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後日譚422.事なかれ主義者は放っておくことにした

「今回参加するのは四ヵ国の予定です。元々外交官がいるアールテア、ルカソンヌ王国、ルフラビアに加えて、海の国からジーランディーの方がいらっしゃいます」

「ジーランディーって事は魚人って事? 陸上でも大丈夫なの?」


 こっちの世界の多くの魚人は人間に近い見た目をしている事が多いらしいけど、それでもあまり陸上で活動をしている人がいないという事は何かしら理由があるんじゃないだろうか?


「今回いらっしゃる方は問題ないらしいです。ただ、魚人たちと交流をよくしている方々の話では本調子ではないだろうとの事でした。今後の事を考えて、水路を作り、屋内プールがあるような感じの建物を作ってもいいんじゃないか、という話が出ています」

「魚人が通れるほどの広さの水路ともなると誰かが落ちたりしないかしら?」

「その点も踏まえて審議中です。ガレオールではそういう水路は作られてますか?」

「首都などの大きな街であれば海へと繋がっている水路はいくつかあるし、荷物を運ぶためにも広めに作ってあるけれど街の中枢までは防衛上の観点から繋げてないみたいよ。今はエルフの国が後ろに控えているのが分かっているから余計な事を考えないでしょうけど、人が通れるって事は敵も通行できるって事だからすぐに封鎖できる備えもいくつか用意してあるわ」

「やはり利便性だけで軽率に水路を街中につなげるのは危険ですか。国会で話し合いをしている際にもそう主張する者たちが一定数いました。ジーランディーとは友好的な関係を築けていますが、敵は彼らだけではないし、今の関係が未来永劫続くとも限らないので警備を彼らに任せる訳にもいかないとの事なので……」


 なんだか僕には関係のない話になってきたな。他の勇者に話を振るべきかな? でも遠いしな。

 そんな事をもぐもぐとお米を咀嚼しながら考えていると、勢いよく扉が開かれた。

 現れたのはきちんとスーツを着た陽太だった。


「その金髪とスーツが全然あってないんだけど、その色やめないの? 魔道具で変えてるだけでしょ?」

「開口一番それかよ」


 陽太に主導権を渡したら面倒そうなんだもん、という言葉は飲み込んで「身分の高い人たちが出席するパーティーなんだから身だしなみについて指摘するのは当然でしょ」と返した。


「周りがあり得ねぇ髪色の奴らばっかだから元の世界から来た奴じゃなけりゃ気にもしねぇよ」

「あ、そう。っていうか、陽太も朝ご飯に呼んだの?」

「いえ、招待をした覚えはないんですが……」

「別にいいだろ、顔見せるくらい。用意された部屋には誰もいねぇしよ」

「一緒に来られた奥方様たちはどうされたんですか?」

「それぞれの国の外交官に挨拶しに行ったっきり戻って来ねぇんだよ」

「だからってこっちに来ないでよ。大事な話をしてたらどうするのさ」

「別に問題ねぇだろ、身内みたいなもんだし」

「いや、全然身内じゃないよ。他人だよ」

「マナブたちに向けて言ったんだよ! っていうか、他人ではねぇだろ!」

「ああ、そうだね。元クラスメイトだね」


 こっちでの陽太のふるまいを思い返すとあまり関係性を広めたくないんだよなぁ、同類と思われそうだし。かといって放置しすぎるとなんかやらかしてこっちに面倒事が来そうな予感がするし、明たちを見習ってつかず離れずの距離感を維持していきたい。


「それで、元クラスメイトの陽太は顔を見せにやってきたんだっけ? だったらもう顔は見たから部屋に戻っていいよ」

「んだよ。そんなに邪険にする事ねぇだろ」

「邪険にするよ。僕のお嫁さんたちに不躾な視線を向ける輩なんだから。誰彼構わず舐め回すように体を見ちゃいけないんだよ」

「うっせーな、わーってるよ」

「分かってるなら見るなって言ってんの」


 注意している今もいやらしい視線を胸が大きい人に向けている。誰彼構わずじゃなくて胸が大きい人だったわ。

 そんな事を考えていたら陽太はマナブさんの隣に椅子を持ってきて、そこに座った。どうやら居座るつもりのようだ。そこそこ大きな机なので人一人くらい座る余地がある場所は他にもあるけれどあそこに座ったのはきっと全員を見やすいからとかそんなんだろうな。


「俺にも飯をくれ。肉を多めにな」


 隣に座られたマナブさんは椅子を少し横に動かしてお互いの場所を確保していたけれど、陽太はそんな事は気にしない。部屋付きの侍女に料理をたくさん取らせて自分の前に所狭しと並べると食事を始めた。

 マナブさんが追い出さないのなら仕方ないか、と僕も諦めて食事をしながらマナブさんたちとの話を再開するのだった。

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