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後日譚356.事なかれ主義者は頑張るしかない

 レヴィさんにオクタビアさんの件で相談してから数日経った。

 この数日の間、オクタビアさんは僕が仕事をしていない時は大体近くにいて、話し相手になってくれたり、一緒に子どもたちの面倒を見たり、ドライアドたちに混じって土いじりをしたりしていた。

 子どもたちの世話はしっかりと学んでいたようで、慣れた手つきで対応していた。今までもちょくちょくこっちに来ている時に手伝っていたらしい。

 子どもたちからも好かれていて、よく遊び相手になってくれている。

 流石に極度の人見知りで恥ずかしがり屋な蘭加からはまだ隠れられているけれど、それも時間が経てば解決するだろう。

 また、お嫁さんたちからの評価も上々だった。

 エミリーやジューンさん曰く「料理には慣れている様だった」との事。きっと仕事の傍ら料理の練習をしていたのだろう、と。技術はまだまだだが、家庭的な物から王宮で出るような物まで一通り作ることができると本人は話していたらしい。

 また、清掃に関しても嫌がらず、むしろ率先して取り組んでいる。ちょくちょくパメラが散らかした彼女の部屋の整理をするほどには彼女との関係も悪くないのだろう。

 また、レヴィさんやセシリアさんとの仲もいい感じなようだ。


「指示しなくてもある程度やってくれるから助かるのですわ!」

「レヴィア様の暴走を一緒に止めていただけるので助かってます」


 そんな感じの事を二人が言っていた。

 ランチェッタさんは言わずもがなだけど、ディアーヌさんからも好かれているのは驚いた。

 なんでも、一緒にランチェッタさんを揶揄ってくれる時があるとかないとか……。全然想像できない。

 パメラは遊び相手になってくれる人だったら大体好きになるから驚きはなかったけれど、ノエルからも好意的な評価を下されているのは驚いた。


「シズト様よりも魔道具作りが上手いっすからね。魔石に魔法を込める事もできる見たいっす」


 …………まあ、僕は魔法が使えないのでそこは仕方がないだろう。

 とにもかくにも、ほとんどの子どもたちからは好かれており、同じ立場になるお嫁さんたちの評価はおおむね好意的で、オクタビアさんと結婚する事に反対する人は身内には誰もいなかった。


「………ほんとに、僕の気持ち次第なんだよなぁ」


 泡風呂でもこもこと泡を量産したドーラさんが、泡を使った芸術作品を作ろうと奮闘している様子を眺めながら、僕は肩までお湯に漬かる。

 結婚するのかしないのか、そろそろ決めた方が良いとランチェッタさんからちょくちょくせっつかれているけど、彼女が言う通りそろそろ決めるべき時なんだろう。

 結婚する場合は彼女の誕生日以降と決めているけれど、誕生日が二月だったから本当に時間がないらしい。色々準備する必要がある王侯貴族は大変だな、なんて他人事のように思ったけれど、結論はこの一週間で出すと言ってしまった。言ったからには決めなければならない。


「結婚に反対する人がいれば話は早かったんだけど……」


 人のせいにするみたいであれだけど、今のお嫁さんたちか子どもたちの誰かと馬が合わなければお断りしていただろう。本人たちは表面上仲良くできるかもしれないけど、子どもはよく親の様子を見ているって言うし、それが原因で子どもたちの間に亀裂が走るようなことは避けたいからだ。

 だが、彼女の事を誰に聞いてもそういう話は出なかった。残念なような、良かったような、そんな気持ちだった。

 どうしたものかなぁ、と考えながら泡を集めて遊んでいると、いつの間にかやってきていたドーラさんが「シズトはオクタビアが嫌い?」と尋ねてきた。


「いや、嫌いじゃないよ」

「どうしてそんなに悩む?」

「どうしてって……どうしてだろうね?」


 こちらではよくある一夫多妻制には慣れてきたと自分でも感じている。抵抗が全くないわけじゃないけど、実際そうなってるんだから仕方がないと割り切るしかない。


「単純にこれ以上お嫁さんは要らないって思っているのもあるのかも?」

「なぜ?」

「なぜって…………。今でも平等に接する事を心掛けてるけど完全に平等とは言えないから、かな……?」

「私はそう感じない。完全に平等じゃなくても、シズトがそれを意識してくれているって言うのは分かってる。それはこれからも変わらないって事も分かってる。だから気持ちだけで決めればいい。多くの勇者がそうしたように」

「…………そうなると際限なく増えそうじゃない?」

「………………………………がんばって」

「頑張って何とかなるのかなぁ」


 今回のようになし崩し的にそうなってしまう事は今後もある気がする。

 ただまあ、他国との関係づくりのために子どもたちに結婚を強いる事になるくらいだったらそれも仕方がないのかもしれない。

 そんな事を思いながら、ドーラさんに求められるがまま泡を発生させてはかき集めるのだった。

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