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後日譚395.事なかれ主義者は過保護の自覚はある

 東の空からゆっくりと朝日が昇ってきて、延々と続いている不毛の大地を照らす。

 生者を求めてこちらに向かってやってくるアンデッド系の魔物がこちらにやってくるのが見えるが、外壁を越えてくるものは見当たらない。

 外壁の上にはたくさんの人がずらりと並んでいて、太陽の方を見ていた。


「去年のシズトの真似をしてるみたいですわ」

「外壁の上にいく許可を求められたのでシズト様の奴隷限定で許可を出しました、マスター」

「ホムラ、対応ありがとね。……なんでも真似しようとするから行動には気を付けないといけないね」

「行動が伴ってくれりゃアタシも少しは楽できるんだけどな」

「最近はラオさんの鉄拳を頭に落とされる事もなくなってきたでしょ?」

「あんまりゴチャゴチャ言っても仕方ねぇって諦めてんだよ」

「なん……だと……!?」


 常識が身について来たと思っていたらまだまだだったなんて……。いや、自覚してましたよ。ただのそういうノリなのでそんな呆れた目で見ないでください。

 太陽の方へと視線を戻すと、朝日に照らされた町に目が行く。新年の早朝なのにすでに活動を始めている人たちもちらほらいるけれど、外から来た人が少ないからいつもより人通りは少なそうだ。


「もっと上の景色を見てみたいデス!」

「確かに、木の先端とかどうなっているのか気になるじゃん」

「前に登ろうとして寒すぎたとか言ってなかったかしら?」

「だからこれを着てきたデスよ! このコートがあれば寒さなんてへっちゃらデース!」


 魔道具『適温コート』をしっかりと着込んだパメラが胸を張って何やら自信満々に言っているけど、寒さをクリアしたとしても酸素とかどうするんだろうか。魔法的なパワーで何とかするのかな。

 止めた方が良いかもしれないんだけど、どうせ止めたって隠れてするだろうし……身をもって感じた命の危機であれば忘れないようなので放っておいた方が良いのかな?

 いや、でも危ない事はしてほしくないし、そもそも即死するような危険な所かもしれないし……。

 堂々巡りで答えが出せずにいたらパメラが早速気をよじ登ろうとしていた。

 ただ、ラオさんがそんなパメラをひょいっと持ち上げて捕獲した。鍛え上げられた四肢から逃れる術はないのか、ぶら~んっと脱力するパメラ。


「見てぇだけだったらアレを使えばいいだろ」

「そうそう。雲よりも上ってなると、標高の高い山と同じくらいでしょ? そんな危険を冒すほど価値のある物がそこにあるのか、あれで確認してからの方が良いわよ」


 ルウさんが指を差した先には音も無く飛んでいる魔道具『ドローンゴーレム』が朝日に照らされて金色に輝いている。

 金色に輝くその魔道具は、神様の攻撃だって防ぐことができるアダマンタイト製である。魔物が雲の上にうじゃうじゃいてもそうそう壊れる事はないだろう。


「ジュリウスに言って使わせてもらうデス!」


 気持ちが変わったパメラをラオさんが解放した。

 向こうは大丈夫そうだ、と意識を再び太陽の方へと向かわせようとしたら近くでジューンさんが「子どもたちにも見せてあげたいですねぇ」と呟いたのが耳に入ってきた。


「わたくしたちの旦那様は過保護だから難しいんじゃないかしら?」


 ランチェッタさんがこちらに意味深な視線を向けてきたけど、聞こえないふりをして太陽を眺める。

 ただ、話し声は聞こえる程度の声量でディアーヌさんも話に加わった。


「そうですね。歴史に名を刻む時に『過保護だった』という一文が入れられても不思議じゃないくらいには過保護ですよね」


 歴史に名を刻みたくはないけれど、子どもを大切にしていた事が残るのは名誉な事なんじゃないかな。……過干渉だと捉えられるのは甚だ遺憾だけど。


「まあ、それはそれとして置いといて、まだこういうのには興味を示さないんじゃないでしょうか?」

「見せて見ない事には分からないじゃないですぅ」

「そうよね。決めつけは良くないわよね」

「という事なんですが、そこで聞き耳を立てている過保護な旦那様はどうお考えですか?」

「仮に落ちてしまっても空を飛べる人もたくさんいますしぃ、死ぬ事はないと思いますよぉ?」

「まぁ、そうなんだけどね」

「それに、危険な事から遠ざけ過ぎたら何が危険か分からないまま大きくなってしまうのよ? ほら、フェンリルがいい例じゃない」

「それもそうなんだけどね。…………生活リズムとかもあるし、無理強いしないなら来年からオッケーにしようか」


 還してしまった『付与』の加護があればパラシュート代わりの魔道具を作ったんだろうけど、今はもう作れないし仕方がない。安全面についてはジュリウスたちにお願いしてスタンバっておいてもらおう。


「シズト様、いつ戻るっすか? もう部屋に戻りたいんすけど」

「太陽もすっかり顔を出したし、もう戻ろうか」


 戻りは周りで大騒ぎしているドライアドたちにお願いして魔道具『転移陣』を設置してもらった。

 みんなが戻ったところでどちらの『転移陣』も回収したので誰かが勝手に使う事もないだろう。

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