表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1247/1273

後日譚435.事なかれ主義者は案内する事を優先した

 タルガリア大陸の一部の国々を招いて行ったファマリアツアーの一日目は無事に終える事が出来た。

 全体に対する案内を行う時以外はマナブさんたちに対応を任せて僕は離れていたけれど、僕の目が届かない所でも大きな問題を起こす人はいなかった。

 人族至上主義だったり、他の宗教を認めていない一神教の国の人たちが参加しているので何かしら起こるんじゃないか、と思っていたけれど、異種族を見ても嫌悪感を表に出す事はなかったらしいし、町の所々にある四柱の像や僕の像を見ても騒ぐ事はなかったそうだ。

 ただ、全く何もなかったというわけではなく、小さなトラブルは多少あった。


「今日も陽太は参加するつもりなの?」

「当たり前だろ」

「そう。……まあ、陽太の意図は分かったから止めないけど、あんまり言いすぎると反感を買うから気を付けてね」

「わーってるよ」


 不満層に視線を逸らした陽太は昨日、リリス様に僕よりも自分の方が良いというアピールをし続けていたらしい。その方法が僕を下げるような発言を繰り返す事だったそうで、陽太たちの周りにいた通行人や警備のエルフたちからは冷ややかな視線を向けられていたそうだ。

 それだけならよかったんだけど、町の子たちが営んでいる屋台ではリリス様も含めて冷たい対応をされたそうだ。流石に他所から来ている貴族様にその様な対応はまずい、という事で報告があった。

 ランチェッタ様曰く「場所が場所なら不敬罪で首が飛ぶところだわ」と言っていた。しっかりと再研修を受けてどんな相手でも最低限の対応ができるようになってもらわないといけない。それに、この町で暮らす事たちの価値観が普通と少しずれてしまっているような気もするし、そこら辺も修正していかないと……って、今考える事じゃないな。

 僕の目の前には貴族御用達の高級宿から出てきた外交官たちと、彼らの案内役として協力してくれるマナブさんたちがいた。彼らは僕の視線に気が付くと話を止めて真っすぐにこっちを見てきた。


「それじゃあファマリアの案内をしていきますね」

「その前に一つよろしいでしょうか?」

「なんでしょうか?」

「……その、ドライアドでしたっけ? 彼女たちが引っ付いていますが、いいんですか?」

「この服着るとだいたい引っ付くんですよ」

「探検!」

「お散歩!」

「暇つぶしです」

「レモーン!」


 自分たちの話になったと察したドライアドたちが一気に話し始めた。賑やかというより喧しいからか、先程から通行人の視線が僕に集まっている。

 案内をする前に『天気祈願』の依頼をこなしておこうと正装に身を包んだのが良くなかったな。最近は僕の事がどこの大陸でも認知されているのでこの服は今後は着ない方が良いかもしれない。


「皆さんの邪魔にならないようにはさせますのでお気になさらず」

「……分かりました」


 ジーランディーの外交官さんは納得して頂けたようだ。他の外交官ほどドライアドとの接点がないから気になっただけなのだろう。ドライアドではなく僕に視線を戻した。


「最初にご案内するのは、皆さんにお泊りになってもらった宿があるここ、南区です。通称『行政区』とも呼ばれていて、ドランから派遣されている軍隊の屯所や、迎賓館、それから行事の時に使う円形闘技場があります。また、既に泊まって頂きましたが王侯貴族をもてなす事ができる宿も揃えています。行政区は貴族や商人の対応をする事が多いので、最低限の礼儀作法を身につけている子のみこの区画で働く事が許されています。町の子たちの中でも優秀な子が揃っているんです」

「人族の国では奴隷にも教育をしっかりとなさっているんですね」

「……いや、アールテアではその様な事はしていないな。例え人族の奴隷だったとしても、奴隷は奴隷だ。言われた事をできればそれでいい。そう思ってたんだが……」


 感心したように呟いたのはジーランディーの外交官さんだ。そして、すぐに彼女の言葉に反応したのはアールテアの外交官さんだ。ルカソンヌ王国の人と話す時以外は普通の人なんだよなぁ。

 そんな事を考えていると、そのルカソンヌ王国から来た外交官さんが二人の会話に混じった。


「この街を見ていると奴隷に技術や知識を与えるのも悪くはないのかもしれないと思えてくるから不思議ですね。ルカソンヌでは最低限の剣術は身につけさせていますが、それ以上の戦闘技術は教えていません。ただ、ここではそれ相応の実力者がそこそこいるようですし、我々も見習うべきかもしれません」


 考え込んでいる最中はルカソンヌ王国とアールテアの外交官はいがみ合う事はないのかもしれない。そのままずっと考えこんでいてくれればトラブルも起きないんだろうけどなぁ。


「ルフラビアでも同様の取り組みをした方がいいでしょうか?」

「それは私の判断で決められる事じゃないわ。奴隷にしっかりと教育をするのは良い事ばかりじゃないでしょうしね。国単位で行うのであれば、そこら辺も含めて検討し、話し合う必要があるわ」


 ルフラビアの外交官さんとリリス様の話はちょっと気になるけど、今は案内をする事が優先だ。

 ドライアドたちがしびれを切らして何かしでかす前にサクサク説明していこう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ