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後日譚428.事なかれ主義者は申し込まれなかった

 今のお嫁さんたちとの夜の生活的にも、今後も増えていくであろう子どもたちの事を考えてもこれ以上お嫁さんを増やすのは避けたい。

 いくらチャム様が信仰を広める事をあまり気にしていないと言っても、加護を授かっているのだから繋がりを作るために政略結婚は選択肢の一つとしてある、という事をリヴァイさんたちやランチェッタさんから懇々と言われていたとしても慣れないものは仕方がない。

 そう開き直って言外に『これだけたくさんお嫁さんがいるんでそういうのは無しにしてほしいな』とアピールしてみたけれど、リリスさんは気にした様子もなく僕たちと話をするためにマナブさんと一緒に輪に入ってきた。


「レビヤタンからだいぶ距離が離れているはずですけれど、どうやってここまで来たのですわ? 転移魔法ですわ?」

「流石に宮廷魔術師だとしても、ここまで転移する程の魔力を持っている者はいないです。ただ、我が国は数多くのドラゴンを戦力として抱えています。その内の一頭に乗ってやってきました」

「私の出身国であるドラゴニアと似ているのですわ。ドラゴニアもドラゴンを軍事的に活用しているのですわ」

「やはり卵から育てているんですか?」

「基本はそうなのですわ。そちらも同様なのですわ?」

「そうですね。今回乗ってきた子のように例外はありますが、大体卵から孵った子を丹精込めて育てています。金も時間もいろいろかかるから維持が大変ですよね。ドラゴニアではどのように資金を賄っているんですか?」

「ダンジョンですわ。タルガリア大陸のように大きなダンジョンがあるわけじゃないですけれど、数多くのダンジョンを擁するダンジョン国家なのですわ」


 お嫁さんたちとそれぞれ挨拶を交わしたリリスさんは先程からずっとレヴィさんと話をしている。僕にああいう話は無理なのでレモンちゃんと一緒に大人しく料理を食べていた。


「レモンちゃんレモンちゃん、レモン汁をかけるのは良いけど、大皿に直でやるのは戦争が起きてもおかしくないからやめよ?」

「れも?」

「ほら、僕のお皿のにかければいいからさ」

「レモ~ン」


 何のお肉か分からないけど、きっと鳥系の魔物の肉なんだろうな。

 なんて事を考えながらレモンがかけられた唐揚げをもぐもぐと食べながら再びリリスさんに視線を戻したら今度はランチェッタさんが話しかけていた。

 話はレヴィさんやランチェッタさん、オクタビアさんに任せておけばいいかな、なんて事を考えながらレモンちゃんが髪の毛を伸ばして大皿に盛りつけられている唐揚げの山にレモンを近づけようとするのを阻止していると、声を掛けられた。


「あの、シズト様?」

「はい? なんでしょうか?」

「その、お話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「あ、はい。大丈夫です。レモンちゃん、お澄まし」

「れも!」

「これで良し。それで、お話とは何でしょうか?」

「大した話ではないのですが……その前に、そちらの方は先程『やだ!』と仰ってましたが放っておいて大丈夫なんですか?」

「え? って、ダメだってば!」


 リリスさんの視線を追っていくとレモンちゃんが顔はお澄ましのまま気づかれないように足元から机の下を通して向こう側まで伸ばした髪の毛を器用に操ってレモンを絞ろうとしている所だった。

 止めようとしたときには時すでに遅く、唐揚げの山のてっぺんからレモン汁がかけられてしまったので、レモンちゃんを小脇に抱えて確保した後は唐揚げの処理をする事になった。

 一部始終を見ていたマナブさんだけではなく、リリスさんも手伝ってくれたので見る見るうちに唐揚げがなくなっていく。


「……たくさんお食べになるんですね」

「これでも兵士ですから。たくさん食べる女性は嫌いですか?」

「いや、嫌いじゃないですけど……」

「そうですか。それは良かったです」


 何が良かったのかは聞かないでおこう。

 それよりも、彼女のお話の前に気になった事を聞いておこう。


「お話の前に、聞きたい事があるんですけどいいですか?」

「構いませんよ。何をお聞きになりたいのですか?」


 首を傾げた彼女の頭の動きに合わせて後ろで結われた黒髪が揺れた。

 首から下の露出が結構あるのでそちらの方に視線を向けないように気を付けつつ、レモンちゃんを持ち上げる。


「この子の言った事、分かったんですか?」

「れもも?」

「ええ。私の加護はざっくり言うと知性のあるものであればだれとでも会話ができるようになる加護ですから。気性の荒いドラゴンでさえ心を通わせ、竜騎士をする事ができるのもそれが理由です」

「へー」

「れもれも~」

「そういう訳ですので、何かシズト様にお伝えしたい事がありましたら私から伝えますが、何かありますか? えっと……」

「レモンれも!」

「そうですか。では私もレモンちゃんとお呼びしますね」

「もん」

「それで、何か伝えたい事はありますか?」

「れもー……レモ!」

「そうですか。ではまた何か思いついたら仰ってくださいね」

「もん」


 レモンちゃんと喋る時はレモンちゃん語にならないんだ、なんてどうでもいい事を考えながらレモンちゃんとリリスさんの会話を見ていたら話が終わったようだ。

 そうなると当然、リリスさんのお話になるわけど、彼女の話は彼女自身についての事や僕についての質問があっただけで特に婚約を、とかそういう話は出なかった。

 事前にアピールした成果かな。


「彼女の一存だけで決められるような事じゃないだけだと思うのですわ」

「……そうっすか」

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