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後日譚438.事なかれ主義者は持ち上げられた

 自由散策の時間の間にドライアドたちの対応についてどうするか考えたかったけれど、リリス様は散策に行く様子もなく、あれこれ話しかけてきたので結局考える事が出来なかった。


「えっと、リリス様? そろそろお昼時になりますし、どこかで食事でも食べませんか?」

「あら、もうそんな時間ですか。シズト様とお話するのが楽しくて気が付かなかったわ。シズト様は昼食はどうされるんですか?」


 食事の提案をした陽太ではなく、なぜ僕に話を振るのか……理由は分かってるけど、そろそろお腹が鳴りそうなので話を切り上げるタイミングを窺っていたのでそれに乗る事にした。


「今日は町で食べると嫁たちに言っているので適当に済ませようと思ってます」

「そうなんですね。私もご一緒してもよろしいでしょうか?」

「んー……他の外交官の方々の事も考えると別々の方が良いんじゃないかと」

「シズト様と一緒に食事をしたいと考えている方でしたら町を見に行かずに教会に残ったと思いますし、気にされなくていいと思いますよ」


 そうなのかなぁ。どうなんだろうなぁ、なんて考えこんでいると放置されていた陽太がまたリリス様にアプローチを始めた。僕がいる手前、完全に無視する事も出来ないのかもしれない。リリス様は素っ気ない態度で陽太の提案をバッサリと切り捨てていた。

 それでもなお言い募る陽太に、冷たい視線を向けたリリス様は「はっきりと言わないと分からないようね」とため息交じりに呟いた。


「今回はあなたとの関係を深めるために来たわけじゃないわ。それに、あなたの目的はどう頑張っても達成する事は無理よ。私は剣の神から加護を授かっている貴方の側室になる事もないし、貴方が婿入りする場合は今ついている余計な紐を排除する必要があるけれど、女性を侍らせたい貴方にそれが許容できるのかしら?」


 余計な紐って今の正室や側室の方々の事だろうか?

 未だに増え続けている側室の方々の素性について陽太がなんか自慢してきた気がするけど、全部聞き流してて覚えてないや。

 ただ、その中には当然のように他国の姫君や御令嬢もいて、いわゆる紐がついている状態なんだろう。

 陽太が婿入りするとなるとその人たちも当然ついて行く事になるわけで、レビヤタンからしてみると密偵が大量に入ってくるような物なのかもしれない。

 王女ともなるとそうなると分かっていて陽太の妻になる、なんて事はあり得ないんだろうなぁ。

 はっきりと明言されたら流石の陽太も黙った。彼の近くにいた明はやれやれ、と言った感じで首を横に振っている。ストッパーとして最低限しか機能してなかったんだけど、しっかりやる事やってくれないかなぁ、という僕の想いが彼に伝わったか分からないけど、陽太を連れて少し離れて行った。


「……さて、シズト様」

「はい?」

「お食事はどこでされる予定ですか?」

「特に決めてないですね。ただ、集合時間までそこまで時間がないので適当に近場で済まそうと思っていますが」

「レモンモれもも!」

「なんて?」

「レモンを食べて! だそうです」


 なるほど、と思っていると先程まで静かになっていた服にしがみ付いているドライアドたちも一斉に話し始めた。


「そーそー。美味しいのできてるんだよ~」

「いろんなの作ったの~」

「はっぱもあるよ~」

「レモンもれもも!」

「間食として食べるのなら君たちの育てたやつでもいいけどさ、しっかりとした昼食を食べるのならやっぱりお店に行きたいかな」


 ドライアドたちのブーイングをスルーして、ここで話をしていても時間が過ぎて行くだけだからと通りに出た。当然の様にリリス様はついて来たし、陽太と明も少し離れた所からついて来ている。陽太はすっかりやる気がなくなったのかつまらなさそうにしていた。


「……そういえば、毒見役もいませんけど食事をとって大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。毒には耐性がありますので」


 ……それは大丈夫なのかな。

 とりあえずこちらで毒見役を用意して対応する事にしようか、なんて事を考えていたら足が地面から離れた。


「れもも、れ~も!」

「「「いっちに、いっちに、いっちに」」」

「って、ちょっとなにやってんの!?」

「ご飯の所までごあんな~い」

「ここのエルフさんたち、食べてくれないからねぇ」

「食べられる時に食べないとねー」

「れっもも、れっもも」

「…………はぁ。こうなったらもう無理だね。ジュリウス」

「バーベキューの準備ですね。すぐに手配します」

「よろしく」


 僕がそういうと、ジュリウスが目配せをしただけで数人のエルフがどこかに跳んでいった。

 その様子を見ながら僕はレモンちゃんの掛け声と共にせっせと運ぶドライアドたちにされるがまま動かされるのだった。

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