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後日譚386.事なかれ主義者は聞いてみたい

 世界樹ファマリーの根元に戻ったらドライアドたちがわらわらと集まってきた。褐色肌の子やレモンちゃんを通じてある程度状況が伝わっていたようだ。

 古株ほどではないけど、長い年数を生きている子たちにくっついていた褐色肌の子を任せた。レモンちゃんは意地でも肩の上から離れようとしなかったのでそのままにしたけど、そのうち元気になるという事だった。


「それなら予定通りクリスマスパーティーをしようか。今回はゲストも招いているから準備を急がないとね」

「しってるひと?」

「知らない人」


 という事になっているけれど、実際は知っている人だ。ただ、正体は明かせない。なぜならサンタさんだから。

 ファマリーの根元に戻ってきた時には胸に顔を埋めるのをやめていた蘭加だったけど、僕の答えを聞いて再び埋めてしまった。

 言っても言わなくても同じなら事前に伝えておいた方が良いだろう、という事で伝えてみたけどやっぱりこうなるよね。

 公園で遊び疲れて眠っていた子もパーティーの時間にでもなれば起きてくるだろう。起きて来なかったら……その時考えよう。

 ぞろぞろと屋敷の中に戻り、一階にあるパーティー会場の予定の大きな広間へと移動した。食堂よりもさらに奥へと進んだその場所は屋敷の一番広い部屋だ。部屋の北側は大きな窓があり、中庭の様子がよく見える。

 中庭はクリスマスに向けてしっかりと手入れをされたようで、草木が生い茂っていたとは思えない様子だった。ただ、残念なのはクリスマスツリーのような大きな木がイルミネーションで彩られていない事だろう。

 こっちの世界には勇者たちがクリスマスも中途半端に伝えていたみたいだけど、イルミネーションについては伝えていないのか、それとも伝わっていたが再現する程の余裕がなかったのかは分からないが存在しなかった。

 まあ、電気がないから仕方ないよな。加護があれば似たような物を創れたかもしれないけど、ない物は仕方がない、という事で諦めた。


「しっかりと準備してありますねぇ。ありがとうございますぅ」

「それが私たちの仕事ですから」


 机やいすの準備などをしてくれていたバーンくんと彼を慕う女の子たちがジューンさんに褒められていた。

 彼らの後ろにはとっても大きなケーキや大きな鳥の丸焼きのようなものだけではなく、ローストビーフのような塊肉もあった。

 ただ、それらよりも目を引くのが巨大なクリスマスケーキや、名前を忘れたけど丸太を模したような木のケーキだ。

 それらのデザート類はバーンくんたちの手には余るという事で、ドラゴニアやガレオールの宮廷料理人にわざわざ作ってもらってここまで運んでもらったらしい。持ち運び式の転移陣って本当に便利だ。


「やっぱり私たちだけじゃ広すぎるのですわ。今からでも楽団を呼ぶのですわ?」

「んー、知らない人だと蘭加が楽しめないから……。バーンくんたちにだってパーティーの時には給仕をせずに別館で過ごしてもらうんだよ?」

「ゲストを呼ぶ時点で今更な気がするのですわ」

「人数の問題を言ってるんだよ」

「楽器を練習しておけばお役に立てたのに……」

「国の統治者が楽器の練習をする時間なんてないわよ。わたくしたちなんて特にそうじゃない」

「そうだけど、私が演奏出来たら楽団を呼ぶ必要もなくなるでしょ?」

「パメラとシンシーラで一曲歌うデスよ! シズト様がいない時にお酒を飲んだらよく歌ってるデス」

「あたしを巻き込むなじゃん! エミリー、笑ってないで止めるじゃん」

「いや、別に私には関係ないし」

「もちろんエミリーもいつものように踊り子として参加するデスよ! パメラも歌って踊るから恥ずかしくないデスよ!」

「面白そうね! ねぇ、ラオちゃん。私たちも踊りましょうか?」

「アタシはパス」

「ラオちゃんが人付き合いを避けるから蘭加ちゃんは人見知りなのかもしれないじゃない」

「アタシは人付き合いを避けてるんじゃねぇ。バカ騒ぎを避けてんだよ」


 お嫁さんたちが主体で話が進んでいる間にバーンくんたちは部屋から出て行き、その代わりに話に加わっていない侍女の三人とホムラとユキがせっせとパーティーの準備をしている。まあ、準備と言ってもほとんどもう何も残っていないけど。

 ……でもこうしてみるとやっぱり広い部屋の中央に机と椅子が並んでいるだけでがらんとしている感は否めない。

 どうしたものかなぁ、なんて事を考えていると日が暮れてだいぶ暗くなった外から覗く無数の目がこちらを見ている事に気付いた。


「いっその事、ドライアドも入れちゃうか? いや、でも蘭加は緊張するのは変わらないかな」

「まあ、会った事もねぇ楽団の連中よりかはまだマシなんじゃねぇか?」

「それかチヨちゃんにぬいぐるみを借りて、皆に踊っててもらうとか?」

「蘭加にとってはそっちの方が良いかもね」

「それにするじゃん! チヨにいってすぐにでもぬいぐるみをつれてきてもらうじゃん!」


 よっぽど歌うのが嫌なのかシンシーラがとても積極的だった。

 ……そこまで嫌がる歌ってのはどんなのかとても気になるけど、パメラに聞いてもきっとよく覚えてないだろうからまた今度二人っきりになったら聞いてみよう

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