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後日譚408.元指揮官も相手を見つけたい

 クレストラ大陸にある各国の王たちが一堂に集結し開かれた『新年会』には当然、ヤマト・メグミの姿もあった。

 勇者の血を色濃く受け継いだ事を示す黒い髪は丁寧に結われ、足元がよく見えない程大きな胸をアピールするかのように胸元が大きく開いているドレスを着ている。女の色香に惹かれて多くの男性が――集まって来なかった。

 挨拶もそこそこに離れていくのは、過去の確執が主な原因であった。

 表立って嫌味を言われなくなったのは彼女がひたすら誠実に各国と関わろうとしたからだろうか。それともシズトがいるパーティーで悪目立ちをする事を恐れたからだろうか。考えても仕方がない事を何となく考えている所でシズトとその正室であるレヴィアのダンスが終わった。

 エルフの楽団が場所を開けたところに座ったのは最近国際的な影響力が増しているラグナクアからやってきた楽団だった。

 彼らが演奏を始めると、今まで見ていただけだった面々がパートナーを連れて部屋の中央に集まり踊り始めた。

 その様子を遠巻きに見ていたメグミに話しかけたのはヤマト・サトリだった。彼も正装を着て黒い髪をしっかりとセットしている。


「…………シズト様も踊りを続けるようですね」

「ランチェッタ様とは当然踊るだろうし、ジューン様とオクタビア様とも踊るだろう。……他の奥方様と踊るかどうかはお前の方が分かるんじゃないか?」

「いやぁ、これだけ大勢いて尚且つ此処まで離れていると流石に分からないっすわ」


 先程踊っていたレヴィアよりもさらに背丈が低いランチェッタと踊っているシズトの周りには当然のようにドライアドたちが自由気ままに踊っていて、さらにその周囲にエルフの男女がペアになって踊りつつシズトと他の者たちがぶつからないように場所のキープをしている様だった。


「シズト様狙いの御令嬢には今回は諦めてもらうしかないかもな」

「そうですね。……ていうか、他の人の心配をしている場合ですか? 踊る相手がいない女王陛下?」

「肩書が邪魔しているんだから仕方がないだろう。もしも私が女王でなければ国内の貴族に嫁入りしていただろうさ」

「そうよねぇ、女王っていう肩書はやっぱり邪魔よね」

「貴女はそうやって言い訳しているだけでしょ」

「あら、貴女だって公爵家当主だからと選り好みし過ぎた結果行き遅れてるじゃない」


 二人の会話に唐突に入ってきたのは近くで同じように踊っている者たちの様子を見ていた二人の女性だった。

 一人はメグミと同じくらい日本人の血が色濃く受け継がれているエリナベル・ラグナクアだ。黒い髪に黒い瞳の彼女はどこか幼さが残る顔立ちをしており、身体の凹凸もは殆どないが二十年ほど前に成人済みの女性である。

 もう一人は腰まである赤っぽい茶色の髪の女性である。エリナベルと対照的に女性らしい体つきをしていて、体のラインがはっきりわかるタイプのドレスを着ている彼女の名はレスティナ・マグナだ。

 二人ともと面識のあるメグミは新年の挨拶を済ませると、話の続きを促した。


「女王ともなると軽率にどこかの誰かと婚姻するなんてできないわよね。王位を誰かに継がせようとしても適任者がいないとどうしようもないし」

「そう、ですね」

「異大陸とも繋がったし出会いは山のようにあるでしょ」

「山のようにあるからこそ、簡単にどこかと繋がる事なんてできないのよ。一妻多夫なんて考えてないし。メグミ女王陛下もそうでしょう?」

「はい。相手は一人だけで十分だと思います。それに、お相手の方も選び放題という状況は同じなので……。わざわざ私を選ぶ方は少ないんじゃないかと」

「「…………」」


 自虐的な発言をしたら何とも気まずい空気が流れたが、サトリはいつの間にか気配を消して離れていたのでメグミは慌てた様子で話の流れを変えようとした。

 視線を彷徨わせてふと目に入ったのはランチェッタと踊り終えたかと思ったら次はジューンと踊り始めたシズトの姿だ。


「……シズト様に間に入ってもらうと上手くいくかもしれませんよね」

「それは……そうかもしれないけど、その様な事でお手を煩わせるわけにはいかないんじゃないかしら?」

「…………諸々の事を考えると頼み辛いですが、私たちだと一番可能性が高いのはその方法ですね。仲人になって頂ければそこでシズト様と繋がりが持てると考える方も一定数いるでしょうし」


 レスティナが腕を組みながらふと湧いた考えを検討し始めた。


「あまり交流のない異大陸との繋がりを持つ事もできるかもしれませんよね」


 メグミもまた、口から出てきた案を一考の余地があると考え、自然と腕を組んだ。

 二人とも豊満な胸の持ち主である。腕を組めば当然胸が強調された。それを見たエリナベルはふと腕組をしてみて胸元に視線を落としたのだが、すぐに腕組を止めるのだった。

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