているエルフたちがいればどうとでもなるでしょ」

「依頼が受けにくくなるのは仕方ないとしても、子どもたちとの時間が減るのは嫌なんだけど……」

「それに一応シズトの護衛の事もあるな」

「だからあなたたち二人にお願いしているのよ。日中、交代で対応すればある程度何とかなるでしょ? 細かい所はこれから詰めていくとして……引き受けてくれるかしら?」


 イザベラの問いにしばらくの間、二人とも真剣に考えこんだが、シズトからの護衛依頼の事もあるためこの場では決められない、という事で保留になった。

 その後はすぐに話が変わり、結婚生活や、結婚式をどうするかなどの話題になったのだが、それまで静かに待っていたボビーがペラペラと余計な事まで話すため、イザベラによって何度か氷漬けにされるのを見る事になるのだった。

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